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[转贴]白夜行剧情的全部日文对白 欠第十话 (BYtommie)

山田孝之中文网里一位强人所发

白夜行 第一話
=2005年 12月24日=
クリスマスのイルミネーションが輝く夜の街。
美しく着飾った唐沢雪穂(綾瀬はるか)は店(R&Y)に来てくれた
客を見送っていた。
太陽をモチーフにした店のロゴ。
雪穂の薬指には、店のロゴと同じ形のリング。
その上に雪が舞い落ちる。

ふと、振り返る雪穂。
歩道橋の上から男(武田鉄也)が何か叫んでいる。
「亮・・・。」と呟く雪穂。
歩道橋の下にサンタクロースの服を着た男が倒れている。
桐原亮司(山田孝之)。
その胸元には外国製のハサミが刺さっていた。

「俺たちの上に、太陽などなかった。
 いつも夜。
 だけど、暗くはなかった。
 太陽に代わるものがあったから。」

「夜を・・・昼だと思って、生きることが出来た。
 明るくはないけれど、歩いていくには、充分だった。」

「あなたは・・・
 あなたは俺の・・・太陽だった。
 まがいものの太陽だった。
 だけど、明日へと登ることを止めない。
 俺のたった一つの希望だった。」

ぼんやりとした視界で雪穂を捉える亮司。
「亮・・・。」瞳に涙を浮かべて雪穂が呟く。
亮司が血に染まった手を雪穂に差し伸べる。
雪穂の足が少し動くが、踏み出すことが出来ない。
「雪・・・。行って・・・」
亮司は指を刺しながら、か細い声でそう呟き微笑む。
雪穂は微笑みながら頷き、そして血を流すサンタに背をむけて
歩き出していた。

「あなたは・・・
 あなたは、私の太陽だった。
 偽者の太陽だった。
 だけど、その身を焦がし、道を照らす、
 私の、たった一つの光だった。」

意識の遠のく中、雪穂の姿を微笑みながら見送る亮司。

雪の降る街を、泣きながら歩く雪穂。
「明るい・・・。明るいよ。亮。」

「それは、あの日から・・・。」

「14年前・・・
 太陽を失った、あの日から・・・。」

「雪穂・・・」
空を見上げるように仰向けになった亮司の上に、雪が舞い降りる。

=1991年 秋=
バブルがはじけた為工事の途中でそのままになってしまったビルの現場を
遊び場にする子ども達。
亮司(泉澤祐希)は仲間とこのビルで競うレースで、一番早いタイムを
出すことが出来る少年だった。
秘訣を聞かれ、「急がば回れって言うじゃあーりませんか!」と答える亮司。
友達が塾へと急ぐ背中を見送り寂しそうな表情に。

その帰り道、亮司は川を見つめながら爪を噛む雪穂(福田麻由子)を見かける。

亮司の父・桐原洋介(平田満)は、質屋・きりはらを経営している。
その日亮司が家に帰ると、倉庫から母の笑い声が聞こえてくる。
そこへ父が帰宅する。
亮司は倉庫のドアをノックし、母親に父親の帰宅を知らせた。
その時母・弥生子(麻生祐未)は、店員の松浦(渡部篤郎)と一緒にいた。
二人は愛人関係にあったのだ。
「すっぱり離婚しちゃったほうがさ、亮ちゃんの教育上いいと思うけどね。」
と松浦。
「前科もちの店員と一緒になって、苦労だけしろって?」
服を着ながら弥生子が笑う。
「親の浮気の心配までして、亮ちゃんも大変だ。」
「浮気って誰がしてんの?」
弥生子はそう言い、松浦の指からタバコを奪い吸い始めた。

夕食の席で、洋介は、バブル経済の崩壊とともに質屋も変わっていくと話す。
「おまえが継ぐ頃にはどうなっているんだろうな。な、亮司。」
「その頃には潰れてるんじゃない、この店。
 怪しい店員にのっとられたりして。」
亮司はそう言うが、洋平は松浦のことを信用しきっているようだ。

食卓にはお刺身にコロッケなど。家族3人揃っての食事。
妻や息子に仕事のことを語る一家の大黒柱。
一見、幸せそうな家族に見えますが・・・。

両親のことで心を痛める亮司。
彼の部屋の壁には帆船の切り絵が額に入れ飾られている。
机の上には、作りかけの帆船模型と、銀のハサミが置いてある。
家族幸せそうに映る写真を伏せ、亮司は百科事典を開いた。

雪穂は給食費から飲み屋に支払いを済ませると、泥酔した母・
西本文代(河合美智子)を抱えて家へと帰っていった。
「雪穂、母さんのことお荷物だと思ってんだろ?」
「暴れるなら捨てちゃうよ。」
厳しい表情でそう答える雪穂。

=大江図書館=
別の百科事典を借りる亮司。
「こんなのばかり借りて何してんの?」
司書・矢口真文(余貴美子)が聞く。
「え・・・覚えるの。」
「楽しい?」
「いいですよねー。悩みのない人は。」

奥のテーブルに座ろうとした亮司は、雪穂が爪を噛みながら単語帳を
読んでいるのに気づく。
ランドセルに貼ってある彼女の名前を確認し、亮司は同じ机に座り、
彼女の様子を伺った。

「あの・・・
 西・・・」
話しかけようとするが、閉館の時間となってしまう。
「あ、待って!西本さん!」
慌てて雪穂の後をついていく亮司。

「西本さんって、大江南小なんだよね。
 俺、北小。
 もう英語始めてるの?すごいよねー。
 でも最近みんな塾行ってるよね。
 あ、もしかして日本語忘れちゃった?」
黙って先を歩いていた雪穂が立ち止まり、亮司に言う。
「うち、貧乏なの。
 貧乏人が出世するには、勉強しかないと思わない?」
「そうなの?」
「もういい?」そう言い亮司の前から歩き出す雪穂。
「昨日はあそこで何してたの?何か川に落としちゃったの?」
「どぶに咲く花があるって聞いたから、探してただけ。
 もういい?」そう言い雪穂は立ち去った。
「どぶ?」

=月見荘=
家の戸を開けた雪穂は、玄関に男物の靴、そしてテーブルに
『Hermony』のケーキの箱があることに、身体をこわばらせる。
逃げ出そうとする雪穂に母親が言う。
「雪穂・・・頼むよ。
 母さん雪穂しか頼る人いないんだよ。
 お願い。」
そう言い娘を部屋の中へ連れていく文代・・・。

家に帰った亮司は百科事典でどぶに咲く花を調べていた。

ビルの廃墟地にたたずむ雪穂を残し、誰かがビルを出ていった・・・。

=大江図書館=
「昨日言ってた、花のことなんだけど!」
亮司は雪穂に話しかけるが、雪穂は爪を噛み単語帳に視線を落としたまま
顔を上げることはなかった。
亮司は諦めて図書館を出ていく。

雪穂が橋の上を歩いていると、亮司が呼び止める。
無視して歩き続ける雪穂。
「ちょっと!見て!ここ!!」
そこには、白い花が浮かんでいた。
「うそ・・・。」と呟く雪穂。

「今の何!?何で花・・・」雪穂は亮司に駆け寄り、尋ねる。
「何でしょう!?」
水辺に、紙で作られた大きな白い花が浮かんでいる。
「言ってたのって、どぶじゃなくて、泥に咲く花のことだと思うんだよね。
 蓮のこと。お釈迦様が座ってるやつ。
 だから、どぶに咲く花は本当はないんだけど、
 ないっていうのも、夢のない話じゃない?」
涙ぐむ雪穂。
「・・・あれ、怒って・・る?」
白い花が流されていく。
雪穂は川の中に入り白い花を追いかける。
亮司は雪穂を引きとめようと手を引っぱり、二人は転んで水浸しに。
「すごいよ!
 すごかった!
 すごいすごい綺麗だった。
 私あんなの初めて見た。
 こんなことってあるんだね。」
そう言い、川の中に座り込んだまま雪穂は泣き続けた。

川から上がった二人。
亮司は銀のハサミを器用に使いこなし、雪穂に雪の結晶を作ってあげた。
「はい。雪。・・・雪穂だから。」
「・・・あのさ、何で私に親切にしてくれんの?」
「ちょっと、僕と似ているような気がして。」
「どこが?」
「チャゲと飛鳥って、どっちがすき?」
「飛鳥。」
「そう・・。チャゲ的な悲しさには用がないか。」がっかりする亮司。
「タイムマシンがあったら、過去に行く?未来に行く?」今度は雪穂が聞く。
「過去!」
「そう・・・。」
「未来に行くのか。」またがっかりする亮司。
「後悔って嫌いなんだよね。」
「じゃあさ、嫌なことあると、暗記しない?」と亮司。
「する!」
「するよね!」
「暗記している間は余計なこと考えなくていいんだよね!」
「そう!そうなんだよ。
 あー良かった。これも違ってたらどうしようかと思ったよ。」
「・・・でも、こんなこと喜んでいいのかな。
 嫌なことばっかってことでしょ?」
「そっか。そうだよね。
 ダメだなー、俺。」
「ねえ、あれ!」
雪穂が水面に映った月を指差す。
「あれ、花みたいに見えない?」
雪穂を見つめる亮司。
「お返し。ありがとう!」そう言い微笑む雪穂。
亮司は川の中へ入り
「すげー!月の花だー!」とはしゃいだ。

一生懸命共通点を探す二人が微笑ましかった。
でも、現実逃避のために暗記に没頭する二人が切ない。

亮司と雪穂は図書館で会うのを楽しみにするようになる。
雪穂のリクエストで、『風と共に去りぬ』の表紙の絵を
切り絵で作る亮司。
雪穂が嬉しそうに微笑む。
そんな二人の様子を見守る司書の谷口。

帰り道。
「大丈夫!一回だけ。お願い!」
雪穂にせがまれ、車道に押し出された亮司。
トラックがクラクションを鳴らす。
「ぼ、僕は死にましぇーん!」
「死にてーのか!」
トラックは亮司の脇を通り越していった。
その場に座り込む亮司を、雪穂がおかしそうに笑う。

雪穂の影響で、『風と共に去りぬ』1巻を借りる亮介。
「いきなりメロドラマ・・・。
 若いっていいねー。」矢口が冷やかす。

帰り道。
老人が手をつないで歩く姿に、
「ああいうおじいさんとおばあさんって、いいよね。」
雪穂はそう呟いた。
「あのさ、冷え、冷え・・・
 雪・・・見大福と苺大福、どっちが好き?」
手を繋ごうとするが言い出せない亮司。
雪穂は亮司の手を取り、俯いたまま答える。
「普通の、大福かな。」
手をつないで歩く二人。
「亮君。汗、すごいよ。」
「ごめん!ほんとごめん!」
慌てて自分のズボンで掌を拭く亮司。
雪穂に笑われ、亮司はむっとする。

「亮司。何やってんだ?」
声をかけてきたのは、松浦と一緒に店から出てきた亮司の父・洋介だった。
その姿に、雪穂は顔を隠す。
洋介が俯いた雪穂を見つめる。
「私、帰るね。」雪穂は逃げ出すようにその場から走り出した。

洋介の靴のアップ。
あの日雪穂の玄関にあったものと、同じものでしょうか?
・・・ということは・・・。

夕食時、洋介は亮司に言う。
「さっきの子と、二度と会うな。
 あの子の母親は、店の客でな。 
 飲んだくれでタチが悪いんだ。」
「そんなこと別に。親に関係ないし。」
「いいから二度と会うな!!
 嫌ならうちから出てけ!飯も食うな!!」
すごい剣幕で怒鳴りつける洋介。
食事を止めて部屋に行く亮司。
妻が不審そうに、どうしたの、と聞く。
「亮司の、ためなんだよ。」と呟くように言った。

「ハーモニーの人、桐原っていう名前だったんだね。」
雪穂が文代に言う。
「・・・知らないほうがいいと思ったんだよ。」
動揺しながら文代がそう答えた。

川に映る半月を見つめる亮司。

亮司が作ってくれた雪の結晶を見つめる雪穂。

亮司が図書館で待っていても、雪穂は姿を見せなかった。

「あれー。もう振られたの?」矢口がからかう。

南小学校の校門の前で雪穂を待つ亮司。
雪穂は亮司の前から走り出す。

「待って!待ってって!俺なんかした?
 なんかしたなら、言って!」
黙ったままの雪穂。
「もしかして、俺の親が会うなとか、」
「触らないで!
 気持ち悪いんだよ、亮君。
 二度と近寄らないで!」
雪穂は亮司の手を振り払い、泣きながら走り去った。

アパートに戻った雪穂は、テーブルの上に置かれたケーキの箱に
凍りつく。
「お帰り。雪穂。これ食べたらさ、」
「嫌だ!私もう嫌だよ!」
家を飛び出そうとする雪穂を捕まえる文代。
「ほら、これ見て!
 200万、貰ったんだよ。くれたんだよ!
 これで、借金返せるんだから。もう終りだから、ね。」
「そんなことあるわけないじゃない!
 どうせ私のこと売って、200万前借しただけでしょう!」
文代が雪穂を突き飛ばす。
「父さんが死んで、あんた抱えて、
 母さんだって同じことやってきたんだよ!
 何で、そんなわがままばっかり言うのよ!」
そう泣き叫ぶ文代。

「結論から言うと、手がぬめぬめしてたから嫌われたってこと?」
矢口が尋ねる。
「気持ち悪いから触るな、って、それしかないですよね・・・。」
「嘘だと思うけどなー、そんなの。
 だってあの子、あんたと会ってから笑うようになったもん。」
「!・・・そうですか。」嬉しい気持ちを隠して冷静に答える亮司。
「ま、あんたもだけどね。」
矢口はそう言い、手紙を書いてみたらどうかとアドバイスする。

廃墟ビルの前で、ノートに手紙の下書きをする亮司。
『ゆきちゃん、ぼくのことを気持ち悪い・・・
 あれは、手のひらのあせのことですか?』
必死に文章を考えていると、雨が降ってきた。
亮司は慌てて帰ろうとすると、母親に手を引かれて歩く雪穂の姿に気づく。
二人は、あの廃墟ビルへと姿を消した。

二人の後をつける亮司。
雪穂は無理やり、ある部屋に閉じ込められ、母親はビルから出ていった。

その戸に手をかける亮司。だがドアは開かない。
亮司はダクトを這って進んでいく。

雪穂は自ら服のボタンを外していく。

亮司がその部屋へたどり着くと、服を脱ぎ横たわる雪穂がいた。
男が彼女の裸を写真に収めていく。
その男は、亮司の父・洋介だった・・・。

洋介が振り返ると、そこに亮司が立っていた。
「何やってんの・・・。」
亮司の声に、雪穂は慌ててそばにあった布で身を隠す。
「なにこれ・・・。」
「これはな、亮司。違うんだ。」
布に包まり俯く雪穂の姿・・・。
雪穂の怒り、悲しみ、自分を拒絶した理由を知った亮司は、
涙をぽろぽろとこぼす。
「この子だって納得したことなんだ。
 ほら、嫌がったりしてないだろう、別に。」そう弁解する父。
「たいしたことじゃないんだよ、この子にとっては。
 金のためなら、」
その言葉に、亮司は父の胸に飛び込み・・・。
亮司の手が赤く染まっていく。
手には、あの銀のハサミが握り締められていた。

ハサミを握り締めたまま座り込み、震える亮司。
雪穂は爪を噛みながら、洋介が落としたカメラを拾い上げる。

「どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・。
 俺、お父さん・・・
 俺、殺し、」
「殺したんじゃない!
 亮君には悪いけど、私だって、殺してやりたいって思ってた。
 何回も、頭の中で殺した。」
雪穂が亮司の手から凶器のハサミを受け取る。
そして愛らしく微笑み、続ける。
「だから、やったのは、私だよ。」
凶器を握り締め微笑む雪穂の瞳から涙がこぼれた。

換気口から抜け出した二人。
「あのさ、一つだけ約束してくれない?
 亮君と私は、会った事もないし、話したこともない。
 名前も知らない、全くの他人ってことに。」
穏やかに微笑みそう語る雪穂。
「何でそんなこと。」
「絶対その方がいいから。
 必ず連絡するから。
 信じて。」
雪穂はそう言い、指きりする。
二人が繋いだ小指が離れ・・・。
「おやすみ。」
雪穂の言葉に頷く亮司。

「この時の俺には、この奇妙な約束を問いただす
 余裕などなかった。
 ただ一秒でも早く、1メートルでも遠く、
 この場から離れたかった。」

走り去る亮司の姿を見送ったあと、雪穂は血の付いた手で凶器を握り締めた。

「それが雪穂を置き去りにすることだとは、
 思いもしなかったんだ。」

川に洋介のカメラを投げ捨てる雪穂。

血の付いたシャツを洗濯機の一番奥に隠し、必死に手洗いする亮介。
松浦が不審そうに様子を伺う。

「なあ、雪穂。
 タイムマシンの話だけど、
 俺やっぱり、過去に行くよ。
 それであの日の俺に、逃げるなって言うよ。
 そうすればきっと、あなたの道は、
 もう少し、明るかったはずだから。」

道路に倒れたままの亮司に、雪が降り注いでいく。

[ 本帖最后由 茜茜姐姐 于 2006-4-17 06:55 编辑 ]
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[转]白夜行剧情的全部日文对白 欠第十话 (BYtommie)

洋介の遺体が発見される。
刑事・笹垣(武田鉄矢)は部下から状況の説明を受ける。
第一発見者は、ビルで遊んでいた少年・菊地。
ダクトを伝って遊んでいたところ遺体を発見。
ドアの前に積まれたブロックをどかし、ドアを開けたらしい。
致命傷となったのは胸への一突き。凶器は細くて鋭利な刃物。
サイフも無くなっているが、争った形跡もない。
顔見知りの線だろう、と刑事たちが話す。
「何でこんなところで・・・」と呟く笹垣。

身元の確認に、妻・弥生子がやってきた。

カメラから抜いたフィルムを焼却炉に投げ込む雪穂。

警察の調べに答える弥生子、そして松浦。
「息子さん、お父さんと仲良かったんですね。」笹垣が言う。
「年とってから出来た子ですし、いい父親でしたよ。」と弥生子。
笹垣は亮司と話がしたいと申し出るが、弥生子は拒否。
だが松浦が弥生子を説得する。

「亮司君、ちょっと、ええかな?開けるで。」
亮司が戸を開け、招き入れる。部屋に飾られた切り絵に
「ハサミ上手いねんなー。」と感心する。
「おじさん、犯人絶対捕まえてやるから、協力してほしいんだ。」
なぜ洋介があのビルにいたのか、手がかりを探す笹垣。
子どもがダクト遊びに使うあの場所で、父親を見かけたことはなかったか、と
亮司に聞く。
笹垣が亮司の机の上の本を手に取ろうとすると、それを拒絶する亮司。
「ありません。」
亮司がそう答えると、笹垣は「またな。」と言い帰っていった。

亮司が家族写真を投げ捨てようとしたとき、部屋の戸が開く。
松浦だ。
「どうしたのよ、亮ちゃん。」松浦が笑う・・・。

亮介の視線がひっかかる笹垣。

亮司のTシャツを干す弥生子。
血は取れているようです。
弥生子が落ちているかどうか、確認しているようにも思えました。

松浦は弥生子に、亮司を含めた3人で口裏あわせをしようと言い出す。
「一応だよ、一応。
 警察にさ、あの日何やってたかなんて、本当のこと話したくないでしょ。
 あいつらさ、何でも疑うからさ。
 浮気がバレたら、桐原の家から貰えるものも貰えなくなっちゃうよ、奥さん。」
亮司のTシャツを見つめる弥生子・・・。

彼女は息子の犯行だと気づいているんでしょうか!?

「こうして俺の、薄ら寒い日々が始まった。
 俺が殺しておきながら、親を殺された子どもとして振舞う毎日。
 そして隠せば隠すほど・・・
 葬ろうとした真実は夢の中で膨れ上がった。 
 全てを吐き出してしまいたかった。
 だけど、全てを吐き出せるただ一人の相手からは、
 何も連絡がなかった。
 そんな中で、俺は雪穂と出会ったことを後悔し始めていた。 
 もし、雪穂と出会わなければ、
 俺は人殺しになんかならなかった。
 嫌らしい疑いも生まれた。
 もしかしたら、俺は騙されているんじゃないだろうか。
 雪穂はあのハサミを手に、警察に駆け込むつもりなんじゃないだろうか。
 何もかもが信じられなくなり、
 雪穂に、太陽を奪われた気がしていた。」

あの川を見つめる亮司。
雪穂は亮司のことを影から見つめていた。

南大江駅前のベンチで読書する雪穂。
「もうすぐ読破だね。」谷口が声をかける。
「スカーレットって、天国行けたんですかね?
 家を襲おうとした兵士・・・殺すじゃないですか。
 生きるためなら、そこまでしても、許されるのかな。」
「どうだろうね。
 でももし、この子が殺されちゃうって思ったら、
 私もやっちゃうかなー。」
自分の子を抱き上げ、谷口が言う。
「可愛い・・・。」
「そういうことは、桐原君と話せば?
 ・・・そっか。今は話せないか。
 事件のこと知ってるよね。」
「学校で、噂は。
 落ち着いたら、手紙でも書こうかなって思ってるんですけど。」
「そうだね。」
「はい。」

「お父さん。ちゃんと隠しておいてね。」
雪穂は、墓をこじ開け、自分の父親の骨壷に洋介のサイフを隠し
手を合わせた。

=捜査本部=
「被害者の当日の行動がほぼ把握出来ました。
 桐原さんは午後2時ごろ、信用金庫に立ち寄り、
 現金200万円を口座から引き出したことが判明。
 そのあと午後3時半ごろ、大江商店街の洋菓子店『ハーモニー』で
 プリンアラモードを3つ買い求めた。」

そして、桐原の顧客名簿から、警察は西本文代にたどり着く。
夫は8年前に事故で死亡。現在は飲食店で勤務。
過去数度、西本家を訪ねる洋介の姿が目撃されていた。
文代は相当金に困っている、という情報もあった。

西村家の前で部下に呟く笹垣。
「わしだったら絶対殺せへんで。
 愛人やろ。金くれるんやろ?
 殺したらおしまいやないか。」
「ついかっとするとか、理由ならいくらでもあるじゃないですか。」
「ずるずる引き出したいもんやと思うんやけどなー。」

そこへ、雪穂が帰ってきた。

刑事たちにお茶を出す雪穂。
しっかりした子だと笹垣の部下が感心する。
雪穂が『風と共に去りぬ』を読んでいると知った笹垣。
「どう思う?スカーレット。
 おじさんなんかは、そういう女の人、ニガテやなー。」
「・・・憧れます。
 強くて、たくましくて、どんな状況でも絶対に諦めない。」
部屋を見渡す笹垣は、ゴミ箱に『ハーモニー』の箱が捨てられているのに
気づく。
笹垣を見つめる雪穂。
雪穂の視線に気づき振り返ると、彼女は本に視線を落としていた。
雪穂に鋭い視線を送る笹垣・・・。

そこへ、文代が戻ってきた。
「刑事さんだって。」雪穂が母に言う。
「あの、何か?」
「桐原洋介さんが殺害されたのはご存知ですか?」
「いえ・・・殺されたんですか?」動揺する文代。
「ご存知ありませんでしたか?」
「新聞とってないんで・・・すいません。」
「桐原さんが殺害される前にこちらに立ち寄るのを見たっていう人が
 いるんですが、11月11日なんです。覚えてませんか?」
「ええ。全く。どうしてそんな。」
「そうですか。もう一つよろしいですか?」

部署に戻った笹垣は、数珠に触れながら考え込む。
「妙やなかったか?」
「明かに嘘ついてますよね、あの女。」
「そうやのうて、あの子。
 母親の事庇わんかったやろ。 
 あの子、わしらがプリンの箱見とったん、気づいておったで。
 気づいとって、わざと、聞き逃したんや。
 母親を疑わせるためとか・・・」

笹垣は、雪穂の視線にそこまで感づいたんですね。
ものすごく鋭い刑事です。

別の刑事たちが戻ってきた。
事件当日、キリハラに行った客の証言を取ることが出来たという。
その客は、店は開いているように見えるのに、呼び鈴を押しても
誰も出てこなかったという。
刑事たちは、弥生子と店員の松浦が不倫の関係にあるとの情報も
得ていた。
松浦には前科もあるし、財産狙いの犯行も考えられる、と刑事たち。

「あの日の夜、6時から8時まで、どこにいましたか?」
弥生子に質問する刑事たち。

別の場所で同じ質問をされた松浦が答える。
「店にいましたよ。」と松浦。
「店に来たけど誰も出なかったって証言した人間がいるんです。」と刑事。
「その時は、蔵の中にいたんじゃないですかね。
 この中に入ると音がまるっきり聞こえないんです。」
「それを証明する人はいますか?」
「ええ。一度奥さんに声をかけられました。」
「奥さん家にいたのにブザー聞いても出なかったんですか?」
「しょうがないじゃないですか。
 奥さん、お店には出ない人なんですから。」
「じゃあその時奥さん何をしていたんですか?」
「さあ。あ、亮ちゃんと一緒に飯でも食っていたんじゃないですかね。」

亮司にも、同じ質問をする古賀と笹垣。
「お母さんと、ご飯食べて、テレビ見てた。
 ニュースの森と、クイズ100人に聞きましたと、ワイワイスポーツ塾。」
内容を聞かれた亮司は、刑事と目を合わさずにすらすらと答えていく。
「よくそんな覚えてるね。頭いいね。」と古賀。
「忘れられない日になったから。」
古賀が亮司をいたわるように見つめる。
だが笹垣は亮司にするどい視線を投げかけていた。
笹垣の視線を感じ、びくっとする亮司。
「この間とは、えらい違いだな、ボク。」
「慣れたんで。」
「何にや。」
「お父さんが、殺されたことに。」
笹垣がにっこりと微笑む。
「そうか。ありがとう。またな。」

=強行犯係=
「子どもまで口裏を合わせるとは考えにくいし、番組の内容も
 覚えていました。」と古賀。
「あんなのは雑誌のテレビ紹介に載ってる。わしかて言えるって。
 なんかすっきりせんねん。
 大体西本文代と桐原洋介が、なんでわざわざあんな所で会うとってん。」
「西本文代がおびき出すとか、いろいろ考えられるじゃないですか!」
「わしにはあの女に芝居が出来るとか、計画的に行動できるとか思えへんねん。」
「印象だけでものを言うのはやめてください。」
「目に見えてる事実かて真実かてとは限らない!」

別の刑事たちが戻り、報告する。
文代は事件があった3日後、消費者金融5社に約40万ずつ返済していたことに
たどり着く。
「頭、冷やしてくるわ。」笹垣は外へ出ていった。

雪穂が家に戻ると、文代が酒を飲んでいた。
「お母さん、どうしたの?」
「明日来いってさ。警察。
 やってらんないよ。私が何したっていうんだよ!」
雪穂は母の背中を見つめながら拳をぎゅっと握り締めた。

川沿いの道を歩く笹垣の顔に、紙切れが張り付く。

笹垣の過去を古賀に話してきかせる刑事。
「笹やんは昔、誤認逮捕で偉い目にあってな。
 動機、目撃者、凶器。
 全て揃った容疑者を、笹やんは自信を持って引っ張った。
 そしたらその容疑者には一人娘がいてな、
 親父が捕まってからその子な、犯罪者の子どもってイジメにあって、
 自殺しちゃったんだわ。
 そのあとにそいつの無実が証明されてな。
 俺たちの仕事はな、生まれなかったはずの悲劇を生んでしまうことがある。
 笹やんもそれが怖いんだろう。」

[ 本帖最后由 茜茜姐姐 于 2006-4-17 06:54 编辑 ]
その頃、雪穂は亮司の作った切り絵をビリビリに破き
川へ流していた。

笹垣は、一人、殺人現場のビルにいた。

ダクトを必死に這う亮司。
誰かに足をつかまれる。振り返ると、父がいた。
慌てて前を向くと、ダクトの出口に笹垣が怖い顔をして待ち構えていた。

夢から覚め飛び起きる亮司。

「もう終わるからね。亮君・・・。」
雪穂は、最後の切り絵、雪の結晶を川にそっと流し、
それを見送りながら涙をこぼした。

二日酔いで眠る母親に、銀のハサミを握らせようとする雪穂。
母が目を覚ましそうになり、
「お母さん、これ飲んで。
 二日酔いに効くって。隣のおじさんにもらったの。」
雪穂はそう言い、くったくのない笑顔で笑った。
「ありがとう。優しいね、雪穂は。」
娘の頭を撫でる文代。
「雪穂、やったのってあんただろう?
 だってさ、あんた以外いないもんね。
 そりゃ、殺したくもなるよ。あんなオヤジ。
 大丈夫だよ。誰にも言わないから。
 おやすみ。」
薬を飲んだ文代は、そう言いまた眠りに落ちた。

「殺したくなるって・・・なんで?
 なんで、なんでそんなことさせたのよ!」
雪穂の瞳から涙がこぼれた。

ビルで考える笹垣の元に、古賀が駆けつける。
「西本文代が、子どもと無理心中を図りました!」

西本家を調べる刑事たち。
ガスによる無理心中。
笹垣は、流しの下の戸棚から、紙に包まれた銀色のハサミを発見する。
「それ、凶器じゃ!?」

=病院=
「目ー覚めたか?」笹垣が言う。
「病院?」雪穂の言葉に笹垣が頷く。
「あの、」飛び起きる雪穂。
「寝とった方がいいで。」

「お母さんはね、君と、無理心中しようとしたんだ。ガスで。
 だけど君は、命を取り留めたんだ。」
「あの・・・お母さんは・・・」
「辛いと思うけど・・・」と古賀。
この時の雪穂の微笑みを、笹垣は見逃さなかった。
「そうですか・・・。
 私だけ・・・生き残って・・・。」
「これ、お母さんの?」ハサミを見せる古賀と笹垣。
「そうです。」
ためらうことなくそう答える雪穂を、笹垣は険しい表情で見つめる。

病院の屋上で、雪穂は夜空を見上げて拳を握り締める。
彼女の瞳から涙がこぼれた。

この涙は、母への決別でしょうか。

雪穂の学校では、質屋殺しの犯人は雪穂の母親だ、という噂が広まっていた。
雪穂のランドセルには『ヒトゴロシ アイジン ハンザイ バカ』など
落書きされていた。
町を行き交う人々が、好奇の目で雪穂を見つめる。

笹垣はまた殺害現場にいた。
「まだ、すっきりしないんですか?」古賀がやって来た。
「第一発見者の菊地君はな、こない言うてんねや。
 ドアの前にはブロックや建築資材が積まれてて
 ドアはあまり開きませんでした。
 こお、あんまりていうのが、気になってな。
 これぐらいやったら、ドアは多少開く。
 犯人も逃げられる。 
 そやけど、これ全部積まれとったら、ドアは開かん。
 窓は閉まっとったと書いてある。
 となると、逃げられるところは、一つしかない。
 あっこなら、西本文代は逃げられないんじゃないか?」
笹垣がダクトを指差して言う。
「わしはな、犯人は子どもちゃうか思うたんや。
 被害者の子どもか加害者の子ども、どっちかや。
 おぞましい話やろ!?
 せやけど、肝心の動機が見つからん。
 息子やったとして、西本文代との密会現場を見たことが原因やったとする。
 せやけど、西本文代が自殺まで追いつめられる理由、
 凶器の説明もつかんようになる。
 娘やったら、相手の男を殺すほど守りたかった母親を庇わん理由も
 犯人に仕立て上げる理由もわからへん。」
「あの子は母親と一緒にガス吸ってたんですよ”!」
「なあ!だから、ドアはそこそこ開いたんや。」
「本当に納得してるんですか?」
「納得するもせーへんも、わしゃ転勤じゃ! 
 するしかないやろ。」

=図書館=
「あんた大丈夫?」矢口が亮司を心配する。
「スカーレットって、おかしいよ。
 人殺しても生きるためって、たくまし過ぎるよ。
 幸せになってやるとか、人殺しのくせに。」
「でも、彼女はさ、夢を見るんだよ。
 自分の幸せが何だかわからなくなって、
 それでも走り回る夢。」
「夢?」
「あなたのお父さん殺した犯人も、
 どこかで悪い夢見てると思うよ。
 たとえ逃げ延びたってさ、そんな風に本当の罰って、
 本人の心と記憶に、下されるものだと思うよ。
 ・・・ね、あの子から手紙きた?
 あ、ううん、何でもない。」
亮司は矢口の言葉に、急いで家へと走って帰る。

手紙は届いていなかった。

捜査の打ち切りを知りほっとする弥生子と松浦。
「凶器も見つかって、ほぼ、犯人確定だったらしいけど、
 その人娘と一緒に無理心中しちゃったんだって。
 西本っていうの。うちの客?
 明日一応新聞にも出るって。」
「じゃあ・・・俺たちは、一件落着ですね。」
「まあね。」
「それで、娘のほうは?」
「助かったって。」
その話を廊下で聞いていた亮司。

「俺はその時、雪穂が全てを背負ってくれたことに、 
 あの奇妙な約束の意味に、やっと気づいたんだ。」

亮司は雪穂のアパートへと走り出す。
『すてて下さい』と書かれた張り紙と、荷物が置いてあった。

その頃、雪穂は笹垣からあのハサミを受け取っていた。
ガムテープでランドセルの落書きを隠してある。
「ありがとうございます。」
「こんなん持っときたいんか?
 事件のこと、思い出すんじゃないか?」
「いい思い出もあるから。
 お母さんの形見だし。
 もともと、死んだお父さんのものだし。」
「一つ嘘をついたらな、どんどん嘘つかなあかんようになんねん。
 そんな人生に未来なんてあらへん。
 お天道さんの下歩かれへんようになる。
 身~滅ぼすだgけや。
 わしに、何か言うこと、ないんか?」
「いろいろお世話になりました。」笑顔でそう言い、歩き出す。
「なあ! 
 君やったらなれると思うで、スカーレット。」
「ありがとうございます。」
笹垣に笑顔で答えた雪穂は、彼に背を向けると険しい表情で歩き出した。

「わがこころのよくてころさぬにはあらず。
 また害せじとおもふとも、百人千人をころすこともあるべし」
(往生のために千人殺せと私(親鸞)が言ったら、
 おまえ(唯円)は直ちに千人殺すことができるはずである)

亮司は図書館に駆け込み、雪穂が借りていた『風と共に去りぬ』最終巻を探す。
本の間に、黄色い手紙が挟まっていた。

『亮くんへ。
 いつか、この手紙見るかな。
 そう信じて、書くよ。
 何があっても、多分亮くんが思っている通りです。
 後悔なんて全然してないけど、
 本当は、私自身も一緒にいなくなるつもりだった。
 私と亮くんをつなぐものは、
 とにかく全部消えてしまったほうがいいと思ったから。

 だけど・・・肝心の私だけは残ってしまった。ごめん。
 どうも私は 神様にに嫌われているみたい。
 死んだら全部終わるなって、心のどこかにあったズルを
 見逃してもらえなかったみたい。
 だけど、こうなったらどこまでも生きてやろうと思います。
 親を殺してまで、手に入れた人生だから。
 私は、遠くに行きます。
 場所は言わないね。
 人から見れば もう亮くんは被害者の息子で、
 私は、加害者の娘です。
 私たちが仲良しなのはどう考えてもおかしいし、
 それがバレたら、きっとすべてが無駄になってしまう。
 今までも、これからも、会ったこともない、
 名前も知らない他人でいよう。
 二人のためには、それが一番いいと思うんだ。
 だけど、あれはもらっていく。
 あれは、亮くんだから。
 ドブのような毎日の中で、
 白い花を咲かせてくれた亮くんだから。
 いいことなんか何もないって思っていた私に、
 笑うことを教えてくれた、亮くんだから。
 何よりもあの時・・・私を助けてくれた、亮くんだから
 亮くん・・・ありがとう。
 私、あの時ほんとにうれしかった。
 生まれてきてよかった。
 もう十分だって、そう思ったんだ。
 亮くんは、私の太陽だったよ。』

手紙の中の亮という文字は全て消されていた。

その頃雪穂は電車のホームでハサミをにぎりしめていた。
雪穂が電車に乗り込もうとした時、亮司が雪穂の腕をつかむ。
雪穂の手からハサミと帽子が落ちた。
電車のドアが閉まる。
「待って。」
息切れしながらそう言う亮司。
汗だくの亮司の膝には転んだあとがあった。
雪穂の瞳から涙がこぼれる。

「雪ちゃんだって、ドブに花咲かせてくれたじゃない!
 月も・・・。
 俺、、雪ちゃんと出会って、笑えるようになったよ!
 いいことあるんだって、そう思った!
 雪ちゃんがいてくれたこと、ありがとうって思ってるよ!
 雪ちゃんだって、・・・雪ちゃんだって俺の太陽なんだよ!
 行かないで!行かないでよ雪ちゃん!
 俺、強くなるから。雪ちゃんはこんなことしなくていいように。
 もう、絶対置いて逃げたりしない!」

雪穂が俯き、改札のほうを指差す。
「行って。
 行って。
 もう暗くなるから。」

「いつの間にか、俺たちの上には 太陽はなかった。
 他人でいること以外、おまえに出来ることはもう何もないんだと、
 笑われてている気がした。」

亮司は落ちたハサミを拾い上げ、雪穂の手紙を切り始める。
電車の中で、亮司が作ってくれた切り絵を手にあわせる雪穂。
それは、太陽の切り絵だった。

「俺たちは、11歳だった。」

=1998年冬=
ホームに切ない表情でたたずむ制服姿の亮司。
反対側の電車に乗った雪穂が亮司とすれ違う。

「たった七年のうちに、ほとんどのことは変わった。 
 俺が中学を卒業する頃、キリハダは潰れた。
 松浦が店の金を使い込んだからだ。
 あのビルは建築が再会され、
 お袋はそこでスナックを始めた。
 事件のせいで保証金がゼロだからだと言っていた。
 雪穂のことなど、もう誰も覚えていないだろう。
 多分、この人(矢口)と、俺、
 と、こいつ(松浦)以外。

 俺たちはこのままほんとに他人として生きていくものだと
 思い始めていた。
 もう、交わることのない道を歩いていくのだと。」

雪穂は、唐沢礼子(八千草薫)に引き取られていた。
「ただいまお母さん。」
「お帰り。」礼子が雪穂に優しく微笑む。

食事の席で、雪穂にボーイフレンドはいないのか尋ねる礼子。
「いきなり何言うかな。」
「毎日毎日帰ってきて私のご飯作って、
 休みの日はお教室手伝って、 
 お母さんにはようわからんけども、
 それは、若い子の生活と違うんじゃないの?」
 遠慮せんと、もっとやりたいことやってええんよ。」
「じゃあ今度、温泉行こうよ。
 流行ってるんだよ、温泉!」
雪穂は笑顔でそう言った。

部屋のベッドに横になり、爪をかむ仕草の雪穂。
「上手くやれてるよね、私・・・。」
壁には、亮司が作ってくれた太陽の切り絵が飾ってあった。
それを見つめながら、「亮くん・・・」と呟く雪穂。

友達と下校する雪穂を、他校の男子生徒がカメラで狙う。
「ラッキー!」
撮影に成功すると、生徒は走って逃げていった。
「大江工業じゃない? 
 あの学校、暴れん坊将軍なのよね!」雪穂の友達が言う。
「そういう言い方良くないよ。
 どこにでも凄い人もいれば、くだらない人もいるでしょ。」と雪穂が諭す。

雪穂を険しい表情で見つめる女子生徒がいた・・・。

「事件は時に埋もれ、忘却の空へ・・・。
 もう全てが終わったと思っていた。
 もう誰もが、忘れたと思っていた頃だった。」

信号待ちをする亮司。
道路の向い側に、笹垣が亮司を見つめて微笑みを浮かべていた・・・。
白夜行 第2話
『閉ざされた未来に』

大きな道路にかかる横断歩道の両端で信号を待つ亮司(山田孝之)は、
向い側で信号を待つ男が笹垣(武田鉄矢)だと気づく。
笹垣は微笑みを浮かべている。
険しい表情の亮司。
信号が変わり、亮司も笹垣も歩き出す。
道路の真ん中で二人がすれ違う。
だが、笹垣はまっすぐ前を見たまま、亮司の横を通り過ぎていった。
横断歩道を渡りきってから、亮司はそっと振り返り、笹垣の後姿を確認し
人ごみの中にまみれた。
そして、そんな亮司の後姿を見つめる笹垣・・・。

亮司の母親の店『やえこ』をするどい視線で見つめる笹垣。
店の戸に手をかけようとすると、弥生子(麻生祐未)が丁度出てきた。

亮司は松浦(渡部篤郎)に、笹垣とすれ違ったことを話す。
「もしかしたら戻ってきたのかもしれないし。
 だからコレ当分辞めたいんだけど。」
だが松浦は、犯人はあがったも同然だと言い、分け前の3万を亮司に渡し
帰っていった。

亮司は不安気に、棚に並べた『風と共に去りぬ』を見つめ・・・。

「1991年、冬。
 俺は父親を殺し、
 その俺を庇う為に、雪穂は、母親を犯人に仕立て上げて、殺した。
 被害者の息子と、加害者の娘になってしまった俺たちは、
 事件を永遠に封じ込める為に、
 会ったこともない、顔も知らない他人になる道を選んだ。
 あれから、7年・・・。
 雪穂は本当に一度も連絡をよこさなかったから、
 いまや、俺たちは完全に他人だった。」

図書館で雪穂の指定席を見つめぼーっとする亮司。
谷口真文(余 貴美子)が持っていた本で、学校をサボった亮司の頭を軽く叩く。
「待ってたってね、もう絶対に来ないよ、あの子。
 うじうじうじうじ7年間も。
 向こうはね、もう忘れてんの!
 いい加減わかりなさいよ、もう!」
「そんなんじゃ・・・」
「大体さ、今更会ってどうするつもりなの?
 もういっぺん付き合ってくれとでも言うつもり?」
「だから・・・」
「学校に行きなさい!」
「・・・そうですよね・・・。」

「さすがに、7年経ったから・・・
 雪穂がこの駅に降り立つことは、二度とないのだと、
 そう思い始めていた。」

切ない表情で駅にたたずむ亮司。

その時向い側のホームを通過する急行・淀橋行きの電車。
その電車のドアにもたれ、雪穂(綾瀬はるか)は『風と共に去りぬ』を
握り締め、切なそうに駅を見つめていた。

「だけど、もし雪穂が、事件など関係ないどこかで
 幸せにやっているのなら・・・」

すっかり日の落ちたホームを、亮司は諦めて後にする。

「あと8年か・・・。」
額に飾った太陽の切り絵に触れ、雪穂が呟く。

「俺は、良かったねと言ってあげる。
 俺たちは、その為に他人になったのだから。」


資料室で当時の資料を読む笹垣。
「ドアの前には建築資材やブロックが積まれてて・・・」

「7年もずっと気にしていたんですか?」部下の古賀(田中幸太郎)が聞く。
「別にずっとやない。」
「スナックやえこですか?」
「ああ。おかしいやろ。
 何でわざわざ亭主が殺された所で店出を出す?」

「きっと、このまま、何事も無く・・・
 俺たちは、他人として生きていくのだろう。」

教室のロッカーの前で立ち尽くす雪穂。
彼女のロッカーに、『ガイチュウ』と悪戯書きされていた。
クラスメートの一人・藤村都子が不敵な笑みを浮かべている。

「よくも悪くも、何事も起らず。
 な、雪穂。
 こんな形で再会するなんて、俺は夢にも思わなかった。」

17歳になった亮司は、同級生の菊池(田中圭)から1枚の写真を突きつけられ
愕然とした。
その写真には、父・洋二(平田満)と幼い雪穂(福田麻由子)が写っていた。
「俺のこと覚えてるか?
 おまえの親父発見してやったんだけどな、俺。」
それは、第一発見者の少年・菊池だった。
亮司と同じ学校のアキヨシと知り合いの菊池は、アキヨシの父が趣味だった
写真の中からこれを見つけたのだ。
「おまえの親父こんなビルに女の子連れ込んで奈にやってたのかな!?」
「さあ、何やってたんだろ。」
「100万!」ネガを手に菊池が言う。
「ないよ、そんな金。」
「ま、母ちゃんと相談でもしろ。」
菊池たちが立ち去ったあと、その場に座り込む亮司。

一方で雪穂は、唐沢礼子(八千草薫)に引き取られ私立清華女子学園に通い、
昔の暗い影などまるで感じさせないような明るい活発な娘に成長していた。
だが、学校で昔の雪穂を吹聴する怪文書が事件の記事コピーと共にばら撒かれ、
それによる嫌がらせやいじめにあっていた。

ロッカーの悪戯を拭き落とす雪穂を親友の川島江利子(大塚ちひろ)が手伝う。
「誰だろうね!こんなことするの!」
「ね。ご苦労さんだよね。」と雪穂。
「私は信じないからね、あんな手紙!」
「手紙?」
「・・・知らない?」
「手紙って?」
「・・・驚かないでね。」
江利子はそう言い、カバンの中から封筒を取り出す。

『華女子学園の唐沢雪穂は西本雪穂である』
切り取った活字がそう並べられてあり、その隣に、あの事件を伝える
新聞の切抜きが貼られていた。

「雪穂?」
「ごめん。ちょっと、びっくりしちゃって・・・。」

=図書館=
「あんたね、他にやること無いの?」谷口が亮司に声をかける。
「便りが無いのはいい便り、なんだよな、きっと。」
「だといいけどね。
 殺人犯、正確には容疑者だったけど、
 そういう親の子に、世間は甘くないからね。
 あんたはまだ、思い出に出来る部分があるかもしれないけど、
 あの子にとっては、そういう以前の問題っていうか、
 触れられたくない過去でしかないっていうか。
 もし私があの子だったら、やっぱり、二度とあんたに会おうとは
 思わないかなー。
 いい加減前向いたほうがいいよ。」

駅のホーム。
江利子に貰った手紙を、雪穂は爪を噛みながら見つめている。
各駅電車・淀橋行が到着する。
雪穂は手を握り締め、その電車を見送った。

急行電車の一番前で、爪を噛みながら景色を見つめる雪穂。
線路の分岐点。
雪穂は通過する淀橋駅に、亮司の姿を探していた。
「いない・・・。」そう呟く雪穂。

ホームで雪穂を捜すのは、亮司の日課だったのでしょうか?
そして雪穂も、そんな亮司を急行電車から見つめていた・・・。

その頃亮司は母の店を訪ねていた。
「あら息子!久しぶり。」
「なんか、変わったことはなかった?」
弥生子は笹垣と書かれたボトルを指差す。
「この間いきなり来て、しつこいったらないのよ!
 何で、亭主が殺されたところに店出してんだとか。
 保証金ゼロで格安だったからだって言っても
 全然信じてくれなくて。ネチネチネチネチ!」
「それだけ?」
「ドア、がどうのって?
 ドア、外開きに替えたんやな、とかなんとか、言ってたけど?」

「時を経て、俺は一つの失敗に気づいていた。
 死体の発見を少しでも遅らせようと、
 ブロックや建築資材を積んだ。
 内開きのドアの前に。
 その結果、ダクトしか逃げ出せないという状況を作ってしまった。 
 あのダクトは、大人が通れるようなものではない。
 もし、笹垣がそのことに気づいていたとしたら・・・。
 もし、もう一度、菊池にそのことを確認したら・・・。
 もし、菊池がドアが全く開かなかったことを思い出していたら・・・。
 もし、笹垣にこの写真を見せたら・・・。
 疑惑の矛先は、確実に、雪穂に行く。」

あの川辺で頭を抱えて悩む亮司。
水面に月が映っている。月の花・・・。
子供の頃、雪穂と一緒に見たことを思い出す。

「俺は何としても、雪穂に借りを返さなければいけないと
 思ったんだ。」

礼子と一緒にいけばなをする雪穂。
礼子がバランスが悪いとアドバイスすると、
「ダメ。
 これ、昔仲良しだった友達なんだ。
 今は会えないから。」
「そんな神経質にならんかて・・・。
 会いたかったら会いに行ったら?」
「いつかね!」
「いつかいつか言っているうちに、一生、会えんようになったり
 するもんよ。」
「大丈夫だよ。同じ流れに乗っているから。・・・多分。」

菊池の様子を伺う亮司・・・。

雪穂の学校の掲示板に、雪穂の小学校時代のアルバムの写真が
何十枚も貼り付けられる。
雪穂の顔写真に、赤いペンで丸印が付けられていた。

それを引き剥がす雪穂・・・。

鉄工所で働く菊池のロッカーから、ネガを探す亮司。
だが発見できず。
亮司は菊池の家に忍び込み、菊池の部屋を探す。

雪穂のロッカーに、西本と悪戯書きされる。
雪穂のロッカーに生ゴミが入れられ、それを頭からかぶってしまった雪穂・・・。
「雪穂・・・。」心配そうに江利子が近づく。
「ゴミ箱じゃないんだけどな・・・。」雪穂が笑顔を作って言う。
ゴミを片付けようとした雪穂は、その悪臭に気分が悪くなり、
トイレへ行こうとする。
「唐沢さん、どうしたの?」藤村が雪穂を引きとめる。
「肩貸そうか?」
雪穂はその場に座り込み、嘔吐してしまう。
生徒たちから「うわぁー。」と嫌な声が上がる。
藤村がその姿に意地悪く微笑んだ。

帰り道、江利子は雪穂に先生に言うように勧める。
「言ったってしょうがないよ。
 犯人もわからないし。」

その時、「ガイチュウ!」と叫ぶ女子生徒の声。藤村だ。
その言葉が、ロッカーに書かれた文字と重なる。
藤村は、校内に入り込んだ男子生徒をホウキを振り回し追い出していた。
「あいつ、大江工業のアキヨシっていうらしいんだけど、
 私たちのヤバイとことか写真撮って脅すんだって。
 お金とか、体とか。
 唐沢さんのも、あいつの仕業かもしれないね。
 気をつけなよ。あんた、綺麗だから。」
「うん。ありがとう。」笑顔でそう答える雪穂。

「ねえ・・・犯人って、藤村さん・・・。」と江利子。
「証拠あるわけじゃないし。」
「本当だから・・・だから黙っているの?
 でも、でもさ、本当だとしても、雪穂には何の罪もない話じゃないの?
 出来れば知られたくないっていう気持ちはわかるよ。
 でも、もうバレバレなのにしらばっくれて笑っちゃっているのって、
 痛すぎるっていうか、そこまでして隠すってさ、
 それこそ、名前変えて上手くやろうとしていますって、
 逆に言っちゃっているようにも見えちゃうっていうか・・・。」
「そっか!」笑顔でそう答え雪穂は歩き出す。
「待って。待って雪穂。ちゃんと話そうよ。」
「何を?」笑顔で尋ねる雪穂。
「雪穂のことわかりたいんだよ。
 何考えてるんだとか、どう思ってるんだとか。」
「江利子、もう、わかってるじゃない。
 ずるくてみっともないんだよ、私。
 じゃあね。」
雪穂は、淀橋行きの各駅電車の前で暫く迷う雪穂。
決心を固め、その電車に乗り込む。
電車が動き出す。
雪穂は、ホームで座り込み震えていた。

家に戻った雪穂は、「警察呼びますよ!」と声を荒げて電話を切る礼子に
駆け寄る。
電話が又鳴る。
「伝言見たんだけどさ、1000円でOKってほんと?」
電話を切っても、すぐにまた呼び出し音が鳴る。
雪穂はコンセントを引っこ抜いた。

「うちの電話番号、悪戯で駅とかに書かれてるんだよね、もう。」
礼子にそう言い笑ってみせる雪穂。
「雪穂!学校行こう。
 どうせ、またやられとんねやろ?
 施設にいた時かて、散々やられたやろ?
 黙ってたかて何も変わらないことは、あんたが一番よう知っとるやろ?」
「落書き、探してくるね。」そう言い部屋を出ようとする雪穂。
「一生、そうやって逃げるの?
 過去を完全に消すことなんて、出来へんのよ。
 もし、消すことが出来たとしても、あんたはそれで幸せなんか?」
「大げさだな。ホントに大丈夫だから。
 行ってきます。」

亮司は外に置かれたゴミ箱の中まで探すが、ネガは見つからなかった。
「俺は・・・」
菊池の家にインターホンが鳴り、亮司はその様子を伺う。
訪ねてきたのは笹垣だった!
見つからないように身体を小さく丸め息を殺す亮司。
「あの事件の時、君、こない言うてんねん。
 ブロックや建築資材が積まれてて、ドアはあんまり開きませんでした。
 その、あんまりというのはどの位だか覚えてへんか?」
「何で今更あんなこと・・・」
「大人になって記憶が整理されることってあると思うんだけどな。
 どやろ?どやろ?どう?ん?」笑顔で菊池の返事を急かす。
「・・・全然開かなかったような気がする。」
「そうか。全然か・・・。」笹垣の表情から笑みが消える。
「ありがとう。またな。」

雪穂は清華学園前駅の男子トイレに落書きを見つける。
『24hOKよ!1000円~』
雪穂の名前と電話番号が書かれていた。
「~って・・・。」
悲しく笑う雪穂。

『もう、バレバレなのにしらばっくれて笑っちゃってるのって、
 痛すぎるっていうか・・・』江利子の言葉。
『一生、そうやって逃げるの?』礼子の言葉。
『そんな人生に未来なんてあらへん。』笹垣の言葉。
「うるさい・・・。」雪穂の表情が険しくなる。
『おてんとさんの下、歩けへんようになる。』
「うるさい!!」
雪穂は持っていた雑巾を投げつけた。

あの橋から川を見つめ、銀のハサミを手に亮司が呟く。
「もう、殺すしかないよなー。
 けどそんなことしたら、もう本当に会えなくなるってことだよなー。
 けどそれでいいんだよなー。」
雨が降ってきた。
「何でだよ・・・。雪ちゃん・・・。」
亮司の手からハサミが落ちる。
「何で誰もいないんだ・・・。
 何で俺こんな一人なんだよ・・・。」
雨に打たれながら号泣した。

各駅停車淀橋駅行きの電車から降りる雪穂。

南大江駅に駆け込む亮司。
駅のホームに駆けつけると、駅員と話す制服姿の女性がいた。
「すみません。」と駅員に謝っている。

その少女の後を追い男子トイレに行くと、少女は壁に書かれた落書きを
掃除していた。
「あの・・・。」
亮司の声に、少女が振り返る。
「あの・・・それ・・・。」
「友達が・・・悪戯されてて・・・。」
『西本雪穂』と書かれた悪戯書きを消し続ける。
「タイムマシンがあったら・・・過去に行く?未来に行く?」
亮司と視線を合わさず、質問にも答えず、彼女はただ壁を掃除し続ける。
「チャゲと飛鳥、どっちが好き?」
彼女は黙ったまま壁の掃除を続ける。
「ドブに咲く花、知ってる?」
堪えきれず、彼女が泣き出す。
「本当は、ないんだよ・・・。
 でも・・・綺麗だった・・・。
 すごくすごく、綺麗だった。」
そう言い顔を上げた雪穂を、亮司がしっかりと抱きしめた。
「雪ちゃん・・・会いたかった。俺・・・」
泣きながら亮司が言う。
雪穂も涙をこぼす。
「汗・・・すごいよ。」
あの時と同じセリフを雪穂は言い、亮司を抱きしめた。

亮司の部屋。
「そっか・・・。」
雪穂は菊池が亮司に渡した写真を見つめ、爪を噛む。
「なあ、俺もう自首しよっかな。
 両方とも俺がやったことにしてさ。
 俺が雪ちゃんち忍び込んでガス開けたことにしてさ。」
「だーめ。ハサミ、お母さんのだって言っちゃってるし。」
「・・・ごめんね・・・。
 俺ずっと後悔しててさ。
 あん時俺が自首してれば、雪ちゃん人殺しになんなかったし。
 雪ちゃんの人生ボロボロにしたの、誰が何と言おうと、俺と・・・
 俺の親父だから・・・。
 幸せにしてやろうとか、そんな偉そうなこと言えないけど、
 でもせめて、不幸せにしないことなら俺にも出来るんじゃないかって
 思ってきてさ・・・。」
黙ったまま写真を見つめる雪穂。亮司が写真を奪い取る。
「そんなのもういいよ!
 菊池も笹垣もぶっ殺してさ、俺が死ねば済む話でしょ?」
雪穂が亮司の頬を叩き突き飛ばす。
「あのさ、私の幸せって、何かと思ってるわけ?
 何の為に私が別人になろうとしてきたと思ってんのよ!
 西本だとばれるから、事件のこと思い出す人が増えるからでしょ!
 何の為に、毎日毎日、わざわざ急行電車に乗っていると思ってるのよ!
 各駅だと降りちゃうからでしょ!
 あんたがかんでるから、降りたくなっちゃうからでしょ!
 何言われても、何されても、ニコニコ笑って・・・
 何の為に7年も他人の振りしてきたと思ってんのよ!
 もう一回、あんたと歩く為に決まってるじゃない! 
 ・・・時効がきて、そしたら、もう一回、太陽の下、
 亮君と歩くんだよ。
 昔見た、おじいさんとおばあさんみたいに、手をつないで。
 いやー、苦労したねとか、鬼畜なことも笑いながら喋ったりとかして。
 でも、あれは仕方なかったよねとか、慰めあったりして。
 そんな相手・・・一人しかいないよ・・・。
 亮君以外、私には、誰もいないんだよ。」
亮司の胸元を掴み、泣きながらそう訴えた雪穂は、
彼から離れ、また写真を見つめる。
亮司は涙を拭き、亮司が雪穂の前に立つ。
「7年も前の話だし、ネガさえなければ、警察としては動けないと
 思うんだよね。」

「それから俺たちは、この場を何とか切り抜ける方法を考えた。」

切り絵で人の形を作り、計画を練る二人。
『F』制服姿の女
『A』カメラを構える男
『K』キャップをかぶった男

「運を天に任せるような計画だったけど・・・」

「ほんとに、出来る?」
雪穂に言われ、亮司が頷く。

雪穂の背中を見送り、亮司が別の方向へ歩き出す。

「俺たちには・・・
 もう後が無かったんだ。」

亮司は、少女Fの切り絵を見つめ・・・。


藤村(F)のロッカーに手紙を忍ばせる雪穂。

菊池のロッカーから愛用のキャップが無くなる。
菊池はその直後、電話で亮司に呼び出される。

待ち合わせの映画館の前にいくと、亮司が映画『タイタニック』の
チケットを差し出す。
「ふざけてんのかよ、テメー。金は!?」
「これさ・・・実は親父の隠し子なんだよな。」
「は!?」
「もうちょっと待ってくれよ。とりあえず、今日はこれで頼むよ。」
菊池は亮司を睨みつけ、映画館へと消えていった。

「よし・・・。」
時間を確認する亮司。17時15分。

その頃、藤村はロッカーの手紙に微笑んでいた。
『6時に弁天通商の10番倉庫に・・・
 はずかしいので一人で来て・・・』
「昔の友達と待ち合わせがあって。」
友達にそう言い、藤村は一人倉庫へ向う。

その様子を確認する雪穂・・・。

10番倉庫。
犯行直前、亮司は父が雪穂の写真を撮影していたことを思い出し、
立ち上がる。

午後6時。雪穂はチャペルで十字架を見つめていた。

倉庫に藤村がやって来た。
亮司は背後から忍び寄り、ビニール袋を頭に被せ拉致する。

雪穂の元へ江利子がやって来る。
「一緒に帰ろうと思ったんだけど。」
「うん。」雪穂が微笑む。

倉庫の近くを歩く二人。
「花屋さん、寄るんだっけ?」と江利子。
「うん。ごめんね、付きあわせちゃって。」
「あのさ、昨日、ごめんね。」
江利子から少しはなれ、落ちていた制服を拾い上げる雪穂。
「やだ・・・。なに?」
雪穂は倉庫へ入っていく。江利子が雪穂に続く。
脱ぎ散らかした衣服の先に、女が縛られ倒れていた。
あの、キャップと一緒に・・・。

家に駆け込んだ亮司は、部屋の隅で奮え続ける。

警察に事情聴取を受ける雪穂と江利子。
「学校の回りで変質者が出たとか、待ち伏せしている人間がいたとか、
 そういうことはない?」刑事が聞く。
「とくには・・・」と江利子。
「でも、大江工業の人が、うちの学校の子、隠し撮りして脅迫してるって、
 藤村さん言ってなかったっけ?」雪穂が言う。
「うん。」
「名前とか、わかる?」
「確か・・・アキ・・ヨシ。」

アキヨシ(A)を訪ねて行く警察。
「僕じゃないです!僕、写真を取って売ってただけで!」
「誰に売ってたんだ!?」
「これに、見覚えないですか?」
警察が現場に落ちていた菊池のキャップを見せる。

警察に呼ばれる菊池。
「だから5時半から7時半までは映画を見ていたんだよ!」
「じゃあ何でこれが現場に落ちてるんだよ!?」
「知るかよ!」
「一人で映画を見てるっていうのはな、アリバイにはならないんだよ!」

家に戻ってきた菊池を、亮司が待っていた。
「金、出来たんだけど・・・。」
「ネガはやる。
 やるから俺のアリバイを説明してくれ。」
「なんか、あったの?」

藤村の見舞いに行く雪穂と江利子。
「毎日毎日、お見舞いありがとね。」母親が応対する。
「いえ。あの・・・犯人は、まだ?」雪穂が聞く。
 だからあの、
「いきなりビニール袋被されて、気絶したんで、何も覚えてないって。
 不思議なことなんだけれど、どうも身体は汚されてないみたいで。」
「警察には?」
「主人も、あの子の為にも、告訴はしない方がいいだろうって。」
「私たち、絶対誰にも言いませんから。」

「でもさ、どういう神経してるんだろうね。
 こういうこと平気で出来るって、人間じゃないよね。」
帰り道、江利子がそう雪穂に言う。
「・・・ほんとだよね。」
「じゃあね。」
江利子の言葉に考え込む雪穂・・・。

菊池からもらったネガと写真を灰皿の上で燃やす亮司。
「何でこんなことばっか・・・上手くいくんだろうな・・・。」
そう呟き、床に落ちた別のネガを見つめる。

「何のことはない。
 気がつくと俺は、親父と同じことをしてた。
 もし、わかるやつがいるなら教えて欲しい。
 どうして俺たち、生まれてきたんでしょうか。
 何の為に生まれてきたんでしょうか。
 こんなことばかり繰り返すためでしょうか。
 何の為にこれから生きていけばいいんでしょうか。」

部屋のテーブルの上にあったものを振り払い、声を上げて泣く亮司。

亮司を思って生けた花が枯れていることに不安を覚える雪穂。

「だけど、いくら考えても答えなんか見つからなかったんだ。」

ビルの屋上に立つ亮司。
一歩一歩、端へと歩んでいく。
昇っていく朝日に、雪穂の言葉を思い出す。
「もう一回、太陽の下、亮君と歩くんだよ。
 亮君の他に、私には、誰もいないんだよ。」

「見つからなかったんだ・・・。
 たった一つしか。」

制服のまま布団に横になる雪穂は、亮司の涙が気になり、
亮司の家を訪ねていく。
インターホンを鳴らしても、誰も出てこない。
雪穂は亮司を探して走り出す。

少しためらった後、図書館のドアを開ける雪穂。
いつもの席に亮司はいなかった。
『風と共に去りぬ』の本を次々とめくり、4冊目で亮司からのメッセージを
見つけた。

『2006年11月11日』
白い紙にはそれだけ書かれ、少年と少女が手をつなぐ切り絵が
黒い紙で作られ貼ってあった。
「時効の日・・・。」

切り絵を見つめ泣く雪穂。
人の気配に振り返ると、亮司がいた。
「あの・・・大丈夫ですか?」そう言い手を差し伸べる。
「大丈夫。」雪穂はそう答え、亮司の手を掴んだ。

「なあ、雪穂。
 俺たち、たいした希なんかなかったよな。
 ただ、もう一度、歩きたかっただけなんだよな。
 青い空の下を・・・。」

二人が指定席で本を読む姿を見つめる谷口。

笹垣目がけて小走りに近づいていく人物。
「刑事さん。」
「なんや?」
「桐原亮司のことで、話あんだけど。」
菊池の言葉に笹垣が笑みを浮かべる。

亮司は川辺でハサミを見つめ・・・。
白夜行 第3話
『さよならの光』

1998年12月。
川辺でハサミを見つめながら
「もう一回、太陽の下、亮君と歩くんだよ。」
そう言った雪穂の言葉を思う亮司(山田孝之)。

その頃菊池(田中圭)は笹垣(武田鉄矢)ら刑事に、
亮司が自分を陥れる為に暴行事件を仕組んだのではと訴える。
「とにかく俺はあいつにはめられたんだよ!!」
笹垣の表情が険しくなる。

2006年11月11日と時効の日にちが書き込まれた、
少年と少女が手をつなぐ切り絵を見つめ、爪を噛む雪穂(綾瀬はるか)。

藤村都子(倉沢桃子)の第一発見者、唐沢雪穂が西本雪穂であることに
ほぼ間違いない、とたどり着く笹垣。
「唐沢雪穂と桐原亮司が同じ事件に絡んでるなんて、
 こんなアホな偶然、あるわけない。」

7年前の事件の第一発見者、菊池の「全然開かなかった気がする」という言葉。
「お前ら、逃がさねーぞ。」笹垣が呟く。

「幼い頃、父を殺し、母を殺した俺たちは、
 過去の事件を蒸し返そうとする人間の口を塞ぎ、
 時効の日まで、共に生き延びることを決めた。
 だけど、それまでの8年間、俺は自分がそれまでの間、
 どこで何をしているのか、全くイメージがわかなかった。」

図書館。
机に顔をつけ、ぼーっとする亮司。
「あんた来年からどうすんの?大学?就職?」
谷口真文(余 貴美子)が同じ姿勢をとり亮司に聞く。
「どうしましょう・・・。」
「何かやりたいことはないの?なりたいものとかさ。
 じゃあ小さい頃の夢は?」
「・・・海賊。・・・すみません。」

都子を送っていく雪穂と江利子(大塚ちひろ)。
「ごめんね。毎日毎日送ってもらっちゃって。
 一人だと、怖くて。」
「そんなこと全然気にしなくていいよ、ね?」
江利子が雪穂に言う。
「・・うん。」
次の瞬間、雪穂の動きが止る。江利子の家から笹垣が見つめていたのだ。

亮司の仲間が園村友彦(小出恵介)を連れて来る。
「何やるかわかってんの?」亮司が聞く。
「わかってるって!男女逆のば・・・」
「バイトって、言ってね。」

そのバイトとは、亮司が松浦(渡部篤郎)に半ば脅されて始めた、
女性相手の売春だった。
客の一人の女性は友彦に「暗い」と言われ、部屋を飛び出していく。
亮司は彼女が忘れていった名刺入れ中に、
『大都銀行 主任・西口奈美江』という名刺が入っていた。

「なあ、雪穂。
 あの頃の俺は、何一つわかっちゃいなかったよな。
 これからの自分に、どんな明日が待ってるかなんて。
 あなたがどんな思いで今日まで生きてきたかなんて、
 これっぽっちもわかっちゃいなかった。」

笹垣の姿に不安でいっぱいになる雪穂は、亮司の元へ駆け込んだ。
「昔のアリバイをネタに、松浦って人に売春を強要されているっていう
 解釈でいいのかな?」雪穂が問う。
「怒ってる・・・?」
ため息をつき雪穂が言う。
「亮くん。藤村都子の写真ってまだある?頂戴。」
「状況が全く読めないんだけど。」
「笹垣が、藤村都子の事件を立件しようとしているの。
 被害届け出させて、7年前の事件まで蒸し返すつもりなんだと思う。
 だから、これは、私が持っていたほうが動きやすいかなと思って。」
「動きやすいって、又何かするの?」
「だって、何とかしないと捕まるでしょ!」
「それじゃまたこの間みたいなこと・・・。
 ほら、罪に罪重ねるっていうのもね。
 出来れば穏やかに生きたいじゃない、時効まで。
 出来るだけ、何事もなく・・・。」
「いいよ。じゃあ、私がなんとかする。
 ごめんね。やりたくもないことさせて。」
険しい表情でそう言い放ち、部屋を出ていこうとする雪穂。
「そんな怒ること?」
「ほっといたら何とかなるなんて、よくそんな自分に都合のいいことばかり
 考えられるわね。」
「だって昔だって何とか収まって、それから7年は何もなかったわけだしさ。」
「・・・亮君にとっては、そういう7年だったんだろうね。
 とにかく、笹垣がいつここに来てもおかしくないいんだから、
 それだけは自覚して下さい!
 あなたがコケたら、私も終りなんで。」
そう言い、部屋を出ていった。

帰り道、幼い子供が泥酔する父親を連れ帰る姿に、昔の自分を重ねる雪穂。

笹垣が仕事帰りの弥生子(麻生祐未)を待っていた。
弥生子は、亮司はここにはほとんど帰って来ないと教える。
息子はどこに、と聞く笹垣に、「こっちが聞きたい」と笑う弥生子。
部屋に飾られた帆船の切り絵。
「これ、まだあったんか。」
「まあね。」
「息子、なんで家出してる?」
「わかるでしょ。それぐらい。」
隣の部屋で松浦が寝ている。
「よいしょと。」
笹垣はおもむろに箱を開け、昔の写真を勝手に見始める。

松浦に仕事を辞めたいと訴える亮司。
「またかよ。」松浦は取り合わない。
「笹垣がまた嗅ぎまわってるんだって。
 松浦さんの小遣い稼ぎの為にパクられたくないよ。」
松浦が亮司を押さえつけ不気味に笑う。
「そういうことはさ、お前が決めるんじゃねーの!
 俺が決めるんだ!
 大体さ、俺に説教垂れる前にやることあるんじゃないの?
 どこの世界にさ、凶器持ち歩いてる犯人がいるんだよ。
 もしさ、俺がお前の共犯だったら、怖くてやってらんないよ。」

「馬鹿げた感傷だとわかっていた。
 証拠を捨てない犯人なんて、愚かしいにもほどがある。
 だけど、俺はまだ人間でいたかった。
 犯した罪の跡形に、痛みを感じていたかったんだ。
 せめて・・・。
 一つずつ、良心を捨てていくような気がした。」

当時の証拠品、カメラなどを別々の場所から川に放り込む亮司。
そして最後に、銀のハサミを見つめ・・・。

チャペル。
都子は、被害届けを出したくはないが、
刑事に他の事件につながるかもと言われ迷っていると、
雪穂と江利子に打ち明ける。
「他の事件って、何かって聞いた?」雪穂が尋ねる。
「教えてもらえなかったんだけど。
 犯人は、罪に罪を重ねている可能性があるって。
 社会のためにも、犯人のためにも、捕まえなきゃいけないんだって。」
雪穂の険しい表情に江利子が気付き声をかける。
「優しい人なんだろうなと思って。その刑事さん。」
雪穂はそう微笑んだあと、また険しい表情で十字架を見つめた。

マンションの階段を歩く亮司は、聞き覚えのある声に驚愕する。
笹垣が住民に亮司のことを聞き回っているようだった。
「ありがとう。」学生たちに笑顔で礼を言い、部屋のあるほうへ顔を向ける。
笹垣の顔からすっと笑みが消え、険しい表情で見上げる。
その恐ろしい表情と目が合う亮司。
「桐原・・・。」
亮司は立ちはだかる笹垣を振り切り、逃げ出した。
「桐原・・・。」いっそう険しい表情で笹垣が呟く。
その様子を見ていた松浦は・・・。

管理人に部屋に入れてもらった笹垣は、その部屋の借主は松浦で、
その部屋で売春していたという噂があると聞く。
きちんと並べられた『風と共に去りぬ』5巻。
その一冊を手に取り、笹垣は雪穂も同じ本を読んでいたことを思い出す。

「ちょっと酷いじゃないですかー。善良な小市民の部屋にー。」
戻ってきた松浦が言う。
聞きたいことが山ほどある、と笹垣が笑う。

亮司から雪穂に電話が入る。
「笹垣が来て、俺、今逃げて・・・」
外の公衆電話からかけ直す雪穂。電話が『船のベッドハウス』の
公衆電話につながる。
「逃げたってどういうこと!?」
「え?」
「何かあるって言ってるようなもんでしょ!」
「ごめん。」
「ハサミは?まさか、持ってってないよね。」
「持ってる。
 だけど、松浦さんが。
 あの部屋松浦さんので、時々来るんだよ。
 もし笹垣が接触していたら・・・」
「すぐ松浦に連絡取って!」
「話されてたら、どうする?」
「何でもかんでも、私に聞かないでよ!」
「・・・」
「ごめん。明日、同じくらいに連絡くれるかな。」
雪穂はそう言い電話を切った。

「こんなとこで・・・」
雪穂が悔しそうに公衆電話を叩いた。

都子は自分のロッカーに、封筒に入れられたあの写真を見つける。
「どうしたの?」雪穂が声をかけると、都子は雪穂に抱きついて叫ぶ。
「帰る!私帰る!」

「藤村さん、私ね、やっぱり被害届け出さない方がいいと思うんだ。
 私の話、聞いてくれる?」

雪穂が都子を自宅に送り届ける。
「実は・・・」
都子の母親に説明しようとした時、雪穂は背後に笹垣がいることに気付く。
雪穂は笹垣に会釈をし、その場を去る。
「ありがとね。唐沢さん。」
都子の母親の言葉に笹垣の顔色が変わる。
「あの、この間の件、」
「被害届けは、出しません。
 捕まったとしても、すぐに出て来れるんでしょう?
 逆恨みされても私のこと守ってくれないじゃない!警察なんて。」
興奮気味に叫び出す都子。
母親が都子を家の中に連れていくと、笹垣は雪穂の姿を追う。

「おい。あの子に何したんや!?」
「え!?何ですか?」
「とぼけとってもあかんぞ!
 お前が、何かやったろ、あの子に。」
「・・・笹垣さんですか?」
「大きくなったのう、西本雪穂!」
「お元気そうで。」雪穂はそう言い人懐っこい笑顔を見せる。
「桐原亮司は元気にしとんのか?」
「・・・キリハラって、あの、被害者の方の?」
「そこの息子がな、悪いことしとってな、
 あれ、もうすぐパクられるで。」
「へぇ・・・。」
「スカーレットとしてはなんも興味ないんか?」
「・・・興味も何も、知らない方なんで。」
「お前と、いや、君と、同じ本すきやったみたいやで。」
「・・・皮肉な話ですね。
 被害者の息子さんと、加害者の娘。
 同じ本を好きだったなんて・・・。」
雪穂の落ち着いた様子に笹垣は驚く。
雪穂は学校があるから、とその場を去った。
「この親鸞は父母孝養のため、一返にても念仏候はず。」
(歎異抄五条)

「笹垣には何も言ってねーよ。
 別にお前のこと売ったって、金にも何にもなんねーしね。
 で、どうすんだよ?」と松浦。
「あのおじさんさ、悪いやつ刺して逃げたんだって。
 毎日毎日、明日が時効だから娘が迎えにくるって、
 もう5年ここにいるんだってさ。
 俺もあんなになるのかな。」と亮司。
「お前さ、うっとうしいんだよ!
 お前人殺しなんだよ。しかも、自首もしないようなヤツなんだよ。 
 いつまでも善人面してないで、認めな!」
「善人面・・・」
「俺は本当はそんなヤツじゃないんだって、自分でそう
 認めたくないだけなんだろ?
 あれは不幸な事故だったって思いたいだけなんだろ?
 もう、自首しろ。もしくは、自殺しろ、な。」

その時、松浦の携帯に友彦から亮司宛に電話が入る。
「死んじゃったんだよ、今。ハナオケイコさん。」

客の夫が暴力団員と知り、怯える友彦は自首すると言いだす。
「垂れ込んでみろ!別の筋から串刺しだぞ、お前!」
松浦が友彦の頬を叩きながら脅す。
そして彼女の携帯仁尾登録された自分の番号を消去し、指紋をふき取る。
「お前の責任だからな!何とかしといてよ。」
松浦はそう言い二人を残し、立ち去った。
「桐原・・・」
「何とかしてやるから帰れ。」
「帰ってどうしたらいいの?」
「なんとかするから帰れ!」
友彦は亮司の言うとおり、その場を逃げるように去った。

刺青の入った遺体を見つめたあと、亮司は目を閉じ考え始めた。
目を閉じて考える雪穂。
「要は、警察じゃなくて、この人のダンナを巻けばいいっていう
 解釈でいいのかな。
 会ってたのが園村って人じゃないってことになればいいんだよね。」
空調リモコンを操作したあと、雪穂が爪を噛みながら考える。
「もう一緒に自首しない?
 こんなこと続けてあと8年持つわけないしさ。
 ちゃんと罪償ってさ、出直すって方法もあるし。」と亮司。
「ねえ、その人と亮君って、血液型一緒?違う?」
「違うけど。」
「だったら、完全に別の人と会ってたってことに出来るよね。」
「え・・・。何・・・死体とやれって?」
「・・・」怖い表情で亮司を見つめる雪穂。
「あのさ、俺のことなんだと思ってんだよ。
 何でそこまでしなきゃいけないんだよ!」
「逃げ切るために決まってるじゃない。」
「ここで辞めなきゃキリがねーだろ!」
「じゃあ、何で私はお母さんを殺したのよ!
 何の為に藤村都子を襲ったのよ!
 ここで辞めたら何の意味もなくなるでしょう!」
「同じ事だって言ってるだろ、バカ女!
 一緒に太陽の下とか言うけど、それが幸せとか言うけど、
 そんなこと続けて逃げ切ったところで、
 そんなものが幸せなわけねーだろ!」
「・・・わかった。一緒にいく。」

夜の街中、電飾で作られた教会の下を歩く二人。
「私ね、同じこと言われたの。笹垣にも、お母さんにも。
 過去を隠して生きる幸せなんてあり得ないって。
 亮君に言われたらもう終りだよ。
 その通りだって、認めるしかない。
 ねえ、私たち、普通のカップルに見えるかな。」
亮司が手を差し伸べると、雪穂が笑い出す。
「笑うところ?」
「だって、昔と全然変わってないんだもん。」
雪穂は楽しそうに笑った後、亮司の手を取った。
「亮君、私さ、最後にやりたいことがあるんだけど。」

雪穂は亮司をチャペルに連れていった。
壁や床のあちこちに落書きがしてある。
雪穂は床にチョークで十字架にかけられたキリスト像を描いていた。
「結婚したいとか言うと思った?
 私のいた施設って、こっち系だったからさ。
 毎日お祈りしてたんだよ。
 でも、この人に媚売ったって、全然幸せになんかなれなかった。
 この人(マリア像)の目の前で、施設のおっさんに
 悪戯されそうになっただけ。
 私は結構な嘘つきだけどさ、この人も大概だ。
 神の前には、みな平等とか、
 信じる者は救われるとか、
 求めよさらば得られんとか、
 嘘ばっか。
 嘘ばっかついてんじゃないわよ!!」
雪穂はそう叫び、十字架を倒し暴れ始める。
慌てて雪穂を抑える亮司。
「頼んだ?私が。
 生まれたいって、いつ頼んだのよ!
 生かしてくれって頼んだ!?
 何であの時終りにしてくれなかったのよ!」
泣きながら教会のものを次々と壊していく雪穂。

「死にそこなった7年。
 雪穂はその手で、本当は誰よりも悔い改め、
 祈り続けたんじゃないだろうか。
 だけど、誰も救ってなどくれなかった。
 誰も守ってくれないのだと知った。
 その日から、雪穂はたった一人で築きあげてきたんじゃないだろうか。
 神経を張り詰めて、嘘をめぐらせ、誰にも心を許さず。
 唐沢雪穂という人生を。
 俺、一体、好きな女に何させてるんだろう。」

雪穂は祭壇に飾られた十字架をステンドグラスに投げつけた。

「すっきりした。
 ごめんね。付き合わせちゃって。」
「俺さ・・・
 強くなるよ。
 こんなの、二度と見たくないからさ。
 ごめんな。今まで、一人でがんばらせて。
 俺、がんばるから。
 雪穂がもう二度と、こんなことしなくていいように、
 もう二度と、手を汚さなくても済むように、
 俺がんばるから。」雪穂の手を取り亮司がそう言う。
「後悔するよ。
 取り消すなら、今だよ。」雪穂が涙をこぼす。
「誓う。」
「何に?」
「唐沢雪穂に。」
二人は見つめあい、微笑み会った。

神父と共に警官がやって来た。
二人は手を取り合ったまま逃走する。

「その日、俺は最後の良心を捨てたんだ。
 死んだ女の中に。
 全てをゼロに。」

遺体発見に、警察の現場検証が行われ、
行為中の事故死、事件性はないだろうと刑事が夫に告げる。
「刑事さん。誰といたかは調べてもらえないんですか?」
女性の夫が言う。

藤村家の前で粘る笹垣。
警察に藤村から笹垣への苦情が入った。
上司は笹垣を叱るが、
「まだ事件は終わってない!
 桐原亮司が唐沢雪穂とつるんで第一発見者の青年を容疑者に仕立ててる。
 こんなアホな偶然あり得ない!
 桐原亮司は、今松浦っていう定員のとこに転がり込んでいる。
 桐原の母親は、事件現場に、殺人現場に店を出している。
 二人は同じ本を読んでいた。
 全部偶然なのか!?」
上司は笹垣に暫く休むよう言った。

「どうよ。自分が死ぬ船を見送る気分は?」
船を見送りながら松浦が亮司に言う。
「生まれる前ってこんな感じだったのかな。
 まだ名前もなくて、何者でもなくて、
 不安と期待が半分ずつで。」
「な、産んだ人には会っておけよ。
 あれで結構さ、お前のこと心配してんのよー。」
「知ってるよ。」

雪穂の部屋に遊びに来た江利子は、壁に掛けられたモチーフ(?)に
「これ雪穂が作ったの?」と尋ねる。
「そう。面白いでしょ?」
机には、作りかけの刺繍。
「R&Yって?」
「お母さんの。礼子だから。」

「卒業式の次の日の夕方ぐらいに、上げたいものがあるから。」
亮司が公衆電話でそう告げる。

R&Yと刺繍の付いたペンケース。

1999年3月。
卒業証書授与式。

卒業証書を手に校舎から出てきた弥生子を、笹垣が見張っていた。
弥生子は学校を振り返り、そして一人で家路に着いた。

一人でぼんやりしていると、亮司がやって来た。
「そうだ。これ。」食事の後、亮司に卒業証書を渡す。
「カッコ悪かったわよ。親だけなんて。」
「ねえ、もう一人子供でも作ったら。」
「どうしたの、あんた。」弥生子が笑う。
「こんなバカ息子一人じゃ浮かばれないかなーと思って。
 ・・・風呂、入ってこようかな。」
息子の様子に、何かを感じる弥生子は、亮司のポケットを探る。
ポケットの中には死亡届。
『保存が困難なため・・・水葬にしました』と書かれている。
「何で・・・。」
弥生子は帆船の切り絵を見つめ・・・。

家をそっと出ていこうとする亮司を、母親が布団から呼び止める。
息子に背を向けたまま、弥生子が語りかける。
「あんたさ、昔・・・海賊になるって言ったこと、覚えてる?
 お父さんがさ、頼むから海賊は辞めてくれって。
 せめて、船乗りになってくれって。
 そういうことでいいんだよね。
 だから、あんたが船に乗って死んだんだって・・・。
 そういう話でいいんだよね。」
亮司は泣いて震える母の背中を見つめながら答える。
「うん・・・。ありがとう、母さん。」

「俺ね、ここ出ることにしたんだ。
 いつも、心配してもらってから、それ。」
亮司は図書館の谷口に卒業証書を渡した。
「そっか・・・。」
「谷口さん。俺ね、レッドバトラーになるよ。」
「え?風と共に去りぬの!?」
「じゃ、元気で。」
静かな笑顔を見せ、谷口に背を向ける亮司。
「卒業、おめでとう!」谷口がバンザイをして見送った。

その直後、雪穂が図書館にやって来た。
『風と共に去りぬ』の中から自分宛の手紙を見つける。
封筒の中には死亡届も一緒に入っていた。

笹垣が弥生子の店にきた。
「何で急に飾った?」帆船の切り絵を目ざとく見つけ、笹垣が言う。
「死んだのよ。船に乗ってて、死んだって書類が送られてきた。」
弥生子が封筒を差し出す。
笹垣はその書類に、「そんなアホな・・・」と呟く。
「もう二度と会えないの・・・。」と弥生子。

『雪穂へ。
 俺ね、夢が見つかったよ。
 笑われるかもしれないけど、
 俺、レッドバトラーみたいに生きてみようと思う。
 知恵を使って、
 世間を出し抜いて、
 金を儲けて、
 その金で、あなたを思い切り甘やかしたい。
 例えば、レッドがスカーレットにしたように、
 逃げ延びるための馬車をあげたい。
 悪趣味なほど大きな宝石をあげたい。
 そして、いつかは安らかな夜と、心浮き立つ朝をあげたい。
 不公平なあの人が、あなたにくれなかったもの、
 何もかもあげたい。
 それが俺の夢。
 実は、この話にはおまけがあってさ。
 俺、小さい頃海賊になりたかったんだよ。
 バトラー船長は海賊みたいなものだから、
 幼い頃の夢を追えるなんて、なかなか素敵な人生だと思わない?
 夢をかなえる為に、死ぬだなんて。』

ホームで電車を待つ亮司。
亮司の元へと走る雪穂。

ホームに到着した電車に亮司が乗り込む。
その手を引き電車から降ろす雪穂。
そして雪穂は亮司にキスをした。

『とても、とても幸せなことだと思わない?』

「ありがとう、亮。最高の卒業祝いだよ。」
雪穂はそう言い、亮司を抱きしめる。
「でも・・・いるから。
 いるじゃない、ここに。
 亮がいることを。
 私が、ずっとずっと知ってるから。」雪穂が泣きながらそう告げる。
「良かった・・・。」亮の瞳からも涙がこぼれ落ちた。

「俺たちは、18歳だった。」

雪穂が持っていた紙袋からR&Yペンケースが顔を覗かせていた。

喫茶店。
西口奈美江のテーブルに置き、誰かを待つ亮司。
友彦が店にやって来た。
白夜行 第四話
『罪と罰』

1999年春
庭の花に水をやりながら、亮司(山田孝之)との別れを思い起こす
雪穂(綾瀬はるか)。

「何かあったらそこに連絡して。」亮司がメモを渡す。
「何かないとダメなの?」
「他人でいた方がいいことに、代わりはないでしょう?」
「そうだね・・・。」
「学校始まる前に郵便届くから。」
そう言い亮司は自分の前から立ち去った。

そのとき、郵便物が届く。

桐原家の墓の前に立つ笹垣潤三(武田鉄矢)。
墓石に刻まれた亮司の名前を険しい表情で見つめていた。
「亮司・・・わしゃ騙されんぞ・・・」

亮司の待つ喫茶店に友彦(小出恵介)がやって来る。
「何緊張してるんだよ。」亮司が友彦に笑いながら語りかける。
「俺が何をしたか知ってるんだろ?
 警察も花岡ヨウコのダンナも、お前の血液型聞いたら興味失くさなかった?」
「そう!それが不思議だったんだよ。」と友彦。
「お前B型だったよな?
 花岡ヨウコの体内には、AB型の男性の痕跡が残されていたんだよ。」
「AB!?あり得ねーよ。・・・!!」
「あり得ねーよな。たった一つの可能性を除いては。」
「お前まさか・・・え・・・死体!?」
亮司が小さく微笑む。
「俺さ・・・一生お前の為なら何でもするよ。」
「ま、当然だな。」

タバコをふかしながら微笑む亮司は、どこか渡部さんが演じる松浦に似て、
とても不気味なものでした。

何でもする、と言った友彦を、西口奈美江(奥貫薫)の勤める銀行に連れて行く亮司。
亮司に言われたとおり奈美江を呼び出し、買春目的で集まった部屋に落とした
名刺を見せ微笑む友彦。

歩道のベンチに友彦と座る奈美江は、携帯電話で亮司から、
客のデータを横流しするよう脅迫される。
「でも・・・それって犯罪よね。」
「落ちてるもの拾うのと置き引きとどこが違うと思う?
 金の入ったカバンぼんやり置いてくヤツがバカなんじゃないの?
 隙を見せたヤツが負けなんだって、そう思ったことないの?」
奈美江の表情が変わる。

その後、亮司は友彦に彼名義で賃貸マンションを借りるよう命令する。
学生だし親に保証人になってもらわないと、とごねる友彦に、
「お前のせいで死んじゃった花岡さんのダンナに言ったら・・・」
この言葉に友彦は逆らうことが出来ない。

雪穂が受け取った郵便物、それは大都銀行『山本光代』名義の通帳、
そして一枚のメモ。

『これはとある女性から買い取ったものです。
 俺の稼いだ金はここに振り込みます。
 振り込まれる限り、俺は元気に
 やっているということです。
 余計な心配はせず
 楽しい大学生活を』

友彦に借りさせたビルに引っ越す亮司。
そのビルを選んだのは、雪穂の通う清華女子学園短期大学の通り道に
あったからだ。
その窓から、亮司は雪穂を見守っていた。

「1999年3月5日、この世からいなくなったことになった俺は、
 必要な場合い、園村友彦の名前を借りることにした。
 こうしておけば、何か起こったときに残るのは、
 園村の痕跡ばかりだろう。
 雪穂は何事もなかったように、清華女子短期大学に入学し・・・
 なぜか今時、社交ダンスを始めた。」

ソシアルダンス部の勧誘をする女性の腕時計、胸元のネックレスを
見つめたあと、雪穂はブースに入っていく。
この女性は部長のようです。

そんな雪穂を見つめる『永明大学フィギュア研究会』の看板を持つ
ウルトラマン。
「入りたいんですけど。」女学生が声をかける。
「3分、経ちましたので・・・」
そう言い背を向けるウルトラマン。

「何はともあれ・・・
 雪穂の毎日が平和なら、それで良かったんだ。」

ウルトラマンは雪穂の方を何度か振り返りながら、静かにその場を立ち去った。

亮司はこんなことまでして雪穂の傍にいたんですね。
ウルトラマンの背中が寂しく見えました。

笹垣は亮司の死を全く信じておらず、生い立ち書きを綴りながら
「もうワシしかおらんやんけ・・・
 あいつらの横っ面引っ叩いてやれんのは・・・」と呟く。
「父親を失くした、二人ですね。」
部下に言われ睨むように見る笹垣。
「いずれの行も及びがたき身なれば
 地獄は一定棲ぞかし・・・」(『歎異抄』)

亮司は今度は奈美江、友彦と共謀し、偽者のカードで銀行からデータを
盗み出そうと考えていた。
大量の真っ白なカードを不思議がる松浦。
「松浦さん見習ってるんだけど。」
そう言い彼が愛用するReyBanのサングラスを差す。
「俺もパチモン作ろうと思ってさ。」

「そして、月日は穏やかに流れていった。
 お互いの電話を鳴らす必要もないほどに・・・。」

=1999年秋=

友達に囲まれ通学する雪穂の幸せそうな姿を見つめる亮司。

「なあ、雪穂。
 笑われるかもしれないけど、俺信じてたんだ。
 俺たちは永遠なんだって・・・。」

ソシアルダンス部の壁に書かれた沢山の落書きの中、
下のほうに小さく書かれた文字を見つめて微笑む雪穂。

『いざというときに
 ダンスのひとつでもできるヤツが
 生き残っていく K.S』

「それが黒い絆でも、黒いからこそ切れることはないと
 思っていた。」

「あんまり殺風景だから・・・」
奈美江が亮司の部屋に観葉植物を飾る。

「だけど・・・ある日突然・・・
 その絆は、脆さと醜さをさらけ出しはじめたんだ。
 本物の太陽の前に・・・」

『風と共に去りぬ』を読む雪穂は、英語版『風と共に去りぬ』を読む人の
姿に気付き・・・。
クラブのOBで篠塚製薬の御曹司・篠塚一成(柏原崇)だった。

雪穂の愛読書を原文で読む篠塚。
その容姿。家柄。
彼が、本物の太陽なのですね・・・。
その頃亮司は無精ひげを生やし、暗い部屋の中、『風と共に去りぬ』を
読んでいました・・・。

防犯カメラを逃れながら、女装した友彦は真っ白なキャッシュカード使い
金を引き出すことに成功する。
「じゃ、次行きますか。」車で待っていた亮司が言う。
「え?打ち上げじゃないの?」
「こんなの客に騒がれ始めたら終りだろ。
 短期決戦だよ。」

ソシアルダンス部の部長に宣伝ポスターを作って見せる
江利子(大塚ちひろ)。
「うちの部って別にマネージャー必要ないんだけど。
 あんたも踊ったら?」部長が言う。
「私車でも酔うんですよ。
 あんなに回ったら絶対死にます!」と江利子。
「そんな引っ込み思案じゃいつまでたっても彼氏なんか出来ないよ。」

そこへ榎本がやって来る。
「一成!」
「おう、カナエ。」
「篠塚さん!」部員たちが駆け寄る。
江利子は自分をマネージャーと自己紹介。
部員の高宮と踊っていた雪穂は、その人から彼の名前を教えられ、
壁の落書きが篠塚のものだと気付く。
雪穂に気付き会釈する篠塚。
カナエが怒ったように篠塚を連れ出す。

篠塚は永明大学学長の孫娘・倉橋カナエといずれは結婚するのでは、と
部員達が飲み会の席で噂する。
「部長ってそうなんですか!?ヤンキーなのかと思ってた。」と江利子。
「本当のお嬢さんだから、そんな振りしなくていいのよ。」と雪穂。
「唐沢って、どんな男がタイプなんだ?」高宮が聞く。
「レッドバトラー・・・。」
「それってどんな男なの?ジャンル的に言うと。」
「そこのTSUTAYAにありますよ。」
雪穂は微笑みそう答えた。

「ほんとは二人出来てるんだろ!?
 だって奈美江さ、初めて会った時とは別人みたいに明るくなったもん。」
泥酔した友彦が亮司・奈美江に言う。
「お前奈美江さんに惚れてるんだろ?」
「違う!
 俺はさ、俺は結局、何も知らない・・・。
 だってお前、全然、自分のこと何もしゃべってくれないじゃん!
 そういうのが、俺、寂しい。」
そう言いトイレに駆け込む友彦。

「自分のやってること、犯罪ってわかってるのかな。」
「だからよ。
 人に言えないことばかりじゃない。
 だから、亮を信頼したいし、されたいの。」
「大学のサークルじゃないんだけどな。」
「亮は、彼女いないの?」静かな微笑みを浮かべ奈美江が聞く。
「・・・いないよ、そんなの。」
「ふーん。じゃあ、好きなタイプは?」
「スカーレット・オハラ。」
「亮ってMだったんだ。」

「ふと、雪穂の声が聞きたくなった。
 公衆電話からなら、足がつく心配はさほどないけど、
 それでも履歴は残る。
 笹垣の目は節穴じゃないだろうし・・・」

雪穂の卒業アルバムを見つめる笹垣。

『篠塚制約 経常利益68%増』と書かれた新聞記事を読む雪穂。

部屋の窓から公衆電話を見つめる亮司。

「横に誰かがいれば、雪穂を支えでも
 又嘘をつかなくてはいけない。
 俺は出来るだけ、雪穂に楽をさせてあげたかった。」

「えろう熱心に読んでるんやな。」
突然礼子(八千草薫)に声をかけられ驚く雪穂。
篠塚がダンス部のOBだと説明する。
「へぇー。カッコいいの?」
「全然!」そう言い雪穂は逃げるように席を立つ。
「へぇー。」礼子が微笑んだ。

「こんな些細な寂しさに、負けてはいけないと思っていたんだ。」
亮司は銀のハサミを握り締め・・・

亮司が送ってきた通帳を記帳する雪穂。
10月9日 5万円
10月19日3万円
10月29日5万円
11月2日3万円
11月7日3万円
11月15日100万円
11月16日100万円
合計3,210,003円にもなっていた。

「何やっているんだろう・・・」
不安を覚える雪穂・・・。

そんな時、笹垣が礼子を訪ねてきた…。
「私もあれから、あの子がどないになったのか気になっていまして。
 あの・・・こちらさんとは、どんなご縁で?」
「私があの子のいた施設で、子供たちのお花教室をやっていて、それで。
 あの子ね、花の名前をどんどんどんどん覚えて、
 一生懸命、話しかけてきますのや。
 それはもう、わかりますのや。
 私を貰うてくれ、貰うてくれって言うてますのが・・・。
 また偉い逞しい子やな思うて。
 私は、そういう子が好きなんですわ。」
「すみません。
 お嬢さんには私が来たことは言わんといて下さい。
 せっかくの幸せに、水差したくないんですわ。」
「わかりました。」
「年頃やから、ぎょうさんボーイフレンドも出来たりなんかしてんのと
 ちゃいますか?」
「さあ、どうですやろ。」
微笑みあう二人。だが次の瞬間笹垣の顔から笑みがさっと引いていく。

ソーシャルダンス部の壁の落書きを見つめ、爪を噛む雪穂。


そこへ江利子がやってきた。
「OBなのに、部活に顔を出す人ってどう思う?
 カッコいいことしようとして、逆にカッコ悪くなっちゃってる感じしない?」
雪穂の言葉に「なるほどねー!」と江利子が答えた。

松浦に『上納金』と言い札束を渡す亮司。
「うわー。亮ちゃんも立派になったねー。」
「立派って・・・。」

そのとき、インターフォンが鳴る。
松浦に相手を確認するよう念を押す亮司。
「換気扇の点検でーす。」
松浦が少しも疑わずに戸を開ける。
だがそこにいたのは、手下を連れてやって来た榎本(的場浩司)だった。
押しかけて来た。
「西口奈美江、どこだ?」
「あの、そっち向いて吸ってもらえますか?」
榎本の持つタバコからパソコンを庇おうと手を出す亮司。
榎本は亮司の手を掴みタバコを掌に押し付ける。
「そりゃあ悪かったな、気がつかなくて。
 おぅ、我慢強いね、お兄さん。」
手下達が、来ていないようだと榎本に告げる。
「奈美江の居場所わかったらここに連絡して。」
「西口さん嫌がってると思いますけど。」(よく聞き取れず)
「兄さんお利口さんそうだからな。
 どうすりゃ得するかぐらいわかんだろ!
 何ならそのパソコンで計算してみたらどうだ?」
そう言い榎本は部屋を出て行った。

別室に逃げ込んでいた松浦が出てきて言う。
「どうすんだよ。あんなのに睨まれたらさ。ん?」
そこへ奈美江から電話が入る。

テレビニュースが大都銀行昭和支店・真壁幹夫が殺されたと伝える。

ニュースを見ていた友彦が亮司に呼び出される。
駆けつけると、ホテルの部屋に奈美江が匿われていた。
「榎本ってヤクザに貢いでたんだってさ。
 真壁って銀行員が殺されたニュース見た?
 奈美江さんはその榎本ってヤツの口座に不正送金してたんだ。
 それに気付いたのが真壁って上司で、
 真壁はまさか奈美江さんがやっているとは思わず、
 奈美江さんに相談を持ちかけた。
 それが昨日。
 そのことを榎本に報告したあと、真壁は殺された。
 それが今朝。
 明日は間違いなく奈美江さんだろう。」
亮司が説明する。
「え!?だって奈美江さんはヤツラの仲間でしょう!?」と友彦。
「でも・・・生き証人とも言えるわよね。」
「奈美江さん2千万持ってるんだって。」
「いつかこんな日が来るんじゃないかと思って、
 自分用の口座5つ作って・・・」
「不正送金!?」
「榎本にしてみれば金は欲しいし、捕まって吐かれるのは面倒だって
 とこだろう。
 ということなんで、お前2、3日、ここにいてくれ。」
「二人っきり?」
「食い物とか色々買いに行けって言ってんの。
 奈美江さん外に出られないだろ?」
「お前は?」
「警察と榎本たちに追われるとしたら相当だろう。
 当分隠れられるところを探したり、
 偽造パスポート作ったり、忙しい。」
亮司が一人街を歩いていると携帯が鳴る。
「亮?」
雪穂の声に驚く亮司。
「あのさ、お金なんだけどさ、
 何をやっているのか、一応教えてほしいっていうか。」
「大丈夫だよ。雪穂には迷惑かけないから。」
「そういう意味じゃなくて。
 心配なんだよ。」
「うん。ごめん、忙しいから。」
亮司は電話を切り、自分の部屋へと向う。

部屋の鍵を開けると榎本が待っていた。
手下たちに暴行を受ける亮司。
「連絡してって頼んだはずだけどなー。
 まあ兄さんの根性はわかったよ。
 俺も嫌いじゃないからよ、そういうの。」
亮司を蹴ったあと、榎本は松浦が閉じこもる部屋のドアを叩き、
話を進めておくよう告げ、出て行った。
榎本の叩いたドアに、手の跡が残っていた。


「前の男に・・・すっからかんにされてね。
 知らない間にほとんど貯金おろされて。
 挙句の果てに、そんなところに置いておくのが悪いんだって
 言われたの。
 何も言い返せなかった。
 松浦さんに会ったのはその頃で・・・
 そんな自分を変えたくてあそこに行ったんだけど、
 いざとなると腰が引けちゃって。」
友彦に身の上を語る奈美江。
「榎本とは?」
「榎本に会ったのは、亮に誘われてから、1ヶ月ぐらい経ったあと。
 私がチンピラに絡まれているときに助けてくれたの。
 今思えば、最初から私に横領させるための芝居だったんだと思うけど。
 あの頃の榎本は本当に優しかった。
 嫌になっちゃうな、私。本当、男の騙されてばっかり・・・。」
そう言い涙ぐむ奈美江。
「俺たちは裏切らないよ。 
 男じゃなくて、仲間だから!」
奈美江は友彦の言葉に微笑み頷いた。

西口奈美江の荒らされた部屋を調べる笹垣たち。
笹垣は部屋に置かれた『風と共に去りぬ』文庫本を見つめる。
「それ99%関係ないですよ。」部下が言う。
「せやな。」
そう言い立ち上がった笹垣は、電話の横のメモに気がつく。
そこには似顔絵が書いてあった。それは亮司の似顔絵だった・・・。

「お前さ、あんなのに逃げまわられたらこっちがやられるに決まってんじゃん。」
松浦が亮司に言う。
「すっとぼけて逃がす方法だってあった!」
「お前奈美江のことそこまで信じてんの?
 警察に捕まってみろよ。俺らのことだってすぐしゃべるぜ。
 俺さ、感謝されてもいいぐらいよ。
 奈美江の始末は無効がやってくれるっていうしさ。
 パチモンのカードで金作ってくれば1千万って話、まとめたんだからね!」
亮司が鋭い視線で松浦を睨む。
「お前がさ、捕まったり、殺されたりしたらさ、
 困る人いるんじゃないのー!?」

部活に遅刻した雪穂を怒鳴りつけるカナエ。
高宮が気にするな、と雪穂に言う。
「篠塚さんに別れ話持ちかけられたらしい。」
雪穂の表情が変わる。
「あれ!?唐沢、もしかしてチャンスとか思ってる?」
「私そこまで怖いもの知らず、身の程知らずでもないですよ。」
そういいつつも、壁の落書きを見つめてしまう雪穂・・・。

学校の帰り、雪穂は大江図書館の前にいた。
「やっぱりまずいよな・・・来ちゃ。」
「あのー、違ってたらごめんなんだけど・・・
 昔も来てなかった?」谷口真文(余 貴美子)が声をかけてきた。
「・・・いえ。」
「ホントに?」
「本当ですよ。」
「そっか。ごめんね。
 いやさー、仲良かった子が、高校卒業したら来なくなっちゃってね、」
「そうなんですか。」
「あなたね、もしかしたら、その子の知り合いなんじゃないかって子に
 似てて、何か知ってたらなーって。」
「心配なんですか?その人のこと。」
「なんかねー。ここだけが居場所みたいな子だったから。」
スタッフに呼ばれ中へ戻っていく谷口。
「良かったら使ってね、うち。」
雪穂は谷口に笑顔で頷いて答えた。

偽造カードを作る亮司。

「あとは、榎本に言われた場所に奈美江さんを逃がすふりをして、 
 園村に女装させて、金を下ろさせればいい。
 それだけのことだ。」

奈美江が持ってきてくれた観葉植物を見つめる亮司・・・。

「死ぬのか・・・。奈美江さん・・・。」
思わず泣きそうになる亮司。

「会ってどうにかなるものではなかったけど、
 無性に雪穂の顔が見たくなった。
 そうすれば、吹っ切れる気がしていたんだ。」

あの橋の上から川を見つめる雪穂。
「何もかも捨てさせたんだよな、私・・・。」
幼い日の亮司の笑顔。
壁の落書き。
「消そう!」

雪穂が部室の落書きを消そうとしていると、カナエの大声が聞こえてきた。
「何!?あんたみたいに失礼な男、見たことない!」
「じゃあ、それでいいじゃん。 
 こんなに失礼な男だしさ。」
篠塚がそう答えると、カナエは無言でその場を立ち去った。

雪穂と目が合う篠塚。
「見ちゃった?」そう言い篠塚が微笑んだ。

篠塚の車の助手席に座る雪穂。
「あの、部長に何言ったんですか?」
「あんまりしつこいからさ、お前のどこが俺にふさわしいか教えてって。 
 あ、ひいた?」
「いえ。中途半端に優しくするよりは、相手にとって親切だと思います。」
「いい友達になれそうだね、俺たち。」篠塚が笑う。
「・・・あの、
 『いざというときにダンスのひとつでもできるヤツが生き残っていく』って
 あれ、いい言葉ですよね。」
「よく見つけたな、あんなの。」
「風と共に去りぬ、好きなんですか?」
「うん。」
「実は私も好きで。原書は読んだことはないんですけど。」
「へー。じゃ、持ってっていいよ。」
「・・・あの、私のこと嫌いですか?」
「え?」
「さっきから、全然話を広げようっていう気がないですよね。」

「さっきから困っててさ、こんな可愛い子隣に乗っけて、
 その子がどうも気がありそうなこと言ってて。
 たまたま俺と似ているだけなのか、
 それとも、気を引こうとしてくれているのか。」
篠塚の言葉にしばし無言で考える雪穂。

「わかった!」
「ん?」
「似てるんだって言ったら、自分に似ている人間には興味がないんだって言う。
 気を引こうってしてるって言ったら、今はそういう気分じゃないんだって言う。
 すごい自信ですね!」
雪穂の言葉に篠塚が笑顔を見せた。

電話ボックスの中、亮司は電話をかけながら、車から降りてきた雪穂の姿に
気付いた。亮司は物陰から様子を伺う。

「どうもありがとうございました。」
「いいえ。
 あ、唐沢。これ、風と共に去りぬ。あげるよ、それ。」
「ちゃんと返しますよ!」
「じゃあ、また会えるね。
 あ、もちろん、返してくれなくても全然構わないよ、俺は。」
「バカにするのもいい加減にしてください。
 私にだって、好きな人くらいいます。」
「そう?」
「おやすみなさい。」
篠塚に背を向けて歩き出す雪穂。篠塚が車を出す。二人を見つめる亮司。
車がエンジンをふかしながらユーターンしていく姿を、雪穂は振り返り
見つめる。物陰に再び隠れた亮司は、雪穂の切ない表情を見てしまった。

「信じられなかった・・・。
 雪穂は・・・恋をしていた。
 俺がドロ水の中を這い回っている間に・・・」

「バカじゃねえの・・・俺・・・。
 何信じてんだよ・・・。」
掌に押し付けられたタバコの火傷跡を見つめながら涙ぐむ亮司は、
悔しさ、哀しさに震えながら掌をぎゅっと握り締めた。

「傷つけてやろうと思った。
 守りたいと思った時と、同じ強さで・・・。」

雪穂の自宅の電話が鳴る。
「はい、唐沢で、」
「俺。ちょっと、頼みたいことがあってさ。」
「何?」
自宅から電話をかける亮司がそっと目を閉じる・・・。

「こんなことやっててさ、怖くなんないのかな、あいつ。」友彦が言う。
「友彦くんだって楽しそうだよ。」と奈美江。
「世間を出し抜くっていうの?
 そういう快感がないわけでもないし。
 まあ暗い顔しててもしょうがないしね。
 だけどさ、この先どうなるんだろうって思ったら、
 たまに眠れなくなることだってあるよ。」
「亮だって怖いと思うよ。
 でもきっと、何かあるんだよ。」
「何かって?」
「信じられる、希望みたいなものかな。」

2組の同じサングラス、靴、そして衣装を準備した亮司・・・。

駅まで奈美江を見送る亮司と友彦。
名古屋のウィークリーマンションの地図を渡す。
「とりあえず1週間はそこにいられるようにしておいたし、
 パスポートは2、3日したら送るから。
 金をおろすとき、出来るだけ顔見られないようにした方がいいからさ。」
亮司はそう言い用意した変装道具を渡す。
「ありがとう。ちゃんと使う。」
「本当にこれから大丈夫?」友彦が聞く。
「がんばる、私。
 せっかく二人に助けてもらった命だもん。本当にありがとう。」
奈美江が二人を抱きしめ涙をこぼした。
亮司の目頭が熱くなる。

奈美江の後姿を見送りながら友彦が言う。
「亮は私にとって、この世で一番信用出来る人だって、
 亮の一言で少しだけ自由な自分になれた気がするって、
 奈美江さん、言ってた。
 何言ったの?」
「別に・・・。
 隙を見せた方が負けなんだって言っただけだよ。」
亮司の言葉に不安を覚える友彦・・・。

亮司は街中、雪穂とすれ違いざまに持っていた手提げ袋を彼女に渡した。

=名古屋=
亮司に手渡された衣装に身を包み、雪穂は奈美江がマンションに入るのを
見届けた後銀行で偽造カードを使う。

部屋で亮司に渡された変装用衣装に着替えた奈美江。
そのときインターフォンが鳴る。
「はい。」
「換気扇の点検でーす。」
奈美江がドアを開け・・・。

「じゃあ、一週間後にグレースホテルで。」
亮司はそう言い電話を切る。
「きつ・・・」亮司はあの橋から空を見上げてそう呟いた。

テレビのニュースが奈美江の死を告げる。
「発見された時西口さんは、頭部と腹部をナイフのようなもので刺された
 状態で既に死亡していました。
 西口さんは、勤務していた大都銀行昭和支店で、不正送金をしていた
 疑いが持たれており、警察は、横領及び殺人の疑いで、会社役員、
 榎本ヒロシ容疑者を取り調べる方針だということです。
 尚、西口さんは、これ以外にも5つの架空口座を使っていて、
 口座から現金を引き出す姿を、防犯カメラが捕らえていました。
 本人が引き出したものと見られていますが、引き出された現金2千万円の
 行方は未だにわかっていません。」

そのニュースの映像に首をかしげる笹垣・・・。

その頃雪穂は亮司と一緒にグレースホテルにいた。
亮司は金を数えている。
「もうちょっと説明してよ。
 結構私、危なくない?これ。
 その榎本っていう人は信用出来るの?
 私たちのこと、警察にしゃべったり・・・」
「西口奈美江がいないと立件は無理だろう。」
「でも・・・」
「信じるから裏切られるんだよ。
 いつ誰が裏切るかなんて想像しても意味ないんだよ。」
「なんか・・・感じ変わったね、亮。」
「そりゃ、これだけ会わなきゃ、いろいろ変わるよ。俺もあなたも。」
「どうすんの?そのお金。」
「ペーパーバックは読み終わった?」
「・・・」
そのとき、雪穂の携帯が鳴る。
「携帯買ったんだ。」
「その方が連絡も取りやすいと思って。」
そう言い別室へ向う雪穂。亮司が追い、雪穂をベッドに押し倒す。
「何すんのよ!」
「許さないからな!
 自分だけ都合よく一抜けなんて・・・。
 なんつー顔してんだよ。
 なんで何も言わないんだよ!!」
「亮には・・・嘘つきたくないから・・・
 今は何も言いたくない。」
「俺しかいないって言ったじゃない。
 死んでたって俺がいるっていうことを忘れないって言ったじゃない!
 人にこんだけさせといてそんな話ありえねーだろ!?」
雪穂から離れる亮司。
「そんなこと・・・私が一番良くわかってるよ!
 だからってどうしろって言うのよ。
 理屈じゃないんだもん。仕方ないじゃない!
 何とかしてよ・・・。」
雪穂は泣きながらそう言い、亮司の胸に飛び込む。
「なんとかしてよ、亮・・・。」

「雨が降ってたことは覚えている。
 固められた土の奥深く、埋められた真実を溶かしだすように。」

質屋殺しの容疑者、母子無理心中の新聞記事を見つめる谷口。

奈美江の部屋にあった似顔絵写真を資料のノートに貼り付ける笹垣。

「明日は晴れるようにと、
 太陽を覆う雲を溶かすように
 雨は降っていた」

ホテルのベッドで結ばれる雪穂と亮司。
「なんかすごく・・・あったかい・・・。
 人の体って、本当はすごく温かいものなんだね。」
雪穂は亮司の胸で幸せそうに微笑んだ。

「なあ、雪穂・・・
 あの日のあなたは、とてもとても綺麗だったんだ・・・。
 だけど・・・
 あの日も雨が降っていたんだ・・・
 雨に洗われ溶け出した、俺たちの罪と罰・・・」
白夜行 第五話
『決別する二人』

「11歳の時、俺たちは出会った。
 俺は雪穂を守るため、父親を殺した。
 その俺を庇うため、雪穂は母親を殺した。
 俺たちは、その罪を隠すため、他人でいることを約束し、
 別れた。
 だけど、7年後、俺たちは再会し、
 いつの日かもう一度、二人で太陽の下を歩くことを約束した。
 それは、罪に罪を重ねて、生きていく方法しかなかったんだ。
 崩れ始める、二人の絆・・・。」

1999年冬
亮司(山田孝之)は雪穂(綾瀬はるか)とベッドを共にしながら、
窓の外の雨を見つめていた。父親が雪穂にしたことを思い出していたのだ。
「昔のこと、思い出したんだ。」雪穂がそれに気付く。
「うん・・・。」
「そっか。」
雪穂はそう言うと浴室にこもり、彼女もまた昔の辛い出来事を思い起こす。

ベッドに一人になった亮司は、テーブルに積み上げられた大金を見つめながら
考える。
「雪穂がもう二度と、手を汚さなくてもすむように」と約束したこと。
そして雪穂と篠塚(柏原崇)の2ショット。
嫉妬する自分。

「何やってんだろ・・・俺・・・。」

「あいつといる方が幸せになれるのは、誰の目にも明らかだ。」

篠塚と相合傘で歩く江利子(大塚ちひろ)。
「雪穂ならカレシはいませんよ。」
「ん?」
「へっ?これって、雪穂に取り次げって話ですよね。」
「唐沢好きな人がいるって言ってたよ。」穏やかに微笑む篠塚。
「そうなんですか?」
「あれ?友達じゃなかったっけー。」
「私はそのつもりです!」
江利子は雨に濡れた妊婦に気付く。

亮司は金をカバンに詰めたあと、雪穂が持っていた篠塚の本
『GONE WITH THE WIND』を見つめる。
シャワーを浴びた雪穂は部屋に戻り、亮司の見ているものに気付く。
「捨てちゃって、それ。 
 会わなきゃ忘れられると思うし、私、どうかしてた。」と雪穂。
「いいよ忘れなくて。」
「え・・・」
「ごめんな、こんなことさせて。」
「ちょっと待って。」
「雪穂が幸せじゃないと、俺が死んだ意味ないんだよ。
 まあ・・・がんばって。」
そう言い亮司は雪穂を部屋に残し、ホテルの部屋を出ていった。

名古屋の警察に連絡した笹垣潤三(武田鉄矢)は、キャッシュカードを使い
金を引き出したのは、カードについていた指紋、着ていた服装などから
西口奈美江(奥貫薫)本人で間違いないと告げられる。

「雪穂の為というのなら、身を引く以外に道はなかった。」

「榎本さんから、お話伺いまして。」
亮司は自分の部屋の前に立つ男にそう声をかけられる。

「俺はもう、完全に日の当たらない世界にいたんだから・・・。」

笹垣はお経の本に挟まれた一枚の古い写真を取り出し、優しい目で見つめる。
小学生ぐらいの少女の写真。裏には1984年12月15日と書かれている。
「命日か・・・。」

雪穂が図書館で『GONE WITH THE WIND』を読んでいると、
「よく読めるねー。そんなの!」
谷口真文(余 貴美子)が感心しながら覗き込んできた。
雪穂は谷口の左手薬指に指輪があることに気付き聞いてみる。
「あの、結婚してから、他に好きな人が出来たことってあります?
 友達がどうも、彼の他に好きな人が出来たようで・・・。」
「友達・・・。」
「だけど、彼のことを嫌いになったわけじゃないし。」
「私もさ、隣んちの息子にドキドキ!」
「え!?」
「当たり前じゃない?10年も20年も同じ気持ちでいられるほうが珍しいよ。
 ただね・・・。」
谷口はスタッフに呼ばれ戻っていく。
「ただ、なに?」雪穂が呟いた。


亮司は開発者が突然亡くなってしまったゲームの設計図の続きを作らないかと
榎本(的場浩司)から依頼を受ける。
あの榎本とつながっていたことに驚く園村友彦(小出恵介)。
「お前なんで榎本とつるんでんだよ!?」
「詳しく説明しようか。」
「・・・いや、想像しておく。」
「ふーん。賢くなったな、お前。」
彼らの過ごす部屋には、奈美江が持ってきた観葉植物が光を浴びていた。

「なあ、雪穂・・・
 知ってる?
 地球からは月の裏側は見えないんだ。
 輝くその川の裏側がどうなっているのか、
 俺たちは見ることは出来ない。
 ちょっと違うか。
 写真でなら見れるんだから。
 俺は、素人しなかっただけなのかもしれないな。
 月の裏側、隠されていたあなたの姿を。」

雪穂は篠塚に会えることを期待して、彼が本を読んでいた喫茶店で
待っていた。
彼の会社の電話番号を調べようとしたところへ、篠塚がやってくる。
「この間、悪かったな。
 ついつい、勝負しているような気になっちゃってさ。」
「私もです。
 篠塚さんは、今日はお仕事の途中ですか?」
「まぁ・・・そうなんだけど。」
そこへ江利子がやって来た。篠塚と待ち合わせしていたのだ。
「え・・・もしかして。」
「唐沢に、言ってなかったの?」篠塚が江利子に聞く。
「言おうと思ったんだって。でも、部長のことがあるし、
 雪穂もやり辛いだろうな・・・って。」
「ありがと!気遣ってもらっちゃって。」笑顔を見せる雪穂。
「でも、雪穂だって言わなかったくせに。
 好きな人いるんでしょ?」
「嘘だって。あんまり篠塚さんが失礼なこと言うから。」
「え。嘘なの?」
「私に負けたってことですよ。」雪穂が微笑む。

二人仲良く並んで帰る姿を、雪穂は嫉妬の眼差しで見つめていた・・・。

友彦は松浦 勇(渡部篤郎)に、亮司が無理やり仕事に没頭しているようだと
心配そうに相談する。
「仕事って?相変わらずカードやってんの?」
「いや。ゲーム作ってんですよ。榎本からの仕事みたいで。」
「なんだよそれ!俺通してないってどういうことだよ!」
松浦が友彦に掴みかかる。

家で花を生けていても、押さえられない嫉妬心・・・。
そこへ、 礼子(八千草 薫)が帰ってきた。
施設で花を教えてきた礼子は、そこの子供に手を怪我をさせられていた。
「他に、当たるところなかったんやろ。
 あんたもたまには、私に当たったってかまへんのよ。」
不満などない、と言う雪穂に、
「ほんまかいな。私なんて不満だらけや。
 白髪が増えたな、とか、
 今日は何でこんなに寒いんやろ、とか。
 チョーむかつく。」と礼子。
「どこでそんな言葉覚えてきたのよ。」
「うっせーんだよ、ババァ。ちょームカツク!」
「ご飯温めてくるね。」
礼子はだいどころに立つ雪穂の背中を見つめ・・・。

松浦が亮司の部屋の怒鳴り込んできた。
自分を通さずに仕事をすることに怒りまくる松浦。
「あとで言うつもりだったんだ。」仕事を続けながら亮司が返事する。
「電話一本で済む話だろうが!」
「松浦さんより俺のこと信用しているみたいだよ、榎本。」
「・・・脅しか、それ。
 俺とお前が、イーブンとでも言いたいわけ?
 ふーーーん。あ、そう。
 あとで後悔すんなよ、お前。」
『風と共に去りぬ』を見つめながらそう言い捨て、松浦は出ていった。

「応援するしかないよな・・・。」
親友との2ショット写真を見つめ、雪穂はそう呟いた。

笹垣が礼子を訪ねていく。
「今日は、ちーと、別の話で・・・。」
笹垣はそう言い
「娘さんですか?」
「私昔、ある男を、殺人犯で逮捕したことがありまして。
 その男の子供ですわ。
 昨日が、命日だったものですから。」
「亡くならはったんですか?」
「・・・自殺です。
 親の罪、苦にして。
 それで、雪穂さんのことを思い出したんですわ。」
「なんで又・・・あの子のことを。」
「あの子、よう似とったんですわ。雪穂さんに。
 強い子で、いじめなんかには負けへん。
 せやけどある日突然、自殺してしもうた。
 抱え込んどったん、耐え切れんようになってしまったんですなぁ・・・。
 まあ、私が、殺したようなもんですわ。」
そう言いハンカチで顔を覆う笹垣。
「せやから、雪穂さんには、幸せに、なってほしいんですわ。
 おせっかいは、承知の上なんですが、
 心の傷の為にも・・・」
そう言い笹垣は『メンタルケアカウンセリング』のパンフレットを差し出す。


「それで、催眠療法を薦めたんですか?」
笹垣の部下・古賀(田中幸太朗)が尋ねる。
「まあ、受けへんやろうけどな。
 親切面でどうですかって又話聞きにもいけるし、
 何か出てきたらめっけもんや。」と笹垣。
「ほんとに傷ついてるのかと思いましたよ、その子の事。」
「あいつら、取り逃がしてしもうたら、それこそこの子、犬死にやんけ。」


笹垣は同僚たちのキャッシュカードの偽造の話に
「カードが二枚だったら」と興味を示す。

ソシアルダンス部の練習を終え帰ろうとする雪穂は、部長に部費の管理を
押し付けられる江利子に気付く。
「言っとくけど!遊ばれて捨てられるのが関の山だよ。」
そう言い立ち去る部長。
雪穂はため息をつく江利子から書類を受け取り、
「約束あるんでしょ。私やっておくから、行きなよ。」と微笑んだ。

大都銀行の偽装カード被害を伝えるニュースが新聞に掲載される。
友彦は慌てるが亮司は
「ここまではたどり着かねーよ。」と動じない。
「見つかったらどうすんだよ!」
「逃げるしかねーだろ。お前アホか。」
友彦の不安はいっそう募る。
「お前のさ、信じてるものって何?
 奈美江さんが言ってたんだよ。
 お前には、信じられる希望みたいなものがあって、
 だから強いんじゃないかって。」

「もう一回、太陽の下で、亮君と歩くんだよ。」
窓の外の光を見つめながら、雪穂の言葉を思い起こす亮司。
「なればいいな。すごく・・・。」
友彦は亮司の顔を心配そうに見つめていた。

「いいな・・・江利子・・・。」
ノートを付け終わったあと、雪穂は篠塚が書いた壁の落書きを見つめて
そう呟いた。
その時、雪穂の携帯が鳴る。

篠塚、江利子に呼び出された雪穂。
「悪いな、唐沢。倉橋部長のフォローまで。」
「いえ。篠塚さんの為じゃないですから。江利子の為ですから。」
「ホント仲いいんだな。全然似てないのにさ。」
「二人は似てる!
 すぐ人のことをからかうところとか、人の揚げ足とるところとか。」
江利子がそう言う。
「それ誉めてんの?」雪穂が笑う。
「誉めてるよ、すっごい!
 私なんて全然そういうことできないもん。
 思ったまんましか言えないし。
 全部顔に出ちゃうし。」
「それが江利子のいいとこじゃない。」と雪穂。
「贅沢だよな、江利子は。
 それがどれだけ幸せなことか、わかてないんだよ。
 俺はね、窮屈な子供だったの。 
 回りに気遣って、人の顔色伺って。
 子供っぽいことするなーって、子供なのにさ。
 あ、もしかして、唐沢もそうだった?」
雪穂を見つめる江利子。かつて苛められていた雪穂を思い浮かべ・・・。
「別に私はそんな、」否定する雪穂。
「篠塚さん、空いた!」雪穂の言葉を遮り、グラスを差し出す江利子。
江利子に微笑まれ、雪穂は微笑みを返したものの、スカートをぎゅっと
握り締めた。

多分江利子は、話の流れを変えようとしてくれたのでしょう。
でも雪穂はそれも疎ましかったようで・・・。

帰り道。酔ってベンチで眠る江利子。
「遊びじゃないんですよね、江利子のこと。
 部長がそんなこと言ってたから。」
「雨の日にね、江利子に半分、かさ貸したんだよ。
 そしたらいきなりさ、雨宿りしている妊婦さんに代わられて、
 なんか、ターっと走っていっちゃって。
 それがもう、本当に自然でさ。
 そういう真っ直ぐさって、お金では買えないだろ?
 答えになってない?」
「いいえ。いろいろご馳走様でした。」
雪穂は笑顔でそう言い篠塚に背を向けた。

タクシーに乗った二人に手を振り見送る雪穂。
その表情はだんだんとこわばり・・・。
雪穂は亮司を訪ねていく。
「何?大事な話って。」
「上手くいかなかったんだ。篠塚さん。
 私の友達の、川島江利子っていう子と付き合い始めた。」
「そう・・・。で、どうすればいいの?
 俺はここで愚痴聞けばいいの?
 あんまり冷静でもいられないんだけど。」
「・・・やっちゃってくれないかな。」
「え?」
「その子、藤村美和子と同じ目に遭わせてくれないかな。」
「え・・・その子が襲われてどうなる?
 篠塚が雪穂に転ぶってことじゃないよな。」
「もう篠塚なんてどうでもいい。
 ただ・・・その子を不幸にしてほしいの。」
「冗談だろ。」
「だって、篠塚さんがその子を選んだ理由って、
 ただ幸せに育って、だから性格がいいってだけなんだよ。
 そんな環境で育ってたら、私だってそうなってるよ!
 あんな親の子に生まれたの、私のせいじゃないじゃない!
 ほんと、幸せなんだよ、その子。
 思ったこと思うように言えて、
 しかも、それがすごく幸せなことだと、思ってもいないんだよ!
 気付かないほど幸せなんだよ!
 こんなの、どう考えたって不公平じゃない!
 ねえ、亮だってそう思うことあるでしょう?」
「ねーよ!
 思ったとしても、わざわざ人の幸せ壊してやろうなんて
 思わねーよ。
 本気で思ってるんだったら、病院に行った方がいいよ。」
そう言い亮司はパソコンに向う。

「ねえ、本当にそう思うことない?」
「ねーよ!」
「本当に?」
「しつこな、ねーよ!」
亮司は雪穂の方を怒ったように振り返ると、今にも泣き出しそうなほど
悲しい表情で自分を見つめる雪穂と目が合う。
「そっか。」
小さく微笑みながらそう言うと、雪穂は部屋を出ていった。

礼子は家に戻ってきた雪穂が、ユリの花を掌で握りつぶすところを
見てしまう。

古賀刑事は亮司の母・弥生子(麻生祐未)を訪ねていく。
「笹垣のノートのコピーです。
 あなたから聞いた、亮司君のことが書いてあります。
 あなたの知らない、亮司君の犯罪行為が。」
「え!?」
「全てが事実というわけではないと思います。」
「そんなもの、どうして私に?」
「考えていただきたいんです、親として。
 こんな生き方が、亮司君にとって本当に幸せなことなのか。」
「大体あの子もう、死んでいるんですよ。」
「とにかく、読んで下さい。」

雪穂の叫びを思い起こす亮司。向かいに座る友彦に聞いてみる。
「お前さ、世の中って圧倒的に不公平だって思ったことある?」
「メチャメチャあるよ。
 だってさ、俺、すっげー腹緩いもん。」
「なんだそれ。」思わず亮司が笑う。
「もうさ、あ!!っと思ったら、突然・・・
 間に合わなくて、何度泣きを見たことか!
 中学の頃なんかさ、相当暗かったよ。家でも荒れててさ。
 こんな、ウンコ出やすい身体に生みやがってー!」
「ごめん、笑っちゃいけねーか。」
「いいよ。俺的にも今やネタだし。
 暗く悩んでても仕方ないしな。
 合コンでさ、意外とつかめるんだよ、これ。」友彦が笑う。
「お前俺なんかよりよっぽど強いよ。」
亮司が静かにそう言った。


礼子は笹垣が置いていったパンフレットを雪穂に渡す。
「これ、私がどこか変ってこと?」
「心配ないとは、言えへんかもな。」
礼子はそう言い、雪穂が握りつぶした百合の茎を見つめる。
「あれは、虫がいたから。」雪穂が笑顔で言う。
「しんどいことないの?
 そないに嘘ばっかりつくのは。」
「嘘なんかついてないって。」
「ほな、あんた、ほんまのお母さんのことどないに思ってるの?」
「・・・辛い目にもあったけど、生んでくれて感謝してるよ。」
「用意されたみたいな答えやと思うのは、私の思い込みか?」
「そうだよ。」
「それがあんたの心の傷やわ!
 ほんまは誰のことも信じてへん。
 誰にも、心の内を見せる勇気がないんや!
 それも私の思い込みやろうけどな!」
礼子はそう言い部屋を立ち去る。

「そんなもん見せたって・・・」
そう呟きながら、亮司の言った
『わざわざ人の幸せ壊してやろうなんて思わねーよ。
 本気で思ってるんだったら、病院行ったほうがいいよ。』
という言葉を思い出す雪穂。

その時、電話がかかってきた。公衆電話からだ。
「松浦と申しますが・・・」

亮司が雪穂の留守電にメッセージを残す。
「あの・・・俺です。
 雪穂が言ってたように、子供が親を選べないのは、
 不公平な話だと思う。
 俺だってあの家に生まれたかったわけじゃないし、
 雪穂の気持ち、他のヤツラより理解出来る。
 でも、でも、理解は出来ても、やっぱり賛成はできない。
 今日ね、自分のどうでも出来ない悩みを笑いのネタにしているヤツの
 話を聞いたよ。
 俺、強いなって思った。
 笑い飛ばせとは言わないけど、不幸を振りかざしても仕方ないし、
 やったとしても、結局、雪穂は後悔するだけじゃない?
 落ち着いたら、電話下さい。」

雪穂は爪を噛みながらそのメッセージを聞いていた。

松浦は雪穂を呼び出し、封筒を手渡す。
「あれ、見ないの?」
「見ないでもわかりますから。
 昔の写真ですよね。」
「話が早くて嬉しいわ。
 あんたさ、今いくら持ってるの? 
 どうせ亮、あんたに金振り込んでたんだろ?」
「ちょっと、携帯貸してもらえます?」

亮司の携帯が鳴る。表示は松浦だ。
「留守電聞いた。」雪穂の声に驚く亮司。
「なんで松浦の携帯に、」
「あなたじゃなかったんだなーって思った。
 組むべき相手は、あなたじゃなかったってこと。」
雪穂はそう言いながら松浦を見つめる。
「さよなら。今までありがとね。」
雪穂はそう言い携帯を切った。亮司が部屋を飛び出す。

「何あんた、俺と組もうっちゅーの?」
「私とあなたで、亮をカモる方法って、ないのかな。」
雪穂はそう言い、松浦の足に触れる。
「あんた最悪のガキだね。」松浦が笑いながらそう言った。

亮司が松浦行きつけのヤキトリ屋に駆けつけるが、二人はもうそこには
いなかった。
店の者に、いつもの感じで女と出て行った、と聞き、亮司は又走り出す。

あるホテルの部屋に入ろうとする二人。
「おい!何やってるんだよ!」亮司が二人に声をかける。
「悪いけどね、誘ったの、俺じゃないよ。」
松浦はそう言い部屋の中に消えていく。
「マジかよ・・・何で?
 俺がやんないって言ったからかよ!?」
雪穂が微笑む。
「亮は正しい。」
「だったらさ、」
「でも正しいことなんて言われなくてもわかってんだよっ。
 それでもやってほしいの、私は。どうしても。」
「・・・」
「亮には理解出来ないでしょ。」
そう言い雪穂は松浦の待つ部屋へ入っていった。

ホテルの部屋の前に座り込み待つ亮司。
405号室のドアが開き、松浦が出てきた。
「亮!何やってんだ、お前。
 なんか、途中から泣き出しやがってよ。
 なんかメンドクセーな。」
そう言い松浦は帰っていった。

部屋にいくと、浴衣に着替えた雪穂がベッドに座り封筒を見つめていた。
「帰ろう・・・雪穂。」
「これ見て!」雪穂が封筒を差し出す。
封筒から写真を取り出した亮司は、あの時の雪穂の写真に驚き床に落とす。
父親に裸にされカメラを見つめる雪穂の写真が、自分を見つめている。
「見てよ!ちゃんと見なさいよ!私がされてきたことを!
 亮が知ってるのなんてね、序の口なんだからね!
 私、間違ってるんだよね!
 不公平だって思っているのは間違っているんだよね!
 人の幸せを、壊してやろうって思っているのは、間違っているんだよね!
 これ笑えるようにならなきゃいけなんだよね!
 みんなそうやって頑張ってるから、私もそうやって頑張んなきゃ
 いけないんだよね!
 亮は私にそう言ってるんだよね!」
そう言い、泣きながら写真を亮司にぶつけていく雪穂。
写真と言葉を投げつけられ、亮司も泣いていた。
「・・・言われたくなかった。
 亮だけには言われたくなかった!!」
亮司は雪穂から写真を奪い取る。
「やってやるよ!
 雪穂の人生、ボロボロにしたの、
 俺と・・・俺の親父だから・・・。」
亮司はそう言い写真を握りつぶした。

「お母さん、私出ていくよ。」
「雪穂!」
「私、お母さんが自慢出来る子になろうって、
 頑張ってきたんだよ。
 でも、それがお母さんを悩ませるなら、
 もうどうしたらいいかわかんないよ。」
礼子は雪穂を抱きしめる。
「違うんや。もっと楽になったらええ思うて。
 堪忍な。」
雪穂の瞳から涙がこぼれる。
でもその表情からは、その言葉を待っていたかのようにも見え・・・。

一人で夜道を歩く江利子は突然拉致される。
抵抗するものの、薬で眠らせ・・・。
夜道に落ちた携帯が、篠塚からの着信を知らせていた。

亮司は雪穂が破壊した教会の前にいた。
今までしてきたことを思い起こし・・・
「いつもこうなっちゃうんだよな・・・。」と呟いた。
教会の上には、満月が輝いていた。

篠塚の車の中。
「警察には?」篠塚が雪穂に聞く。
「いえ。」
「家にも俺んとこにも、この写真が送られてきたっていうことは、
 犯人は通りすがりじゃないよ。」
「きっと、そうなんでしょうね。」
「俺は、警察に届ける。この写真だけで充分、」
「やめて下さい!
 届けないのは江利子やご両親の希望なんです!」
「だからって・・・放っておけるわけないだろう!!」
篠塚の剣幕に驚く雪穂。
「・・・江利子は・・・篠塚さんの家に行くところだったんですよっ!
 江利子や、江利子のご両親にしたら、
 篠塚さんだけには何も言われたくないと思います。
 今は・・・」そう言い涙をこぼす雪穂。
「楽しかったです。今までありがとうございました。
 江利子からの伝言です。」
雪穂はそう言い篠塚の車から降りた。

川に篠塚の本を投げ入れる雪穂。
ゆっくりと底へ沈んでいく本を見つめ・・・
『結局、雪穂は後悔するだけじゃない?』
亮司の言った言葉を思い起こす。

携帯が鳴る。公衆電話からの着信だった。

古賀のアパートで鍋を突く笹垣。
キャッシュカードから亮司たちにたどり着くことは出来なかった。
礼子にも、もう来るなとやんわり断られた。
「笹垣さんのノート、桐原弥生子に見せました。」
「なにをすんねん!」
「桐原弥生子の親心に賭けてみようと思ったんです。」
「あんな女に親心なんか、良心なんかあるかいや!」
「親心は良心なんかじゃないですよ。
 自分の子供だけはかわいいって思う、本能みたいなもんですよ。」
古賀の妻が笹垣にビールを注ぎながら言う。
古賀は隣の部屋でぐっすりと眠る息子を見つめ微笑んだ。
「念仏申せば八十億劫の罪滅す。」
古賀の微笑みに笹垣が呟く。

雪穂が亮司に呼び出される。
「話って、何?」
「わざわざ松浦の携帯から電話してきたのは
 会っている相手が松浦だって俺に知らせるためだよね?
 そうすれば俺が来るって思ったんでしょ?
 松浦と寝ようとしたのも途中で泣き出したのも
 そのあと写真見せたのも、
 全部そうすれば俺が言うこと聞くと思ったから?」
「言うこと聞いてくれること、全然期待していないって言ったら
 嘘になる。
 だけど、完全に計算ずくの芝居かって言われたら、違う。
 他の人にするものとは全然違う。」
「どう違うの?」
「亮にはわかってほしいと思ってる。
 他の人にはわかってくれとは思わない。
 私の都合のいいように転がってくれてれば、それでいい。」
「・・・それおんなじだよ。」
「違うよ!」
「相手の気持ちはどうでもいいってことは結局同じなんだよ!」
「・・・でも、私には亮しかいないんだよ。」
「そりゃこんだけ言うこと聞くヤツは他にいないしな。」
「亮に見捨てられたら、私、ホント一人ぼっちなんだよ。」
「もう何言われても、俺騙されてるようにしか、 
 思えなくなっちゃったんだよ。
 ・・・信じられないんだよ、雪穂のこと。」
「・・・なら、私も言わせてもらうけど、
 全部計算だったからって何なの?
 自首しないって決めたのも、死んだのも、強姦だって、
 最終的に決めたのはアンタでしょう!?
 あのオヤジだって、私が殺してって頼んだわけじゃない。悪いけど。」
雪穂はそう言いドアへと向う。
雪穂の言葉に呆然と立ち尽くす亮。
「亮。
 騙される方がバカなのよ。」
微笑みを浮かべて雪穂がそう言う。
亮司は奈美江が持ってきた観葉植物を手に取り、雪穂目がけて投げつけた。
そして、怒りに満ちた目で雪穂を見つめる。
「じゃあ。」
そう言い雪穂は部屋を出ていった。

「なぁ・・・雪穂。
 月の裏側には、一筋の光もなかったよ。
 ひとかけらの優しさも、ぬくもりも、美しさもなかった。
 だけど、なぁ、雪穂。
 俺を傷つけて去ることが、あなたのやり方だったこと、
 いつの日も変わらない、あなたの優しさだったこと、
 あのむちゃくちゃなわがままだって、 
 一度でいいから幸せな子供のように甘やかされたかっただけなんだって、
 今なら・・・ちゃんとわかるんだけどな・・・。」

亮司の家からの帰り道、泣きながら歩く雪穂が呟く。
「ごめんね・・・亮・・・。」
その場に座り込み、雪穂が泣き続ける。

「ごめんな・・・。」
白夜行 第六話
『白夜の終わり』

「11歳の時、俺たちは出会った。
 俺は雪穂を守るため、父親を殺した。
 その俺をかばうため、雪穂は母親を殺した。
 俺たちは、その罪を隠すために、他人でいることを約束し、
 別れた。
 だけど、7年後、俺たちは再会し、
 いつの日かもう一度、二人で太陽の下を歩くことを
 約束した。
 それは、罪に罪を重ねて、生きていく方法しかなかったんだ。
 崩れ始める、二人の絆。」

=2000年1月=
弥生子(麻生祐未)を訪ねていく古賀(田中幸太朗)と笹垣(武田鉄矢)。
以前置いていった笹垣ノートには、亮司(山田孝之)と雪穂(福田麻由子)、
松浦(渡部篤郎)のことまでが、びっしりと書かれていた。

「ご覧になっていただけましたか?」古賀が聞く。
「あの子もう死んでいるのよ。」
「もし、生きていたらという過程で、結構です。」
「私、もともと生みたくなかったんですよね。
 ホステスと客の関係で、桐原が子供欲しいっていうから
 仕方なく生んだようなもんで。
 文句があるなら死んだ桐原に言いなさいよ。」
タバコをふかしながら答える弥生子。
「親としての責任は感じないんですか?」怒ったように古賀が聞く。
「一番の被害者は私よ!
 子供産まされて、ダンナは愛人に殺されるし、
 いまだに刑事に付きまとわれるし!」
「亮司君は、そんな父親と母親の、被害者だとは思わないんですか!?」
返す言葉のない弥生子。
黙って聞いていた笹垣が笑みを浮かべた。

古賀は来月転勤の前に、笹垣に恩返ししたいと思っていた。
「有給たまっているし、探偵ごっこでもやってみます!
 笹垣さんは心入れ替えて、普通に仕事して下さいよ。
 この間だって署長に笹垣さんの島流しの相談、本気でされましたからね!」
古賀の言葉に嬉しそうに微笑む笹垣。

弥生子は、古賀に言われた言葉と、亮司の「ありがとう」と自分に言ってくれた
言葉を思い出しながら帆船の切り絵を見つめ・・・。

弥生子は興信所を訪れ、松浦の居場所を調べてほしいと頼む。
「何か手がかりになるようなものは?」
「傷害の前科があったんで。」
古賀が弥生子を見張っていた。

亮司の元に雪穂から郵便物が届く。中には
『恩を着せられるのも気分が悪いので』
と書かれたメモと、通帳と印鑑が入っていた。

「冷静になれば、雪穂の言っていることはもっともだった。
 だけど、雪穂がやって来たことだって、罪悪感を逆手に取った
 脅迫だ。
 ねじれていく論理。
 正当化される犯罪。
 罪だけが重ねられる泥沼に・・・
 二人でいると、沈み込んでしまうことに気付いた。」

亮司は雪穂の秘密を写したネガを買い戻したいと松浦に持ちかけたが
応じてくれない。
「お前、このネガがなきゃ、俺と縁が切れると思ってるんだろう?」
「思ってませんよ。」
「まあ、榎本にくっついていけば、俺といるよりおいしいもんな。」
「言っとくけどそれ持ってたってたいして利かないよ。
 俺もうあの女のために何もするつもりないから。」
「じゃあ・・・俺が何してもいいの?」
「いいけど。なんかしたら自首するよ。
 あんたもあの女も全員道連れに。」
突然笑い出す松浦。
「したらお前、今度は榎本にぶっ殺されるな。」
「亮ちゃんさ、白夜って知ってる?
 夜なのに太陽が出ててさ。
 夜が、昼みたいになってさ。」
「なんだよそれ。」
「だらだらぐずぐず、人生は続くって話!」

「なぁ・・・雪穂。
 白夜ってさ、
 奪われた夜なのかな。
 与えられた昼なのかな。
 夜を昼だと見せかける太陽は、
 悪意なのか、善意なのか。
 そんなことを考えた。
 いずれにしろ・・・俺はもう嫌気がついていたんだ。
 昼とも夜ともつかない世界を歩き続けることに。」

部屋で一人、サングラスをつけたり外したりしながら光を見つめる亮司。
そこへ友彦(小出恵介)がやって来た。
「何してるの?」
「・・・昼間歩きたい。
 俺の人生、白夜の中を歩いているようなもんだからさ。」

「終りにしよう。何もかも。
 あなたの為に・・・俺の為に・・・。」

大学に篠塚(柏原 崇)がやって来た。
副部長が江利子に部活に出るよう伝えて欲しいと言うと
篠塚は厳しい視線で雪穂を見つめ
「言っておいてくれる?友達なんだし。」と言い立ち去った。

亮司は松浦が榎本のところへ行き、自分を通して仕事をするよう勝手に
話を付けたと知る。

友彦は亮司に、松浦に対して弱いのはどうしてなのか聞いてみる。
「恩があるからな。
 親父商売やってたんだよ。
 わりと早くに親父死んでさ。
 そのあと松浦さんが店を切り盛りしてくれてたんだよ。」
「松浦さん店員やってたの?え?何の?」
「・・・・・」

ヤキトリ屋。
「イサムちゃん、ムショでてから暫く、質屋で店員やってたんだよ。」
ヤキトリ屋店主の話に驚く友彦。
突然友彦のイスがひっくり返る。松浦が蹴ったのだ。
「しゃべってんじゃねーよ、余計なことー。
 ふーん。何聞きたいのかな、友ちゃーん。」

図書館で本を選ぶ雪穂。谷口真文(余貴美子)が小声で話しかける。
「あの話、どうなった?よろめいている友達!」
「なんか、別れたみたいです。」
「そうなの?じゃあ新しい彼と?」
「どっちも、上手くいかなかったみたいですよ。」
「あら・・・そう。何で?」
「・・・あの、10年も20年も同じ気持ちではいられないけど、
 何なんですか?
 隣の息子にときめいているって。」
「あ、私ね。
 ときめくって言ってもさぁ。
 もし、ダンナがいなくて、心に何の余裕もなかったら、
 私果たして隣の息子にドキドキするのかなーって、
 はたと考えちゃうのよ。
 まあ、ときめくっていう気持ちも、ダンナのおかげかーって思うとさ、
 うち帰ってご飯作っちゃうわけだ。
 ・・・どうしたの?」
雪穂は自分を信じられないと言った亮司の言葉を思い出していた。
「その話、友達にしてあげたかったなーと思って。 
 ほんとバカですよね、その子。」

ヤキトリ屋店主に呼ばれ店に駆けつける亮司。
店の裏で友彦が松浦にボコボコにされていた。
「お前、こいつのことちゃんと教育しておけよっ!
 人のこと寄生虫呼ばわりしやがってよ!」
「本当のことだろう。」亮司は小さく呟き友彦に駆け寄る。
「おい!いい機会だから教えといてやるよ。
 こいつな、」
「おいっ!」
「あれ?自首するんじゃなかったっけ?単なる脅し?
 お前、俺と全然変わんねーじゃん。」
「わかったから止めろ!」
亮司に掴みかかる松浦。
「わかりましたから止めてくださいだろっ!」
「・・・わかりましたから、もう止めて下さい。」
「そうやってイイコにしてればさ、悪いようにはしないよー。」
松浦はそう言い帰っていった。
亮司は松浦の背中を見つめ・・・。
そんな亮司を心配そうに見つめる友彦。

笹垣が古賀の車に戻り、買ってきたパンを渡す。
マイ七味をかけてパンを頬張る古賀。
弥生子が興信所を使って何かを調べていたこと、
そして松浦は住民登録した場所にはいなかったことを報告する。
「みんな好きやなー。かくれんぼが。」笹垣が呟いた。

雪穂との優しい思い出を思い浮かべながら、松浦のことを考える亮司。
公衆電話をちらっと見つめ、再び歩き出す。

学校の帰り道、江利子にお茶していこうと声をかける雪穂。
「あんまり寄り道したくないんだ。・・・ごめんね。」
江利子は力なく微笑み、迎えに来た母親の車に乗り帰っていった。
江利子を乗せた車を見送る雪穂・・・。
友達に呼ばれ、笑顔を浮かべる雪穂の表情が固まる。松浦が現れたのだ。

切り絵で作った人形を、ザクザクとハサミで切り刻む亮司・・・。

「あいつさー、自首するとか言い出してさー。
 あんたも今更、困るよねー。
 そんなことさせたくねーよなー。」
「どおうしろって言うんですか?」
「より戻してやってくれない?
 あんたといれば、あいつ、変な気起こさないから。」
「逆らったら、今度は私が亮と同じ目に遭うんですよね。
 売春させられたり、たかられたり。」
「フフン。かもね。」

松浦が去った直後、雪穂は怖い表情で篠塚に電話を入れる。

友彦が亮司に言う。
「殴られたの、あれ俺が悪いんだよ。
 松浦さんさ、最初は普通に話してくれてたんだよ。」
「何て?」
「お前の親父さんが事故で亡くなった後、俺は亮と亮の母親を守ったって
 言ってた。
 亮は何だかんだ言ったって、俺がいないと生きていけないんだって。
 俺が見てるとそうじゃないからさ、つい俺言っちゃったんだよ。
 それって、松浦さんのことじゃないんですかって。
 したらいきなり怒り出して。
 お前、俺なんかいない方がいいっていうのかって。」
切り刻んだ切り絵をみつめる亮司・・・。

友彦と亮司はヤキトリ屋の店主に話を聞く。
「俺が言ったって言うなよ。
 勇ちゃんさー、おふくろさんが浮気して出来た子なんだってさ。
 世間体を気にする家で、
 まぁ、そのまま実子として育てることにしたわけさー。
 お袋さん小さい頃から勇ちゃんに、あんたは本物の子じゃないんだから
 遠慮しろって、そう言いくるめながら育てたらしいんだ。
 勇ちゃんはそれに反抗するように、パチモンの商売始めて、
 下手打って止められて、
 そん時アニキがさ、あ、本物ね、
 お前死ね、生まれてくるんじゃなかったんだ、
 お前なんかいない方がいいって言ったんだと。
 お袋さん、ごまかすように笑ってな。
 勇ちゃん、そのお袋さんとアニキを刺して、
 傷害食らったんだよ。」

「お前に見捨てられるの、怖いんじゃないかな、松浦さん。」
友彦が言った言葉が、
「亮に見捨てられたら、私ほんと一人ぼっちなんだよ。」
雪穂の言葉と重なる。
「脅したり、殴ったりするのはさ、愛情の裏返しっていうか。」と友彦。
「だからって・・・俺、それを受け入れ続けなきゃいけないの?」
「俺が想像してる、お前の考えている方法より、
 その方がマシだと思う。
 お前な、本当の強さっていうのはな、
 打たれても打たれても、また立ち上がる力のことだぞ!」
トイレを我慢していた友彦はそう言いながら銭湯に駆け込む。
雪穂は篠塚の父親が経営する『シノヅカ製薬』を訪ね
睡眠薬を出してもらっていた。
「江利子の写真が焼きついちゃって・・・最近眠れなくて。」
「そう。」
「なんか、この間から変じゃありませんか?」
「俺も唐沢と同じような状態だし。
 君を見ていると思い出すからさ。」
「私を見て?」
「そりゃあそうでしょ。
 俺の知っている唯一の関係者なんだから。」
「え・・・。関係者なんですか、私。」
「事件を知っているっていう意味でね。」
「あの・・・どうかしたんですか?」
「ん?ああ、じゃあ、
 それ、バレないようにしてよ。」
「ありがとうございます。」
雪穂は立ち去る篠塚の背中を見つめ・・・。

友彦と湯船につかりながら、銭湯に描?れた絵を見つめる亮司。
「どうしたの?」友彦が聞く。
「夜なのに、昼なんだなー。」
突然友彦は片手を挙げて亮司の前に立ちはだかる。
「俺の人生は、白夜の中を歩いているようなもんだからな。」
「・・・くだらねーよ、お前!」そう言いながらも嬉しそうな亮司だった。

「もう少し粘ってみようと思った。
 いいじゃないか。たかられたって。
 いいじゃないか。泥沼だって。
 そんな自分を笑うことが俺にはまだ出来るんだから。
 もう少し歩いてみよう。
 終わらぬ白夜はきっとない。」

「もう終わるからね・・・亮・・・。」
雪穂は庭の手入れをしながらそう呟き、花鋏を握り締める。

友達の優しさに、芽生えた殺意を消しとめた亮司。
亮司の為にと、新たな殺意に手を染めようとする雪穂・・・。

銀のハサミを暫く見つめたあと、ベルトに付けたケースにしまう亮司。
榎本の仲間が、榎本のルートに手入れが入ると知らせにくる。
亮司はパソコンのデータを全て消去し、松浦にもそのことを知らせようと
電話を入れる。
松浦が携帯を出ようとしたとき、弥生子が自分を待っているのに気付く。
微笑みあう二人。
「どうぞ。」
松浦に言われ、弥生子が部屋に入っていく。

その様子を古賀が見張っていた。

雪穂は花鋏をカバンに入れ・・・。

「よくわかったね、ここ。」と松浦。
「買い取りたいの。」と弥生子。
「何を?」
「決まってるでしょう。
 あんた昔盗んでった写真と、そのネガ。」
「もう、人聞き悪いなー。
 奥さんがさ、ダンナの恥になるから処分してって俺に頼んだんじゃない。」
「あんたアレであの子のこと脅してるでしょ!」
「言われたとおり処分しましたって。」
弥生子は部屋の中を探し始める。
「ねーって。
 ねーよ!
 ねーって言ってんだろうっ!」
弥生子は引き出しの中からフィルムケースを見つけ出す。
それを手に部屋を出ようとする弥生子を捕まえ松浦が言う。
「もういいじゃん。あんなめんどくさいこと。」
「私全部しゃべってもいいのよ!
 あの子だって、こんな生き方させられるんなら、刑務所行った方が
 マシよ!」
「別に、俺がそんなことさせたわけじゃねーって。」
松浦が弥生子の胸元に手を入れようとする。松浦から逃れようとする弥生子。
そこへ古賀がやって来る。
「どういうことだ!はめたのかよ!?」激怒する松浦。
「知らないわよ!」慌てる弥生子。
「婦女暴行の現行犯で!」
松浦に手錠をかけようとする古賀。
台所に逃げ込んだ松浦は振り向きざま包丁で古賀を刺した。

その頃、署にいた笹垣は、七味が落ちたことに嫌な予感を覚える。

「松浦・・・暴行、傷害の、現行犯で、逮捕・・・」
古賀はその場に倒れてしまう。
震える手で包丁を握り締める松浦は、古賀の上に馬乗りになり、
「俺、何も悪くないねー。
 そうだよねー。」
そう呟きながら、何度も包丁を古賀に突き刺した。

恐怖に怯え震える弥生子。そこに亮司がやってきた。
「どういうこと?」
「写真取り戻そうとして・・・。」
母親のはだけた胸に気付く亮司。
幼い頃、父の目を盗んで愛し合っていた弥生子と松浦に
父の帰宅を知らせるよう、戸をノックした自分を思い出す。
「違う。そうじゃないの!亮司、聞いて!亮司。」
弥生子が慌てて言うが、亮司の耳には届かない。
亮司は振り返った松浦の胸に飛び込んだ!手には挟みが握られていた・・・。
「マジ・・・なんで・・・」
「ずっと・・・俺ホントはずっと・・・
 こうしたかった。
 あんた来てからおかしくなったんだよ、うち。 
 親も・・・俺も・・・。
 死んで・・・もう・・・。
 あんたなんか、いない方が良かったんだよ。」
「俺さ・・・俺・・・おまえが親父刺したときさ、
 こいつオレに似てるって思った・・・。
 だからさ・・・誰にも言わなかったじゃない、あの事だけはっ!
 もう・・・ひどいよ、亮ちゃん・・・。」
松浦はそう言い、亮司の方を抱きしめる。
「あれ・・・」松浦が指差す先に飾られた空の写真。
「綺麗だろ・・・。パッチモンでも・・・。
 捨てたもんじゃないよ・・・。」
亮司の肩で息を引き取る松浦。亮司はそっと目を閉じた。

「亮司・・・あんた・・・。」
「松浦がこいつ殺したんだって、警察にはそれだけ言ってくれるかな。」
「それでいいの?
 ほんとに、それでいいの?
 そうやって、ずっと・・・」
弥生子はそう言うと、フィルムを玄関に置き泣きながら出ていった。

松浦の遺体を見つめ、彼の優しかったことだけを思い起こす亮司。
亮司は松浦の遺体に彼の愛用するサングラスをかけた。

松浦の携帯に公衆電話から電話しようとする雪穂。
そこへ亮司が現れ、彼女にフィルムケースを見せた。
「どうしたの?これ。」
「落ちてた。」
「落ちてたって!」
「これでもう、本当に全部終りだよな。
 俺も雪穂も、何も縛られない。」
雪穂は亮司の上着が血で汚れているのに気付く。
「何でそんなことしたのよ!
 何で!?何で!?」
「ダニみたいなやつだったんだよ。
 これで良かったんだよ。
 パチモンだったんだよ。
 だからこれで良かったんだよ。
 みんながいなくなればいいって思ってたんだよ。
 だからこれで良かったんだよ。
 だから俺は、殺す、」
雪穂は自分のバックから花鋏を取り出して亮司の頬に近づける。
「やろうと思ってた。やっちゃうんだもんな。
 私だって、あんな男死ねばいいって思ってた。
 だから、やったのは、あたしだよ。」
雪穂はそう言い涙をこぼしながら微笑んだ。
「ねえ亮。考えたんだけどさ、私だって、偽造は出来ないけど、
 金くらい、いくらでもふんだくってこれると思うんだよ。
 強姦は出来ないけど、亮が好きな女の男、寝取るくらいは出来ると思うんだよ。
 私、わりと頼りになると思うんだけど。
 どうかな?」亮司を抱きしめそう言う雪穂。
「お返しにさ、亮も一度、太陽の下に戻してあげるからさ。
 そういうのは、どうかな?」
亮司の瞳から涙がこぼれる。そして二人はもう一度抱きしめあった。

「あなたは俺の太陽だった。
 白夜に浮かぶ太陽だった。
 俺の・・・たった一つの救いだった。」

号泣する亮司に雪穂が言う。
「大丈夫だよ。亮・・・。」

亮司の家のポストにメモと小田原行きのチケットが入っていた。
『今度は昼間を歩こう 友』

「凶器は、現場にあった包丁だと思われますが、
 まだ発見されていません。
 犯人は、松浦。逃走中です。
 私が、こんな目に合わせてしまったんです。」
笹垣が古賀の妻にそう言う。
「古賀は・・・笹垣さんを慕っていました。
 固い人で、捜査の話なんか、家でしなかったから、
 詳しいことは知りませんけど・・・
 笹垣さんを見ると、父という言葉が浮かぶんだって。
 警察官としての、自分の親は、笹垣さんなんだって。
 その背中を見て育ったんだって言ってました。
 古賀の死は、空しいものじゃなかったと思います。
 決して空しいものにしないで下さい・・・。」

「すまんのう、古賀・・・。
 すまんのう・・・すまんのう・・・古賀・・・。」
彼が好きだった七味をカップラーメンに山のようにかけ
号泣する笹垣・・・。

『苦悩の旧里は捨て難く、
 浄土は恋しからず候
 浄土は恋しからず候』

「元に戻ったって言ってました。友達。」
雪穂は図書館で谷口真文に報告する。
「そうなの!?そっかぁ!」
「あの話したら、そうだよねって。
 傷つけた分、これからは大事にするって言ってました!」
「そう!あんな話が!」
「すごく嬉しそうですね!」
「気になってたからさ。」
「いろいろありがとうございました。
 ・・・また来ます。」
「あ・・・うん。」

唐沢家。
庭の土をいじりながら、雪穂はふと空を見上げる。
そして太陽に手をかざし、それを掴もうとしてみた。
雪穂の瞳から涙が一筋こぼれた。

「なぁ・・・雪穂・・・。
 何もかもが嘘っぱちな人生なんだから、
 もう全部嘘にしてしまおうと思ったんだ。
 全てのカードが裏返れば、きっと新しい物語が始まる。」

亮司は友彦に電話をして言う。
「今から俺の言うとおりにしろ。」
「桐原、お前・・・」

友彦が事務所に行くと、家具などは全て引き払われ、鍵だけが置いてあった。
そこへ笹垣ら刑事がやってくる。
「松浦勇はどこにおんのや!?」
「言われて、鍵を取りに来たんです。」友彦が答える。
「もう一人ここにおったんやろう!?」
「亮って、人のことですか?」
「おったんやな・・・。」
笹垣が友彦の頬を叩く。

雪穂に食事に行こうと誘う副部長。
雪穂は優しく微笑み答える。
「どこに連れて行ってくれるんですか?」

「俺たちは・・・もうすぐ20歳だった。」
白夜行 第七話
『美しき亡霊の決意』

「11歳の時、俺たちは出会った。
 俺は雪穂を守るために、父親を殺した。
 その俺をかばうために、雪穂は母親を殺した。
 俺たちは、その罪を隠すために、
 他人でいることを約束し、別れた。
 だけど、7年後、俺たちは再会し、
 いつの日かもう一度、
 二人で太陽の下を歩くことを約束した。
 それは、罪に罪を重ねて、
 生きていく方法しか生まなかったんだ。
 何もかも、嘘っぱちの人生なんだから、
 もう全部嘘にしてしまおうと思ったんだ。
 全てのカードが裏返れば、
 きっと、新しい物語が始まる。」

=2000年冬=
「今から俺の言うとおりにしてくれ。」
 俺、お前には昼間の世界に戻ってほしいんだ。
 せめて、俺の代わりに・・・。」

亮司(山田孝之)にそう頼まれた園村友彦(小出恵介)は、笹垣(武田鉄矢)に
松浦(渡部篤郎)に頼まれて部屋を借りたり携帯を契約したりしたと説明する。
「そうすれば、金くれるって言うんで。
 俺は松浦さんに頼まれて、パソコン設置したり留守番したり。
 そんなことしてただけです。」
笹垣が亮司の写真を見せると、
「松浦さんの腰ぎんちゃくっていうか・・・
 一緒に動いていたみたいですけど。」そう答えた。

姿を消した松浦の携帯電話着信履歴から、唐沢雪穂(綾瀬はるか)の名前を
見つけた笹垣。
「よっしゃ!」と思わず呟く。

亮司はあのハサミを開いたり閉じたりしながら、雪穂と楽しそうに話す
松浦の姿を思い浮かべ・・・。

高宮(塩谷瞬)に誘われ食事に向う雪穂。
その時、携帯が鳴る。表示は『松浦』。
雪穂は長くなるかもしれないのでと、高宮を先に店に行かせたあとに
電話に出る。
「大丈夫?今どこ?」と雪穂。
「今から言うとおりにしてくれ。」
「・・・嫌だ。それだけは絶対に!」
「もう走り出してるからさ。
 そうしてもらわないとつじつまが合わなくなるんだよ。」
「それだけは嘘にしたくない!」
「ちゃんと幸せになれよ。」
亮司がそう言い電話を切り、道に設置されたゴミ箱にその携帯を捨てた。

立て続けに雪穂の電話が鳴る。
「もしもし。唐沢雪穂さんですか?」
聞き覚えのあるその声。振り返ると、笹垣がそこにいた!
険しい目つきで、口元だけ引き上げて微笑む笹垣・・・。

笹垣は、雪穂を取り調べ室に連れていき、松浦、そして亮司との関係を
追及した。
飲み屋やラブホテルで松浦と一緒にいる雪穂を、沢山の人が目撃していると
笹垣が言う。
「ずっと・・・脅かされていたんです、私。
 お前の本当の母親が、殺人犯だってことバラすぞって、松浦に・・・。
 お金取られたり、ホテルに連れて行かれたりして。
 お前は、血が臭いんだからって。
 お嬢さんのふりしてても、すぐわかるんだから、脱げって言われて・・・。
 たまに、多分、桐原亮司だと思うんですけれど、
 来ることあって・・・二人で・・・。
 さっきも、松浦に余計なことを言うなって、電話・・・」
そう言いながら涙をこぼす雪穂を笹垣は見つめる。
「松浦と、桐原亮司を捕まえて下さい。」
雪穂が真剣な眼差しでそう訴え・・・そして微笑んだ!
笹垣はその微笑に、あの日、ガス心中から救出され目覚めた雪穂が
同じように微笑んだのを思い出す。
怒りに任せて雪穂の頬を叩く笹垣。
同僚の刑事が慌てて笹垣を止めるが、笹垣は自分の顔を見て笑ったと、激怒する。

「どうして私が殴られるんですか!?
 警察は、犯人捕まえてくれって言ったら、
 殴り飛ばすんですか!?」
「どこまで芝居したら気が済むんや!あぁ!?」

これは、亮司の指示なのですね・・・。
それにしても雪穂の涙をこぼしながらの演技がすごい!
そして、あの恐ろしい微笑み!!
彼女の表情のどんなに小さな動きをも見逃すまいとする笹垣も、
あの微笑には背筋がぞっとしたのでは。
そしてあの微笑、笹垣に殴られることも、雪穂たちの計算!?

唐沢家。
礼子(八千草 薫)が雪穂の手を両手で包み込むように握り締めながら
話を聞く。
「昔のこと隠してたのも、こういうのが怖くって。」
「堪忍え、雪穂。
 ほんまにお母さん、そこまで考えてへんなんだ。」
「お母さんは何も悪くないよ。」
「笹垣さんは、なんであんたをそこまで疑うの?」
「私にも、よくわからないんだけど、
 昔から、目の仇にされてるんだ。」
雪穂はそう言い腫れ上がった頬を押さえる。


唐沢家の前で雪穂の様子を伺う笹垣。
雪穂が家を出てきた。笹垣がその後を追うのを、礼子が気付く。

「ストーカー!?
 何で事件の関係者張ったらいかんのですか!?」
上司にそう訴える笹垣。
だが上司は、雪穂は被害者なのだからと笹垣に厳重注意する。
礼子が、笹垣が置いていった『メンタルケアカウンセリング』のパンフレットを
つき返しに来たのだ。
「こんなもんに手帳使ったり、殴ったりしたことをマスコミに訴えられてみろ!
 俺はお前を、外さなきゃならなくなる!
 お前だって古賀の仇をとりたいだろう!?
 それにお前のこだわっている桐原なんたらっていう腰ぎんちゃくも、
 松浦と一緒にいる可能性が高いじゃないか!」
「あいつ、知恵があるんですわ。
 ただの腰ぎんちゃくじゃない。
 なんせ、自分で自分の死亡届出すようなヤツです。」
「だから、その辺も松浦を捕まえればいくらでも追求できるだろう!
 わかったらみんなに加わって、松浦の地元の交友関係当たってくれ!」
「あの子、松浦と何か関係あるんです!」
「あの子は単なる被害者だろ!」
「被害者やない・・・」笹垣が呟く。

「こうして俺たちは、嘘に嘘を重ね、ストーリーを書き換えた。
 俺は加害者に。
 雪穂は被害者になった。
 売り払ったのは俺たちの人生に残された、
 たった一つの美しさだった。」

庭に新しく植えたサボテンを見つめる雪穂。
この間電話で亮司に言われた言葉を思い出す。
「警察が来たら、俺と松浦に昔の事件をネタに脅されていたって言え。
 雪穂は被害者で俺は加害者だ。
 そっから先の絵は自分で書けるよな?」
「・・・嫌だ。それだけは絶対に。」
「ちゃんと幸せになれよ。」

「めずらしいな、ぼーっとして。」ふいに礼子に声をかけられる。
「私の幸せって、何かなーって。」
「まあせいぜい、お悩みやす。」優しい微笑みを浮かべて礼子が言う。

そんな雪穂の元に高宮から電話が入る。
「金くらい、いくらでもふんだくってこれると思うんだよ。
 亮をもう一度、太陽の下に戻してあげるからさ。」
自分が亮司に言った言葉を思い起こし・・・

大江図書館ホームページのBBS。
書き込みゼロ件なことにため息をつく谷口真文(余 貴美子)。
同僚が、図書館のホームページに掲示板をつけても無駄だと笑う。

高宮と食事をする雪穂。
高宮は東京の大手企業に就職が決まっていた。
彼の両親はその会社の大株主らしい。
「なんか、うちの家って、昔から土地とか株とか、
 やたら持っててさ。」
「へー。すごいですね。」
「この4月から、東京の実家に戻ってサラリーマンだよ。」
「・・・」
「どうした?」
「・・・寂しくなっちゃうなーと思って。」
「え・・・。」雪穂の胸元に戸惑う高宮。
「あの、新幹線で2時間半の遠距離って、可能性ありますか?」
「それって、付き合うって、こと?」
雪穂が美しい微笑みを浮かべる。

「なあ・・・雪穂・・・。
 俺にはもう、あなたと歩ける未来なんてなかったし、
 あったとしても、それはあなたにとってあまり幸せなものじゃないだろう。」
亮司は手をつないで歩く小学生カップルに微笑み・・・。

高宮と一夜を共にした雪穂は、彼が眠る部屋で悲しげに鏡を見つめる。
幼い頃の自分に軽蔑の目で見られたような気がして思わず目をそむけた。

「だから、生きていこうと思ったんだ。
 ただ、あなたを見守る、幽霊のように・・・。」

『2002年1月27日
 唐沢雪穂、高宮誠と結婚予定
 財産目当て?』
ノートにそう書き綴る笹垣。

「そして・・・2年が過ぎた。」

=2002年1月 東京=
雪穂は高宮家に嫁ぐことが決まり準備を進めていた。

高宮は、雪穂に引越し準備を任せ、東京に転勤になった先輩の篠塚(柏原崇)に
会いに行く。

「俺が結婚やめるって言ったら・・・」
来週の日曜に式を控えた高宮が言う。
「好きな人がいるんです。」
「お前他に女がいるのか!婚約中なのに。」あきれ返る篠塚。
「女とかそういう言い方止めてくださいよ。
 電話番号も知らないんです。
 俺の、片思いなんです。」
「それで?結婚やめるまで考えちゃったの?」
「三沢千都留さんって、派遣の人なんですけど。
 今週いっぱいで仕事辞めて、実家に戻って、見合いするみたいで。
 これが最後かって思うと。」
「そんなに好きならさ、何で式の一週間前まで放っておいたの!」
「付き合ってすぐの頃だったんですけど、
 雪穂を、妊娠させちゃったんですよ。」

「やっぱり、おろした方がいいよね。
 さすがにまだ・・・嫌だよね。
 明日、病院行ってくるよ。」
「俺も一緒に、」
「いいよ。一緒にいられるほうが、余計辛いから・・・。」

「だから、雪穂とは絶対結婚しなきゃいけないって思ってて。
 うちの親も、雪穂のことすごく気に入っているし。
 雪穂のこと嫌いになったとか、そういうんじゃないんですよ。
 でも、前みたいに100%じゃないっていうか。
 それって雪穂にも、失礼な話だなって。
 篠塚さんなら、どうします?」
「人の意見聞いても仕方ないだろう。
 お前がどうしたいかなんだからさ。」
「・・・」

二人の会話を盗み聞きする人物・・・。


高宮の写真やメールをチェックし、首をかしげる雪穂。
「気のせいかな・・・。」

ネットカフェから探偵事務所を調べる雪穂。
「お返しにさ、亮をもう一度、太陽の下に戻してあげるからさ。」
自分の言葉を思い出す。

公衆電話からの着信。
「いいお嬢さんのやることじゃないんじゃないの?」
すぐ側で声が聞こえる。
振り返ると、笹垣と同じようなトレンチコートを着た亮司がそこにいた!
「何やってんのよ。」雪穂が笑う。
「いざとなったら笹垣がストーカーしていたことにしてやろうと思って。」
亮司も晴れやかに笑った。


亮司が宿泊するウィークリーマンションに場所を移す二人。
「高宮の女関係、調べようと思ったんだろう?」
「・・・うん。」
「調べても多分何も出てこないよ。
 同じ会社の三沢千都留って女に片思いしているだけ。
 で、何もないのに悩んじゃってるの。
 こんな気持ちで雪穂と結婚しちゃいけないんじゃないかって。」
「はた迷惑なピュアさだな。」
「まあ、とにかく俺はあいつを見ておくからさ。
 雪穂は物騒なことをしないで、このまま帰ってよ。」
「・・・なんか、すごく穏やかになったね。
 前だったら、絶対怒ってたよね。」
「もう・・・感情に振り回されるのも疲れたし。
 雪穂の幸せは俺の免罪符だから。」
「免罪符?」
「周りの人を合わせたら、一体何人の人生を狂わせたかわかんないけど、
 せめて一人は幸せにしましたって、思いたいんだよ。だから・・・」
「じゃあ、私はめちゃめちゃ幸せにならなきゃいけないわけだ。
 亮の為にも。」
「そうだよ。」
「そういうことなら、遠慮なく、結婚に向けて協力してもらおうかな。」
「そうしてよ。」亮司が穏やかに微笑んだ。

亮司は雪穂のために、そして雪穂は亮司のために
生きようとしているのですね。
=東西電装 特許ライセンス部=
三沢千都留(佐藤仁美)の元に、スズキマサナオという人物から花束が届く。
戸惑いながらも花を受け取る千都留を見つめる高宮。

退社する人々の中から千都留を見分ける亮司。花束が目印となっていたのだ。
「あいつか・・・。」亮司が尾行し始める。

4つに増えたサボテンを見つめながら
「雪穂の幸せは俺の免罪符」と言った亮司の言葉を思う雪穂。
笹垣が、そんな雪穂の様子を見つめていた。
そこへ戻った礼子は・・・。

千都留が高宮に、前に借りた傘のお礼を渡す。
「本当に実家帰って、お見合いするんですか?」
「親がうるさくって。」
「明日でしたっけ?帰るの。」
「ううん。明日部屋を引き払って、最後にクイーンホテルに一泊するから
 あさって。」
「クイーンホテル?」
「貧乏OL最後の贅沢よ!
 あ、確かあさって、そこで式挙げるんだよね?」
「・・・やめるって言ったら?」
「・・・何言ってんの!奥さん大事にしなさいよ!」
千都留はそう言いエレベーターに乗り込んだ。

明日告白しようかと、高宮が篠塚に相談する。
「三沢さんといると、俺、普通なんです。
 なんかよくわかんないんですけど、雪穂といると、
 どっか緊張してるっていうか・・・。」
「上手くいったらどうすんの!?」
「雪穂との結婚はやめます。」
「うまくいかなかったら?」
「そういう運命だと思って、このまま雪穂と結婚します。」
「運命ね・・・。」

その話を、トレンチコートに身を包んだ亮司が聞いていた。

「わざわざ明日、クイーンホテルに告白しに行くの?
 ごめん。素朴な疑問なんだけど、電話じゃダメなの?」
亮司から報告を受けた雪穂が尋ねる。
「電話番号知らないんだって。
 それにこういうことは、ちゃんと顔を見て言いたいんだと。
 明日二人が会わなきゃいいだけの話だよ。」
「そうすれば運命だと思って、私と結婚して下さるわけだ。」
「雪穂もこの結婚したいんだろ?」
「そうだよ。2年かけてここまでこぎつけたんだし。
 亮だって私に幸せになれって言ったじゃない。」
「雪穂は適当に高宮を引き止めておいてよ。
 俺は三沢千都留をホテルに泊まらせないようにするから。」

笹垣は、雪穂の結婚式に亮司が来るのではと睨んでいた。
「手帳は使わんで行ってくれるか。」
上司に言われ、笹垣は警察手帳を預けた。

「あんたは、もしかしたら、結婚せーへんかもなって思ってたから。
 家族が、ええもんやっていうことを、
 ちゃんと教えてあげられなかったような気がしてて。」
そう言い涙ぐむ礼子。
「大丈夫だよ。私、ちゃんと幸せになるよ。」
雪穂はそう言い微笑んだ。

千都留がお礼にくれたものは、ラルフローレンのハンカチだった。
それを見つめたあと、ポケットにしまう高宮。
そこへ、雪穂がやって来た。
「何びっくりしてんの?」雪穂が聞く。
「あれ?来るの、明日じゃなかったっけ?」
「新婚旅行に行くのに買い忘れたもの思い出しちゃって。
 買い物、付き合ってもらえない?」
「俺、今日、会社に行く用があって。」
「じゃあ、一緒に行って待ってるよ。」
「・・・ちょっと待ってて。会社の人に、電話してくる。」

「そうなんですよ。雪穂に捕まっちゃって。
 場所、連絡入れるんで、食事が終わったぐらいに、
 偶然会ったふりして、俺のこと、連れ出してもらえませんか?」
篠塚にそう頼むのを、雪穂はドアの外で聞いていた。

引越しの荷物を送る千都留を見張る亮司。

「本当はね、買い物なんかないの。
 独身最後の日だし、デートしたいなと思って。
 ダメだった?」
「そんなことないよ。」
何事もないように寄り添い歩く高宮と雪穂。
その時、実家から雪穂に電話が入る。
この電話は、亮司から!?

雨の降る中、千都留が出てきた。
亮司が車で彼女を追い越す。

食事を終えた雪穂と高宮が店を出ると、篠塚が車から声をかける。
「篠塚さん、どうしたんですか?」
「これからこっちに来ている永明のヤツラと飲むんだけどさ、
 お前ちょっと顔出せよ。」
「じゃあ、私も!」
「だーめ。ダンス部の集まりじゃないし。
 唐沢には秘密の話もあるの!」
「悪いな、雪穂。」
「わかりました。」
高宮が篠塚の車に乗り込む。

雪穂の携帯が鳴る。
「ごめん。高宮そっちに行っちゃった。」
「俺今ホテルのロビーに着いた。
 三沢千都留ももうすぐ着くはずだから大丈夫。
 来た!あとで電話・・・!!」
亮司はある人物の姿に固まる。笹垣だ!
「どうしたの?」
「笹垣が・・・」
「逃げて、亮!」

笹垣が、自分の背後を通り過ぎていく。
「大丈夫。何とかする。」
「いいから!亮が捕まったら、」
亮司は電話を切ってしまった。
「こんな結婚、何の意味も・・・」雪穂が呟く。

笹垣の様子を伺う亮司。
その時、千都留が横切った。

タクシーに忘れた傘を引き取りに戻った千都留。
「すみません。こちらにお泊りの方ですか?」亮司が声をかける。
「そうですけど。」
亮司が警察手帳を見せる。
「突然のお願いなんですが、お部屋を譲っていただくことは
 出来ないでしょうか。
 さきほど、こちらのホテルに、指名手配犯がチェックインしまして、
 我々としては、監視しているのですが、部屋がいっぱいでして。」
「そうですか・・・。」
「代わりと言っては何ですが、アトランティックホテルにお部屋を
 ご用意させていただくということでは、」
「アトランティックホテル・・・ならいっか。」
千都留はそう言いタクシーに再び乗り込む。
「ありがとうございます。
 キャンセルは私どもの方でいたしますんで。
 お名前をいただけますか?」
「三沢千都留です。」
「ご協力感謝します。」
「雨の中大変ですね。」
「いえ。恵みの雨ですよ。それでは。」
亮司はタクシーを見送り、電話を取る。

「三沢千都留という女性がチェックインしているはずなんですが。」
笹垣がチェックインしている横で、篠塚と高宮がホテルマンに尋ねる。
丁度その時、三沢千都留のキャンセルの電話が入る。
千都留がキャンセルしたと知りがっかりする高宮。
「雪穂と、結婚する運命だったってことですよ。
 ちょっと、トイレに行ってきます。」

笹垣がその言葉を聞き逃すはずがなかった。
「あの、あの方、唐沢雪穂さんと、一緒になられる方ですか?
 この男は、桐原亮司と言います。見かけたことはありますか?」
そう言い亮司の写真をポケットから取り出す。
「知りません。」戸惑いながらも答える篠塚。
「私、笹垣と言います。見かけたら、連絡下さい。」
写真の裏には笹垣の名前と携帯番号が書いてあった。
笹垣はそれを無理やり篠塚に押し付けて立ち去る。
「この人と唐沢、何かあるんですか?」笹垣を呼び止めて尋ねる篠塚。
「幽霊みたいなもんですわ。雪穂さんにとりついてる。
 雪穂さんの為にも、よろしくお願いします。」
「幽霊・・・。」

雨の中、タクシーに乗り込みクイーンホテルへ急ごうとする雪穂。
そこへ亮司から報告の電話が。亮司の声にほっとする雪穂・・・。

「こうして、雪穂は結婚した。
 何事もなかったかのように。」

雪穂の結婚式に目を光らせる笹垣。

「俺はずっとこうやって生きていけばいい。
 雪穂にしか見えない、幽霊として。
 それが、俺の幸せなのだから。」

新婚旅行に出かけていく二人を見張る笹垣。

飛行機を見つめていると、隣にいる女性(西田尚美)が携帯に向ってしゃべる
会話が聞こえてくる。
「怒ってないってー。
 はじめからわかっていたことだし。
 私は、幽霊みたいなもんだから。
 邪魔なんかしないよー。
 あなたの幸せが、私の幸せだと思ってる。
 じゃあ・・・奥さんとお幸せに。」
そう言い電話を切ったあと、泣きじゃくる女性を亮司は見つめる。

「だけど・・・」

『投稿者:レットバトラーの幽霊
 俺には幸せにしたい人がいます
 だけど、その人が本当に幸せになってしまったら
 俺を必要とする人がこの世にいなくなってしまう』

掲示板に書き込まれた8番目の投稿を読み上げる谷口。
「レットバトラーの幽霊・・・」

「俺の名前を呼ぶ人は、誰もいなくなってしまう。」

「亮!」
今、日本にいるはずのない雪穂の声が聞こえる。
「亮!」
振り返ると、雪穂がいた。
「何で!?」
「空港でパスポート忘れたふりして、高宮だけ先に行かせたの。
 お返し。高宮のIDとパスワード。
 これで東西電装のネットワークに入れる。
 すごい技術とか、特許とか持ってる会社だから、
 いただける物は何かしらあると思う。
 それ手土産に持っていけば、経歴とか怪しくても、
 どっかの会社に潜りこんだり出来るよね!
 それ、亮の役に立たないかな?」
「こんなものの為に高宮と結婚したの?」
「あと・・・お金。
 約束したじゃない。
 亮が私にしてくれたことを、全部返すって。
 私みたいな小娘が金作るには、金持ちと結婚して、
 離婚するしかないしね。」
亮が悲しそうにIDを投げ返す。
「もういい加減普通に幸せになってよ。きりがないから。」
「この結婚は、売春なんだよ、私にとって。
 そんなこと、考えもしなかったけど、
 結局やっていること同じじゃないかって、
 昔の私に責められたりして。
 言われてみれば、ごもっともだよね。
 一緒なんだよ、亮。
 亮の幸せが、私にとって、免罪符なんだよ。
 もういいじゃない。ここまで来てカッコつけなくて。
 亮がやったことは、私の為にしてさ、
 私がやったことは、亮の為にしてさ。
 そうやって、やったこと、正当化しまくって生きていこうよ!」
「最悪だよ、それ。」
「元から最悪じゃない、私たち。」
「雪穂も、何もかも失うかもしれないよ。」
「元から何も持ってない。
 亮以外!
 だから、もう幽霊は止めて。
 私に約束守らせてよ。」
雪穂が亮司の手を掴み、自分の方へと引き寄せる。
そして、笑顔で言った。
「お帰り!」

「なあ、雪穂。
 俺たちは醜かったな。
 誰もが目をそむけるほど醜かったな。」

「ただいま。」亮司が嬉しそうに笑う。

「だからこそ、誰もが突き放すその醜さを、
 お互いに抱きしめようと決めたんだ。」

辞表を提出した笹垣が亮司の母・弥生子(麻生祐未)を訪ねる。
弥生子は一人酔いつぶれていた。
「亭主と愛人、息子に殺されてもうたら、
 さすがにそうなるやろなー。」
「うちは、ちゃんと協力してますよー。」
壁には松浦指名手配のポスターが貼ってある。
『笹垣探偵事務所』と書かれた名刺を差し出す笹垣。
「息子に会いたくなったら、電話してこいや。
 念仏は浄土に生まれる種や、地獄に落つべき業や、
 総じて存知せざるなり・・・」
笹垣の唱える歎異抄を叫び声でかき消す弥生子。

雪穂は高宮に、友人と一緒にブティックを開いてもいいか尋ねる。
「ダメじゃないけど、お金とかは?」
「それは大丈夫。
 そんな大げさなお店やるわけじゃないし、
 私は少し貯金を出す程度だし。」
「じゃ、いいか!」
「それでね、店舗探しているんだけど、
 誠さんのお父さんって、青山にビル持っていたよね。」

そして亮司は、MEMORIXという会社で秋吉と名乗り、
主任として仕事をしていた!
白夜行 第八話
『泥に咲いた花の夢』

「俺たちは、醜かった。
 誰もが目をそむけるほど、醜かったな。
 だからこそ、誰もが突き放すその醜さを、
 お互いに抱きしめようと決めたんだ。」

2年後ー
2004年冬 東京
亮司(山田孝之)はMEMORIXで秋吉と名乗り、システムエンジニアとして
働いていた。
仕事が速くて助かる、と顧客に誉められる亮司。

「秋吉さんって、ここに来る前何していたんですか?」
同僚の女性が聞く。
「ん?・・・幽霊。」
「は!?」
「お化け屋敷のバイト。」
「ふざけないで下さいよー。
 あの、金属加工エキスパートシステム作ったのって、 
 秋吉さんなんですよね。」
「そうだよ。」

「2年前、俺は雪穂の夫の勤める、東西電装から、
 開発途中の社内システムの雛形を盗み、
 MEMORIXに持ち込んだ。
 やり手のベンチャー社長は、怪しいのは承知でこの話に乗った。
 アレンジを施せば、盗用を立証することはほとんど不可能。
 いざとなれば、知らなかったと俺を切って捨てれば済む。
 賢い社長はそれ以上何も聞かなかった。

 雪穂は、高宮の持ちビルの店舗で、
 友人と一緒に会員制のブティックをやっていた。
 永明大学ソシアルダンス部のつながりを利用して、
 開拓した顧客層は、
 自分の為に使う金を全く惜しまない人たちだった。
 ただ一つ問題は、高宮が、雪穂の嫌がらせにもめげず、
 離婚を言い出さないことだった。」


夜の11時過ぎに帰宅する雪穂(綾瀬はるか)。
高宮(塩谷瞬)は一人怒ったように酒を飲んでいた。
「ただいま。ご飯は?
 ・・・すぐやるね。」
そう言い買ってきたお惣菜を並べる雪穂。
「言いたかないけどさ、あの店始めるときに言ったよな。
 家のことはちゃんとやるって!」
「最初は、そのつもり、」
「大体!何の実績も無い君らが、あの店借りられたのは
 誰のおかげだと思ってるんだ。」
「誠さんのおかげだって、わかって・・・
 私、ダメな女だよね。
 誠さんとの約束全然守れなくて。
 子供だって出来ないし。
 ほんと、何一つお返しできなくて・・・情けない・・・。」
「そこまで言ってないだろう。」
「ごめんなさい。」
泣きまねをして部屋にこもった雪穂は大きなため息をつく。
自分の指の結婚指輪を見つめながら、自分が言った言葉を思い出す雪穂。
「この結婚は、売春なんだよ。私にとって。」

亮司は探偵を使って調べたC.Mの調査報告を、転送する。
C.Mこと三沢千都留(佐藤仁美)がイーグルゴルフクラブで撮られた写真・・・。

亮司からメールを受け取った雪穂。

「見た?」亮司が公衆電話から雪穂に電話する。
「うん。ありがとう。調べてくれて。
 三沢千都留、帰ってきてたんだね。」
「田舎で見合いするの、上手く行かなかったようだな。」
「お付き合いしている方も、いらっしゃらないみたいね。」
「だけど雪穂さー、そんなに焦って離婚することないんじゃない?
 結婚年数長い方が金だって有利なんだろ、離婚って。
 もう一回高宮と会ったって、同じ気持ちになるかわからないだろ?」
「そうなんだけどね。
 金だけじゃない私も、少しはいるのよ。
 とりあえず、二人をゴルフ場で引き合わせてみるよ。」
「困ったことがあったら言えよ。」
「うん。ありがとう。」

「なあ、雪穂。
 たとえ別人として生きていても、俺は満足だった。
 あなたがくれた世界は、俺には充分明るかったから。
 だからこそ、わからなくなったんだ。
 あなたが、これ以上何を求めているのか。」

ショップを掃除する雪穂は店舗の看板を見て立ち止まる。
いつものように雪穂を見張る笹垣の表情が変わる。
「もう少し・・・。」
険しい表情で店の看板を睨むように見つめる雪穂。
持っていた雑巾をぎゅっと握りしめる。

同僚と街を急ぐ亮司は、視線を感じて振り返り・・・。

雪穂は高宮と一緒にイーグルゴルフクラブでレッスンを受けることに。
受付を待つ間、千都留の姿を探す。
そこへ千都留がやって来た。
雪穂は電話が入ったふりをして入り口へと向い、
わざと千都留のゴルフバックにぶつかる。
「すみません!」
「大丈夫ですか?」
その声に振り返る高宮は、千都留と目が合い見詰め合う。
「誠さん、ごめん。
 店にアポなしで、私の担当のお得意様が来ちゃったみたいなの。
 どうしても行かなきゃいけなくなっちゃって。ごめん。」
「仕方ないなー。」
「私行くけど、どうする?」
「せっかく来たんだし、試しに受けていくよ。」
「そう。じゃあ私行くね。ごめんね。」
雪穂は千都留をちらっと見て立ち去った。

笹垣探偵事務所に古賀の妻が、旅行のお土産を届けにやって来た。
ふと目にしたノートの表紙に、『桐原亮司・唐沢雪穂』と書いてある。
古賀の妻が驚く。
「こちらに出てきてる、唐沢雪穂の周辺の人間探ったりしとるんですが、
 なかなか手帳がないと、やりにくいもんですわ。」
笹垣(武田鉄矢)が言う。
「どうして、ここまで。
 そりゃ、古賀の敵は取って欲しいですけど。」
「私も、もうわからんようになってしまったんです。
 こいつら、どないしたいんか。
 周りの人間まで巻き込んでしもうて。」
そう言い頭を下げる笹垣。
古賀の妻が頭を横に振る。
「あの、桐原亮司は、東京にいるんでしょうか?」
「は?」
「私だったら、もっと遠くに逃げるから。」
「エビは、ハゼのそばにおると、相場が決まっているんですがなー。」

亮司がコンビニで弁当を買うそのあとを、誰かが尾行していた。
亮司は携帯を取り出し、165番に登録したメモリックスに電話をかける。
「秋吉ですけど。」


2年前、傘のお礼にと、千都留に貰ったハンカチを見つめながら酒を飲む高宮。
そこへ雪穂が戻ってきた。
「ただいま。」
「お帰り。」
「ご飯は?・・・食べてきたっぽいね。」
「うん。昔会社で一緒だった、三沢千都留さんって人と
 偶然会ってさ。」
「誠さん、ごめん。私、通えなくなっちゃった。」
「え?」
「やっぱり土曜に私が抜けると、いろいろ問題が起こるみたいで。」
「そう。じゃあ俺もやめる。」
「・・・あ、そう。なんだ。楽しくなかった?ゴルフ。」
「一度産婦人科行かない?
 一緒に不妊検査受けよう。」
「・・・なんで?急に。」
「三沢さんに、雪穂の話したら、
 バリバリ仕事したいなら、早く産んで、早く復帰出来る様にしたら、
 結局は雪穂のためなんじゃないかって。
 俺もやっぱり一人ぐらいは欲しいし、雪穂も、昔は欲しいって
 言ってたじゃない。」
「そりゃ・・・言ったけど・・・。」


「東西電装に企業調査?」メモリックス社長が言う。
「芝居、下手ですね。」亮司に言われ社長が笑う。
「クライアントが不安がって電話をかけてきたよ。
 あれはうちのオリジナルってことでいいのかって。」
「オリジナルです。著作権は主張出来ないはずですから。」
「まあ東西電装もその辺のことはわかっているだろう。
 尾行が付いているんだったら、お前が持ち込んだって目星が
 ついているはずだ。」
「俺と東西電装の接点ですよね。知りたいのは。」
「身内が手引きしたとなると、いくらセキュリティーを強化しても
 無駄だからな。東西電装さんとしては。」

「興信所は警察じゃない。
 結果が出なければ東西電装も、調査費用を打ち切るだろうし。
 そう大騒ぎするほどのことじゃない。
 だけど、何かの弾みで雪穂にたどり着かれるのは困る。
 必要なのはヤツラが飛びつく、偽の接点。」

会社から出てきた亮司を尾行する男たち。
亮司はわざと引き返すと、男たちが慌てて立ち止まる。
亮司はその横を何食わぬ顔で通り過ぎていった。

爪を噛みながら夫の携帯を見つめる雪穂。
その時、自分の携帯が鳴る。亮司からだ。
「どうだった?そっち。」
「ゴルフ場で会わせたまでは良かったんだけど、
 浮気どころか、三沢千都留に知恵付けられて、
 子供作ろうとか言い出しちゃって。
 気が無いわけじゃないと思うんだけど・・・。」
「その話、俺も乗らせてもらっていいかな。
 三沢千都留を、俺と高宮を繋ぐ接点にしたいんだ。」
「接点?」
「そう。」

夜中、千都留の家の電話が鳴る。
受話器をとると、無言のまま電話が切れた。
受話器を置くと、またかかってくる。
相手は無言のままだった。


仕事に出かけていく高宮に雪穂が言う。
「誠さん。不妊治療のことなんだけど。
 あんまり言いたくないんだけど、出来ないのは、
 あの時の中絶のせいだと思うんだ。」
「俺のせいだ・・・って、言うの?」
「そうじゃないけど。
 そんなことで子供が出来ない私がいけないんだけど。」
「今晩話そう、な。」
そう言い高宮は出かけていった。
「今晩ね。」一人になった雪穂が微笑む。

東洋商事の三沢の元に電話がかかってくる。
「おはよう。今着いたんだ。」
「誰?」
「酷いな。忘れたんだ。」
そう言い電話を切ったのは、亮司。
わけがわからず、戸惑う千都留を公衆電話から見ていた。

千都留が自宅に着くと、今度は携帯がなる。
「今帰ったね。」
「あんた誰よ!警察呼ぶわよ!」
「じゃあ、警察に会いに今晩行くよ。」
そこで電話が切れた。

千都留の部屋を見つめながら公衆電話を出る亮司。
尾行の男たちが亮司を見つめる中、亮司は千都留のマンションへと向い、
ポストを開け、そして立ち去った。
男の一人がポストをチェックしに行く。

東西電装から出てくる高宮の携帯が鳴る。
携帯メロディーは「黄泉がえり」主題歌「 月のしずく」?

千都留の家に呼ばれた高宮。
「ごめんね。さすがに怖くって。」と千都留。
「警察には?」
「相手にしてもらえなくって。
 あんた男と揉めただけでしょうって。」
高宮は棚に置かれた自分の傘を見つける。
「まだ使っててくれたんですか?」
「面白い話があってさ。
 私ね、実家に帰る前に、クイーンホテルに泊まるはずだったの。」
「あ・・・覚えてます。」
「でね、その時タクシーにこの傘を忘れちゃって取りに戻ったのね。
 そしたら、その時、ホテルに何かの犯人がいて、
 刑事さんが張り込みの為に私の部屋を使いたいって。
 結局泊まりそびれちゃったんだよねー。」

高宮が家に帰る。
「お帰り。遅かったね。」
「ちょっと会社でトラブルがあって、うん。
 どうしたの?飯なんか作って。」
「子供のこと、話し合おうって朝言ってたから。」
「どうせ遅いと思ったんだよ。」
「本当に仕事?」
怒ったように見詰め合う二人。
「何だよ、その顔。
 大体俺いっつもこうなんだよ。
 一日ぐらい待ちぼうけくらったからって、何なんだよ!」
「・・・そうだよね。
 私が悪いんだよね。
 いつも何もかも、私がいたらないから・・・。
 私みたいなダメな女・・・まともな親になんかなれっこないよね。」
雪穂はそう言い、不妊治療の本を床に投げつけ部屋に篭る。

部屋に篭った雪穂は、大きなため息。
鏡台には、江利子からの結婚報告のカードが置かれていた。


「わざわざ来てくれるなんて。」と江利子。
「一言ちゃんと、お祝い言いたくて。」
喫茶店で江利子の向いに座っているのは、篠塚(柏原崇)。
「旦那さん、電機メーカーの事務屋さんだって?」
「ボールみたいな人なんです。丸くって。」
二人が笑う。
「あれから、人のこと信じられなくなって、
 何で私だけがって。
 ぶつけて受け止めてくれたのが、今の夫なんです。
 僕はそのためにデブに生まれてきたんだよって。
 ヘンな人でしょ?」江利子が笑う。
暫く無言の篠塚。
「篠塚さん?」
「おめでとう、江利子。」篠塚が優しくそう言う。
「篠塚さんは?いい人いないんですか?」
「俺?俺はね・・・
 気になって仕方が無い人は、いるけどね。」

「高宮、あれから三沢千都留とはしょっちゅう連絡取ってるみたいだよ。
 相変わらず家には帰ってくるけど。亮の方は?」
店の電話で雪穂が言う。
「上手く進んでいると思うよ。」公衆電話から亮司が答える。
亮司は相変わらず男たちに見張られていた。
「明日から買い付け旅行だから、そこで駄目押しの・・・」
店の窓から道路の向こう側の公衆電話を見つめる雪穂。
「駄目押しの?」
「最近、笹垣がいないの。」
「ほんとに?」
「油断は出来ないけど。」
「・・・」
「亮?」
「ごめん。あいつがこのままいなくなったらなって
 都合いい事考えちゃった。
 あるわけないのにな。」
「そしたら、一緒に太陽の下歩けたりしてね。」雪穂が嬉しそうに言う。
「そんなこと言ってたこともあったな。」
「ね!」
「じゃあ。」
亮司が電話を切った。
雪穂は外の公衆電話を見つめ、爪を噛む。

=メモリックス=
結婚相談所ブライダルサポートのウェブページのアドバイスをする亮司。

その頃、篠塚は探偵になった笹垣の事務所を訪ねていた。
「唐沢雪穂と桐原亮司がですか。」
「僕の友人が遭った事件と、関係があるかもしれないんです。」
「そうですかー。」
「桐原亮司って男、捜してらしたんじゃ?」
「あの二人に関わると、ろくなことにならんのですわ。」
笹垣は古賀の家族写真とその前に供えたご飯を見つめて言う。
「触らん方がええとちゃいますか?」と笹垣。
雪穂は翌日から一緒に買い付けに行くショップの共同経営者を
自分の家からの方が便利だからと泊まっていくよう誘う。
「ダンナは?大丈夫?
 実は私苦手なんだよねー。高宮さん。」
「そうなの!?」
「理解があるような顔してさ、
 一皮むけば亭主関白っていうか。
 何だかんだで、こういうことしてご機嫌とらなきゃいけないわけでしょー。」
店の看板に彼の名前が入っていることを友人は言う。
「そんなことないよ。いい人なんだよ。」

その頃高宮は千都留の家にいた。
「ありがとう。心配してもらっちゃって。
 いたずら電話、ぱったり止んだから。」
「そうですか!良かった。」
「ほんとに、迷惑かけてごめんね。
 奥さんにも謝っておいてね。」
「仕事忙しくてもう忘れていると思いますよ。
 あの人は結局、俺がいてもいなくても同じだし。」
「私が頼んだってちゃんと説明しに行こうか?」
「そういうことじゃないんです!」

ウイスキーを流しに少し捨てたあと、篠塚製薬の催眠鎮静剤
ナロボン2mgをスプーンの背で潰す雪穂。
そして潰した薬をウイスキーの瓶の中に入れ酒と混ぜ、それを棚に戻した。

高宮が帰ってきた。
「ただいま。早いね、今日は。」
「ごめんね。今手が放せなくて。
 明日から一週間買い付けなの。イタリアに。」
「は!?」
「お邪魔してます。」共同経営者が顔を出す。
「どうも・・・えっと・・・」
「小竹です。一緒に店をやっている。」
「明日から一緒に出かけるから、今日は泊まってもらおうと思って。」と雪穂。
「俺、何も聞いてないんだけど。」
「あなただって、私に仕事の予定なん匹ぅ隶ぅ裂预铯胜い扦筏纭?br> あ、食事買ってきてあるから、適当に食べて。」
テーブルの上にはお弁当が一つ。
「リョウコ、私ちょっとコンビニ行ってくるけど、
 買い忘れたものとかある?」
そう言い同僚に微笑む雪穂。

亮司は惣菜ショップでコロッケを買っているとき、店にいた女性客に
見覚えがあることに気付く。
「幽霊みたいなもんだから。」
そう言い泣きながら別れの電話をしていた女性。
二人の目が合うが。が、女性は覚えていない様子だ。

亮司の携帯が鳴る。
「亮?」雪穂からだ。

睡眠薬入りの酒を一人わびしく飲む高宮。
そこへ雪穂がやって来た。
「ごめん。テレビの音小さくしてくれる?
 リョウコもう寝たみたいだから。」
「聞こえないだろ!」
「うるさいから言ってるの。」
雪穂はそう言い乱暴にリモコンを操作し、冷たく高宮を睨む。
「何だよ!」
「いいわね。毎日早く帰ってテレビ見て、お酒飲んで。」
「悪いのかよ!?」
「だからいいわねって。」
「言いたいことがあるならはっきり言えよ!」
「あなたには夢とかないのかなーって。
 野心とか向上心とか。
 何の努力もしないで、毎日毎日同じことを繰り返して。
 自分で情けないと思わないのが不思議なだけ。」
「じゃあお前は何なんだよ!
 俺の親のスネかじって店やってるだけじゃないのか!?」
「ちゃーんと家賃も保証金も払ってると思うけど。」
「誰のおかげで店始められたと思ってるんだよ!」
「あなたのお父さんのビルでしょ!」
雪穂は高宮の握る拳が怒りで震えているのを確認する。
高宮は怒りをぶつけるように酒を煽りはじめる。
「ほどほどにしないと、明日響くわよ。」
雪穂はそう言い部屋を出ていった。

早朝、亮司を高宮の眠る部屋に案内する雪穂。
「大丈夫なの?」亮司が聞く。
「大丈夫。酒と薬で漬けてあるから。」
「で、俺は何をすればいいの?」
「私のことを殴って。高宮が暴力をふるったことにしたいの。」
「・・・浮気で充分じゃないの?」
「何があるかわからないから。
 バレたら不利になるような嘘もいろいろついてるし。
 出来るだけ、離婚に強い材料が欲しいの。
 この結婚は売春なんだから、お金貰わなきゃなんの意味もないの。
 本気で。」
雪穂の真剣な眼差しに、亮司は拳を握り締め・・・
そして雪穂を思いっきり殴った。

雪穂が吹き飛ぶ物音にリョウコが目を覚ます。

午前8時の目覚ましで高宮が目を覚ます。
頭痛で頭を押さえる高宮。
体を起こすと、雪穂が鏡台の前に座り鏡を見つめている。
左目に眼帯をつけて・・・。
「どうしたの?それ。」
「覚えてないの?」
「覚えてないって・・・」
「ずいぶん飲んでたもんね。」
雪穂が眼帯を外して見せる。
「どうしたの!それ!!」
「あなたがやったんじゃない。」眼帯を元に戻しながら雪穂が言う。
「嘘だろ!?」
「リョウコに聞いてみれば?
 あなたが暴れたの聞いているから。」
「それが本当なら・・・ごめん。」
「腹が立ったら暴力だなんて、どこまで幼稚なのよ!」
雪穂はそう言い立ち去り、ドアの向こうで微笑んだ。

ゴルフ場のソファーで落ち込む高宮に、千都留が声をかける。
「高宮君!?どうしたの?」
「もうだめです・・・俺・・・。
 無理です・・・。」
そんな二人の様子を亮司が見張っていた。

そして、その亮司を見張る男たち。
男たちの関心は、亮司から、高宮と千都留へと移る。
亮司は小さく微笑を浮かべ、ゴルフ場を立ち去った。

=東西電装=
「三沢千都留はかつて、派遣社員として、東西電装の特許ライセンス部で
 働いていました。
 そしてその時期は、秋吉がメモリックスにシステムを持ち込んだ時期と
 ほぼ、一致しますね。」
「二人が、高宮を利用して、システムを盗んだ可能性があります。」
亮司を尾行していた男たちが、東西電装役員にそう報告する。

「こうして疑いの矛先は、高宮と、三沢千都留に移り・・・
 何の結果も出ない調査に、東西電装は見切りをつけたようだった。」

オフィス街を歩く亮司は、後ろを振り返ってみる。
そして、曇り空の下、思いっきり伸びをしたあと、笑顔を浮かべて歩き出した。

「そして、雪穂は・・・
 不倫と暴力、妻の妊娠能力に対する暴言を並び立て・・・」

雪穂の弁護士が、千都留の家を訪ねていく高宮の写真を突きつける。
「こちらの写真に、心当たりはありますね?
 元同僚と不倫、妻への暴力、自分の都合で中絶させたにも関わらず、
 妊娠しにくくなった彼女に対する数々の暴言、
 以上の事実に相違ありませんね。」
高宮が雪穂を見つめる。
「何?」
「何でもない。」高宮がそう穏やかに言う。
「先生、これからの手続きなんですけど。」

喫茶店で篠塚と会う高宮。
「お前も弁護士立てれば良かったのに。気前良すぎだろ。」と篠塚。
「俺ね、雪穂がみじめに見えちゃったんです。
 弁護士引き連れて、事実を都合のいいように捻じ曲げて、
 金の要求して。
 こいつもう、金しか頭に無いんだなって。
 そういうの、哀れに思えて。」

その会話を、隣の席で亮司が聞いていた。

夕焼けを見つめる亮司。
雪穂を殴った拳を見つめながら、その時のことを思い浮かべる。
高宮の今さっきの言葉。
雪穂の今までの言葉。
「俺がやらせたようなもんだよなー・・・。」
そう呟く亮司。

夜、雪穂がショップに行くと、ソファーで横になっていた亮司が飛び起き、
笑顔を見せる。
「どうしたの?」
亮司がCDを差し出す。
「何これ?」
「株の情報。
 この口座の金で、そこに入っている銘柄、買ってよ。」
そう言い通帳を差し出す。
「これで汚い金なくなるだろ。」
「なるほどね!」
「雪穂、これからはまともに店だけやってよ。」
「何?急に。」
「俺は大して金なんていらないし、
 どうにでも生きていけるしさ。
 だからもう、」
「みじめだと思ってるんでしょ、私のこと。
 がつがつ金に目の色変えてって。
 平気よ!別に誰がどう思おうが。
 もう世間なんて関係ないって言わなかったっけ。
 それに、夢も叶ったし。」
「夢?」
雪穂がショップのタグを見せる。
「ここはさ、友達に無理言って、共同経営者になってもらって。
 店のコンセプトも、営業も経営も仕入れも、
 全部一から私が考えて、そうやって作った店なの。
 高宮になんか、一円の金も知恵も出してもらってない。」
そう言い服に付いたタグを引きちぎる雪穂。
「それでも、こんな名前にしなきゃいけなかった。」
雪穂がタグを投げ捨てる。
「追い出されない為には、媚びるしかなかった。
 気付いたら、笑っちゃうほど昔と一緒でさ。
 お金の為に体売って、嫌われないように媚びて、
 そもそも私、何がしたかったんだっけって・・・。
 やっぱり、もう一度亮と太陽の下歩くんだよ。」
「そんな夢みたいなこと・・・」
「夢かな。
 夢なのかな、亮。」

谷口真文(余貴美子)が掲示板の書き込みを読む。
「私は離婚しました
 これでやっと、かけがえの無い人と
 手をつないで歩くことが出来ます
 もう二度と失わない
 やっと手に入れた私の故郷、原点
 這いつくばっても守るべきタラの大地
 スカーレットの末裔」

雪穂はショップの名前を『R&Y』と変え、
そしてあの太陽の切り絵を店のモチーフに変え、
笑顔で接客をしていた。

道路の向こう側から、店の新しい看板と、雪穂の笑顔を見つめる亮司。

「いつまでも生きたいと思った。
 いつ死んでも構わないと思った。
 俺は幸せだった。」

職場に戻った亮司は、雪穂がくれたケースからあのハサミを取り出し
見つめる。
「ありがとう。またな。」
笹垣の声を思い出し、それを振り切るようにハサミをケースに戻す。
夜景を見つめ

「けれど、太陽は・・・
 俺たちを許すはずがなかったんだ。」

篠塚がR&Yの前にいた。
「こんにちは。どうしたんですか?」
「店の名前、変えたんだね。」
「新しい気持ちで出直そうと思って。」
「Yは、唐沢だよね。 
 Rは?」
「・・・リョウコです。
 二人の店なんで。」
「そうか。」
そう言い立ち去る篠塚の背中を、雪穂は険しい表情で見つめる。

「お宅もしつこいお方ですなー。」笹垣が訪ねてきた篠塚に言う。
「唐沢雪穂の新しい店の名前、知ってますか?
 R&Yっていうんです。」
笹垣の表情が変わる。
「結婚も離婚も、このために、仕組まれたものだったとは
 思いませんか?」
「せやったとしても、現実的に罪に問えるようなことじゃないでしょう。
 前にも言うたとおり、あの二人にはもう関わらんほうが、」
「もう、関わっているんです!
 川島、江利子さんと言います。」
「ああ・・・唐沢雪穂の高校時代からの友人の。」
「ええ。ほんの少しの間、僕の恋人だった女性です。
 大学時代、強姦事件に遭いました。
 彼女が幸せになるまでは、黙っておこうと決めてました。
 あの二人は、どういう関係なんですか?」
「テッポウエビって知ってはりますか?
 テッポウエビは、深ーい、暗い穴掘って、その中で生きておるんですわ。
 なのに、その穴の中に、居候してるやつがおる。」

「篠塚が、何か気付いているかもしれない。」
雪穂が店の外の公衆電話から亮司に電話する。
「・・・」

「魚のハゼですわ。
 その代わりハゼは普段は、穴の入り口におって、
 敵が来たら尾ひれを振って、テッポウエビに知らせるんですわ。
 相利共生、言うらしいですわ。
 お互い、生きていくために、協力しあっているというわけです。」
「相利・・・共生・・・。
 この事件、調べてもらえませんか?
 二人が関わっていたのか、
 もしそうならば、その理由です。」
そう言い江利子の結婚を知らせるはがきを差し出す篠塚。
「何の為に?」
「俺の為ですよ。」
笹垣が、微笑み、ハガキを手に取る。
そしてまたあの頃のような険しい表情に戻った。

雪穂の実家の庭のサボテンが、6個に増えていた。

亮司はブライダルサポートのに登録したメンバーに、
「幽霊」と言い泣いていた女性、栗原典子を見つける。
職業は、帝都病院の薬剤師。

「なあ・・・雪穂・・・。
 いつ死んでも構わないと思ったんだ。
 俺は幸せだったから。」

典子(西田尚美)のマンションのゴミ捨て場で座り込む亮司。
典子が声をかける。
「あの、大丈夫ですか!?
 救急車、呼びましょうか?」
亮司が手を小さく振る。
「あの・・・でも・・・」
そう言い立ち上がる典子の腕を、亮司が掴んだ。
「じゃあ、酒・・・
 酒、くれる?」そう言い亮司が笑う。
「酒って・・・。」

「いつ死んでも構わないと思ったんだよ。」

雪穂のショップの前に、母・礼子(八千草薫)が立っていた。
母に喜び駆け寄ろうとする雪穂。
だが、母の表情に足が止まる。

喫茶店にいる江利子の前に、笹垣がやって来た。
笹垣に会釈され、戸惑うように会釈を返す江利子。
笹垣が、江利子へと歩み寄る。
そしてもう一度会釈し、微笑んでみせた。
白夜行 第九話
『こぼれ落ちた過去』

「なぁ・・・雪穂。
 俺は幸せだったから、いつ死んでも構わないと思ったんだ。」

2004年冬

栗原典子(西田尚美)は自分の住むアパートの前で座り込んでいた
亮司(山田孝之)に白湯を持ってきて飲ます。
病院に行った方がいい、と言う典子の腕を掴んで止め、
「大丈夫そうなんで。ありがとうございました。」
亮司はそう言い咳き込みながら立ち上がり、典子に背を向け歩き出す。
小さく笑いながら・・・。

笹垣探偵事務所前。
亮司は新聞受けに新聞が溜まっていることを確認すると、
鍵の業者に電話をする。
「すいません。カギ失くしちゃって。
 笹垣と申しますが、入れなくなっちゃったんです。」

上手く部屋に上がりこんだ亮司。
綺麗に整頓された部屋。
カレンダーには11月23日から30日まで、布施、と線が引いてあった。

篠塚(柏原崇)から江利子(大塚ちひろ)の強姦事件を調べるよう依頼を受けた
笹垣(武田鉄矢)、
「わかりました。1週間いただけますか?」と引き受けた。

笹垣は江利子に会いに行き、笑みを見せながら名刺を差し出す。
『株式会社繊維研究所
 編集部・ライター
 笹垣潤三』
「あの・・・電話で話したと思うんですけど・・・」
「雪穂の高校時代のことですよね?」
「はい、はい。
 このたび唐沢雪穂さんを私共の方で特集やろうという話になりまして、
 私、取材しておったんですけども、
 妙な噂を聞いてしまって。
 それが本当だったらその特集止めておこうって、編集部のほうから。」
「妙な噂って?」
「唐沢雪穂さんと、あなたが目撃なさった暴行事件。
 聞くところによると、唐沢雪穂さんの生い立ちについて
 学校中に広まって、それを広めた張本人に、唐沢雪穂さんが
 暴行事件を仕掛けた。
 元クラスメートで、そう言っておられるかた、おられますよね?」
当時の新聞の切り抜きと、雪穂への嫌がらせのメモを見せる笹垣。
「そういう噂もありましたけど、女子高生の妄想ですよ。」
動揺を抑えながら答える江利子。
「だけど、実に不思議な手口だったらしいですな。
 暴行された写真が送りつけられてきたのに、
 強姦された痕跡がなかった、ゆうようなね。
 口封じのための犯行やないか、というような、ええ。」
江利子は笹垣の言葉を聞きながら、自分の身の上に起きたことと重ねる。
「そこまでは私、よく知らないんで。」
だが笹垣はカップを握り締める彼女の震えを見逃さなかった。

江利子が帰ったあと、江利子の話をノートに書き込む笹垣。
礼子(八千草薫)が言っていた、雪穂には気になる人がいるらしい、という
言葉を思い返す。

ある日、雪穂を心配した礼子がやってきた。
「なんか・・・怒ってるよね?
 何か、あったの?」
「何かあったんは、あんたの方よ。」
礼子は高宮(塩谷 瞬)の母親から電話があり、雪穂の離婚を初めて知ったのだ。
「ま・・・元気そうやな。」
「それ心配してわざわざ来てくれたの?」
「半分はヒルズ見物やけどな。」
二人が笑いあう。

雪穂は亮司に礼子が来たのは離婚を心配してだけのようだと電話で
報告する。
「そっちは?」雪穂が聞く。
「企業調査の話は蒸し返されてないし、
 篠塚が笹垣に頼んだのは、高宮絡みじゃないな。」
「・・・江利子か。
 ごめんね。私のせいだ。」
「そう思うなら店しっかり守って。
 笹垣は俺が何とかするから。」
亮司はそう言い電話を切る。

笹垣の恐ろしい笑みを思い浮かべる亮司。
次に思い浮かんだのは、「幽霊みたいなもんだから。」と言った典子。

亮司は以前会った総菜屋で典子に声をかけた。
「すいません。
 やっぱりそうだ!
 夕べはありがとうございました。」
「もう、大丈夫なの?」
「今から、一緒に食事でもしませんか?」
惣菜を指差し亮司が言う。
典子が笑い、亮司も又微笑んだ。

公園のベンチで惣菜を広げる二人。
「典子さん、病院の薬剤師やってるんだ。」
「手に職つければどうなっても生きていけるって、親が。
 生きてはいけるけど、行き遅れちゃった!
 秋吉君は?何やってんの?」
「システムエンジニア。今日でもう辞めちゃったけど。」
そう言い名刺を差し出す。
「小説書こうと思って。」
「どんな小説!?」
「幽霊の話。」
「幽霊・・・」
「どうしたの?」
「私、昔不倫してたことあって、
 その時自分が幽霊みたいだって、思ったことがあるの。」
「・・・そう。」亮司が優しく微笑んだ。

被害者郁子、そして江利子の様子を考える笹垣。
「何でもかんでも強姦や・・・。
 なんでや・・・。
 弥陀の本願 悪人成仏のためなれば・・・。」

公園での食事会が続く。空のビール缶は既に6本並んでいる。
「一緒になるって言葉信じて、金まで貸してたのよ、私!
 300万!!300万!!」そう言い怒りを空き缶にぶつける。
「・・・寒くない?
 寒くない?典子さん。」
「寒い!」
微笑みあう二人。

「なぁ・・・雪穂・・・。
 こぼれ落ちた過去の断片を、全て拾い集めるのは無理だから、
 拾うやつを消そうと思ったんだ。」

川沿いの道を歩く笹垣。
川を一本の白い百合が流れていく。

亮司は典子が眠るベッドの横に座り、雪穂のくれたケースを見つめていた。

「いつか海へ出る、あなたの未来の為に・・・。」


帝都大学病院
典子は同僚に、亮司と同棲し始めたことを話す。
「会社の寮出なきゃいけないって言うから。」
「その人、昼間何してんの?」
「うちで小説でも書いてるんじゃない?」

その頃、亮司は典子の部屋の引き出しなどを探っていた。
そして、『負け犬日記』と表紙に書かれた彼女の日記を見つける。

「またロクでもないのに騙されてるんじゃないの?」
「今回は不倫じゃないし!」
「泥棒だったりして。
 知らない間に預金盗まれて、姿消されてたりして。」
典子に不安が広がっていく。

慌てて帰宅すると、亮司はパソコンに向っていた。
「お帰り。どうしたの?」
「何でも・・・。」典子に笑顔が戻る。
時間をチェックする亮司。まだ5時前だ。
「仕事終わったの?」
「うん!何やってんの?」
「小説のネタで薬のこと調べてるんだけど、
 結構ややこしいね。」
「教えてあげるよ、薬のことなら。」
「ほんとに?助かるよ。」
「何が知りたいの?」
「青酸カリ。」
「え!?」
「小説のトリックで使うんだけど。」笑顔でそう言う亮司。
「・・・そうだよね。」
典子から驚きの表情が消えた。

その頃、礼子は雪穂と高宮の離婚の詳細が書かれた書類を読んでいた。

食事をしながら、雪穂は来年にはもう一店舗出そうと思っていると
嬉しそうに語る。
「お商売好きなんやね。」
「もう、店しかないからね。」
「・・・」

こたつでタバコを吸いながら典子が説明をする。
「青酸カリは、それ自体は安定した物質なの。
 それが胃の中に入って、酸と反応して、青酸ガスになって、
 初めて毒性を発揮するの。」
「飲み物に混ぜて飲ますっていうのは?」
ベッドから亮司が言う。
「現実的じゃないよ。
 独特のにおいがあるから、鼻のいい人はすぐ気付くだろうし。
 舌もしびれるし。」
「ガスを発生させて吸わすっていうのは?」
「犯人が先に吸っちゃって死ぬんじゃない?」
「・・・そうか・・・。」
「雄一君さー、私の体、好き?」
「え・・・好きだよ。」
「じゃあ、何でいかないの?
 たまたまかと思ったけど、ずっと・・だよね。
 私じゃ、ダメってこと?」
「典子さんだけってわけじゃないよ。 
 今までもずっとそうだったし。」
「出来たことないってこと?」
「・・・あるよ。一回だけ。」
「どんな人?」
「絶対妊娠しない相手。」

亮司は花岡夕子の死体を抱いたことを思い出していた。

「男!?」
「男じゃないよ。
 冷たい人だったけど。」
「え・・・冷たい人が好き、なの?
 M系?」
「好きじゃないよ。」
「好きな人とは?」

雪穂とのことを思う亮司。

「・・・何も出来なかった。」
「それ、治した方がいいんじゃないの?」
「きっと残すなってことなんだよ。
 俺の遺伝子なんか・・・。」
「何で?」
「ろくでもないから。」微笑みながらそう答える亮司・・・。

笹垣は菊池(田中圭)に会い、工場へやって来た。
「何で強姦なんか・・・そう思ってな。
 君あん時、桐原にはめられたって言っとったやろ?
 だけど君ハメるにしてはえらい手の込んだことしたと思わへんか?
 あいつ、何か君に恨みでもあったんか?」
「それは・・・わかりませんけど。
 俺、桐原のこと脅してたんです。
 「軽く保護観だったんで、あの時は言えませんでした。すみません。」
「いやいや。脅しのネタは?」
「写真なんですけど、秋吉雄一のおじさんが撮った風景写真。
 けどそこに映ってたのは、桐原の親父と、女の子だったんです。」
「女の子!」
「桐原は、親父の隠し子だって言ってましたけど。
 まあ、ね。
 想像することは、一つじゃないですか。」
「もしかして、その女の子っていうのは、この子?」
雪穂の小学生のアルバム写真のコピーを見せる笹垣。
「後姿だったんで・・・すいません。」

笹垣が弥生子を店を訪ねると、弥生子はまた泥酔していた。
「おい。聞きたいことがあんねん!
 ダンナの愛人、西本文代やのうて、娘の方やったんやろ!?
 息子は!?息子はそれ、知っとったんか!?」
グラスを持つ弥生子の手首の切り傷に気付き、笹垣は目をそらす。
「誰にも言われへんの、苦しいやろな?
 気ー変わったら、電話してくれや。」
そう言いカウンターに名刺を置いた。
弥生子は笹垣が出ていくのをじっと見つめ・・・。

雪穂はブティックをもう一店舗増やす目標で、一生懸命商売に
励んでいた。
DMの発送準備をしていると、礼子がやって来た。
「商売熱心どすな。」
「どうしたの?」
「帰る前に、売り上げに協力してあげよう思ってな。」
雪穂が片付ける姿を心配そうに見つめる礼子。

「お金払ったのに。」
「新幹線代だよ。」
「なあ、一つだけ聞いてもええ?
 あんた、中絶して、それが元で子供できへんってほんま?
 ほんまなんか?」
「・・・でも、それでよかったと思ってる。
 やっぱり、私、自分の子供を愛せないと思うし。
 その代わりっていうのも何だけど、
 店、育てていこうかなって。
 ごめんね。」
「なんか、初めて、あんたの本音聞いたような気がするわ。
 私も子供できへんかったし、
 なんか、妙なとこだけ血がつながってるみたいやな。
 これ、こちらで教室開いてる先生方の連絡先や。
 中にはぎょうさんお金持っていはる方も。
 頑張りなさい!
 それが、あんたの生き方なんやったら。」
礼子の優しさに感謝するように、雪穂は優しい笑顔で母の背中を見送った。
典子の日記を読みながら、携帯を耳に当てる亮司。
『恥ずかしい。
 子どもをおろしたのも』
『同じような暮らしができるわけな・・・
 何の罪もないのに、私はひどい
 結局大事なのは自分だけ』
「そう。お母さんそんな話してたの。」
「あんな風に言ってくれるとは、思わなかった。」公衆電話の雪穂。
「あのさ、子どもが出来ないっていうのは・・・」
「ほんとだよ。
 昔一度、あんまり具合が悪いから病院行ったら、言われたの。
 自然な妊娠はまず無理だって。」
「高宮の時は?」
「ちょっと偽造した。」
「それって昔のこととは関係あるの?」
「どっちでもいいよ、そんなこと。
 それ聞いた時、私、ほっとしたんだから。
 ごめん。くだらないことしゃべって。
 今どこにいるの?」
「メモリックスにいるよ。」
「本当に、平気なの?何もないの?笹垣は?」
「何だかんだ言ったところで、あいつもう刑事じゃないしさ。
 案外このままかもよ。」
「私、頑張るからね、亮。」
「うん。」

電話を切ると、男が話しかけてきた。
「あんた?これ買ってくれるっていう人。」
紙袋を受け取る亮司。中には、硫酸の瓶が。

その瓶を手に歩く亮司。
思い浮かべるのは、笹垣の顔・・・。

亮司は典子に、小説を書くために、本物が見たいから青酸カリを持ってきて
欲しいと頼む。
「置いてあるだろ?典子さんとこみたいな大きな病院なら。」
「あるけど・・・。」
「いい方法を思いついたんだ。見ないと書けないからさ。」
「そんな面倒臭いことしなくても、刺したり殴ったりすれば
 いいじゃない。
 なんで、わざわざ、薬で殺すの?」
「・・・ミステリーだし。」
「別に、普通の無色の粉末だよ。
 アーモンドの実の匂いがして。
 そのくらいわかればいいでしょ?」
「・・・もういいよ、他の人に頼むから。」
「他の人って。」
「前の会社のルート使えば手に入らないこともないし。
 偉そうに心配するようなこと言って、ちょっと手を汚すのはゴメンって
 ことだろ?」
「そういうことじゃ。」
「ペットは飼いたくても面倒はごめんなタイプ?
 結局大事なのは自分だけ?」
典子の顔色が変わる。
「違う?」
典子は財布を手に黙って出て行ってしまう。
「効きすぎたかな・・・。」
彼女の日記を見ながら亮司が呟く。

コンビニでかごを手に取った典子は、目の前の親子連れを見つめ・・・。

典子の嘔吐する物音で目を覚ます亮司。
テーブルの上には食べ散らかしたゴミの山。
「何これ・・・。典子さん!?
 どうしたの、これ!?」
トイレから出てきた典子に亮司が言う。
「うるさい!!」

「気がつけば、もう明日は笹垣が戻ってくる日だった。
 いざとなれば、計画を変更すればいいだけの話だが・・・」

亮司は笹垣家の浴室の換気扇を開き・・・。

あのハサミを見つめる亮司。
父と、松浦を刺した時のことを思う。

「俺はもう・・・リアルな死を感じるのが嫌だった。」

典子は迷いながらも、薬を手に入れ亮司に渡す。
「保管庫には別のもの入れておいたし、
 まず、触る人もいないから。
 本当に、見るだけだからね。」
「怒ってたんじゃなかったの?」
「私ね、子供、おろした事、あるの。
 前の、不倫相手の。
 私一人でも経済的に育てていけないわけじゃなかった。
 ただ、子育てで苦労したり、生活レベル下がったりするのが
 嫌だっただけ。
 雄一君の言うとおり、結局、自分が一番大事だった。
 だいぶ治まったんだけど・・・食べちゃうの。
 いなくなった子供の分、詰め込むみたいに。
 たまに、今でも。
 嫌なんだけど、自分じゃどうしようもない。
 だからね、信じることにした。」
「え?」
「何があったか知らないけど、雄一君、何かものすごく後悔していること
 あるんじゃない?
 だから、他人と命を紡いじゃいけないって、
 体が連動しているんだよ。
 それが、本気の後悔だと、私は思う。
 もう後悔するようなことはしないって、信じてもいいんじゃないかって。」
「ありがと。」
「私も信じてほしいの!
 ペットだなんて思っていないし、面倒だからって放り出したりしない!
 手でも口でも、いくらでも汚してあげるよ。」

唐沢家を訪れる笹垣。
「雪穂はおりませんけど。」
「一つだけ、お伺いしたいことがあるんですけど。 
 昔、雪穂さんには気になる人がおるって言ってはったでしょう?
 その方、篠塚一成さんいう人ですか?」
「大学のサークルの先輩やったら、そうかもしれません。
 はっきりは知りませんので、これで、よろしいですか?」
「ありがとうございます。」
帰っていく笹垣を追う礼子。
「ほんまに、もうええかげん止めてもらえまへんやろか? 
 あの子、やっと自分らしく生きられるようになってきたんです。
 少しは、本音も言えるようになってきましたし。」
「本音ですか?」
「自分の子供を愛せる自信がないって。」
「どうしてそこまで自分のこと、嫌うんでしょう。」
「母親があんなことしでかしたからに決まってますやないか!」
「いや!ほんまにそれだけなんでしょうか。
 あ、失礼します。」

笹垣を見送る礼子。
そこへ近所の女性がやって来て、サボテンの鉢を礼子に託す。

庭に咲く6本のサボテン。

仕事をする雪穂の元に、礼子から電話が入る。
「どうしたの?お母さん。」
「なんでもないの。・・・元気?」
「今ね、お母さんのリスト使わせてもらってる。」
「そう・・・。」
「どうしたの?」
「なんでもないの。
 ちょっと声を聞きたかっただけよ。
 ほなな。」

一つの布団に包まる二人。典子は亮司に背を向けていた。
「典子さんのせいじゃないよ。」
「なーんでダメなのかな・・・。」
「手だよ。
 手が小さい。
 子供の手みたいじゃない?」
「雄一君の手だって小さいよ。」
手をつないだまま語り合う二人。
「焦ることないよね。明日もあさってもあるもんね。」
亮司は幼い頃、雪穂と手をつないだときのことを思い出す。
亮司の父の姿に、慌てて放した雪穂のことを。
「これはバツなんだよ。」
「何の?」
「なんだろう。色々ありすぎて。
 ・・・また明日。」
そう言い亮司は目を閉じた。

「それはきっと、あの日、父親を殺した罰。
 雪穂を置き去りにした罰。
 その小さな手から未来を奪い取った罰。
 暗闇の中、迷いながら、間違いながら、
 雪穂がやっと掴んだ明日を、
 もう二度と失わせるわけにはいかないんだ。」

亮司はぐっすり眠った典子のことを暫く見つめ・・・。

翌朝、亮司は青酸カリと共に消えていた。

近所の人から貰ったサボテンを植えようと庭の土を掘る礼子。
何かに気付き、掘っていくと・・・。

恐ろしいものを見てしまった礼子は、無我夢中でサボテンを植えていく。
雪穂の今までの言葉を思いながら・・・。
そして部屋に戻ろうとした礼子は、その場に倒れてしまった。

亮司は青酸カリを手に笹垣の家の前に立っていた。
その時、雪穂から連絡が入る。
「亮。お母さん倒れたの。」
「え?」
「発見したのは生徒さんなんだけど、
 さっき家に戻ってみたら、
 私の知らないサボテンが・・・一つ増えてる!」
「それって・・・」
「わからない。今は意識不明だから・・・。
 大丈夫だよ。
 そう、祈ってて。」
亮司が笹垣の家の前から走り出す。

家に戻った笹垣は、自分の部屋に異変を感じる。
「やっと、遊びに来たんか・・・。」

篠宮が笹垣を訪ねてくる。
「高宮から、東西電装のシステムが盗まれた話を聞いて、
 気になって、調べてみたんです。」
「秋吉雄一・・・」
「その男、桐原亮司ですよね!?
 一週間前に、メモリックス辞めたみたいですけど。
 その秋吉雄一に手引きしたのは、唐沢じゃないでしょうか?」
「これを、ご自分で調べはったんですか?」
「会社のシステム部に行って、調べてもらいました。
 笹垣さんの方は?」
「ええ。まず、二人がやったと見て間違いないと思います。
 彼らの手口には、独特の特徴がある。
 それを、川島さんに言うたら、明かに動揺してはりました。
 多分、薄々感じてはったんでしょうな。」
「理由は?」
「唐沢雪穂は、あなたが、好きやったんです。
 ほう。あまりびっくりしていませんな。」
「一つの可能性としては、考えたこともありましたから。
 ただ、どう考えても、目的がわからないんです。
 江利子を傷つけたからといって、俺の気持ちが唐沢に
 向くわけじゃないし。
 それなら、普通に接していた方が可能性があるとは考えませんか?」
「最終的には、ただ傷つけたかった、だけかもしれませんなー。」
「そのためだけに、わざわざ強姦ですか!
 ご丁寧に写真まで撮って。」
「それが、人間の魂を奪う一番の確実な方法やと、
 思ってるんでしょう。」
「魂を、奪う?」
「はい。同じ目に合ったことがあるんです、唐沢雪穂は。」
「誰にですか?」
「11歳の時、桐原亮司の父親に。
 多分、母親に売られたんでしょうな。
 11歳の女の子には、売春も、強姦も、同じもんですわ。」
「桐原亮司は、その償いをしたってことですか?
 父親と同じことを、江利子に、することでですか?
 でもそれだけでは、説明がつかないじゃないですか。
 俺には、唐沢が、桐原亮司を守っているようにさえ、
 思えるんです。
 普通なら、もう関わりたくないような男ですよ。
 あなたのおっしゃった、共生する意味が、二人にはない。」
「いや、もう一つ、欠けてる要素が、あると思うんです。」
「何ですか?」
「それはまだ、確証が得られませんので・・・。」
古賀家族の写真を見つめたあと、
「お願いがあるんです。
 彼らの思考には、特徴があるんです。
 自分たちの真実に触れた人間には、死を与えるんです。」

礼子が意識を取り戻す。
「お母さん。」
「雪穂?
 庭の、あれ・・・何?」
「あれ?」
「しらばっくれるの、いい加減にし。
 一生懸命、隠してたやないの。
 あんた、ほんまのお母さん、殺したんか?
 あの人は、関係あるの?
 言うてくれたら良かったのに。
 あんた、何も言わへんから・・・。
 しんどかったやろ?
 堪忍な・・・。
 気付いてあげられんと・・・。
 もっと、ちゃんと気付いてやれんとな・・・。
 あんたも、言われへんわな。
 けどな、あんたのいてるとこは、生き地獄。
 ほんまはもっと、楽しいねんよ。
 笑ったり怒ったり、泣いたりするのに、
 遠慮なんかいらへんのよ。
 損してえ、あんた。
 大赤字や。
 自首し。
 長生きするから。待っててあげるから。
 あんたの帰るとこは、いつでもあるんやから。」
雪穂の瞳から涙がこぼれる。
「一人じゃないから・・・。
 一人じゃないから。行くわけにもいかないの。
 戻るわけにもいかないの。」
「白い花の、幼馴染か・・・。」
「ごめんね、お母さん。」
雪穂がチューブに手をかけるのを、礼子は黙って見つめる。
ガスの元栓をひねった時のことを思いながら、それを引き抜こうとした時、
誰かが雪穂の手を掴む。亮司だ。
「二度目はダメだよ。
 なしだよ。
 行って。
 行けって。」
雪穂は涙をこぼしながら病室を去る。
礼子も涙をこぼしながら雪穂をただ黙って見送った。
亮司と礼子は見つめあい・・・。

『投稿者:幽霊からの遺言
 どうか子どもたちに
 本当の罰は心と記憶に下されると伝えてください。
 飲み込んだ罰は魂を蝕み、やがて、その身体さえ
 命さえ食い尽くす
 どうか、その前に
 どうか、親たちに伝えてください』

書き込みを読んだ谷口真文は亮司が通っていた小学校に連絡し、
卒業証書を預かっているので住所を教えてほしい頼む。

卒業証書を抱え夜道を走る真文。
「桐原亮司君の、お母さんですか?
 息子さん、今、どうしていますか? 
 ちょっと、心配で。
 私、あの子大好きだったんですよ!
 それで、あの、」
「いい子だったでしょう!?
 賢い、優しい、子だったでしょう!?
 殺したんです・・・。私が、あの子殺したんです・・・。」
弥生子はそう言い泣き崩れた。

「リョウコ?私だけど。
 今夜が峠なの。ちょっと疲れちゃって。
 話してもいい?」
病院の公衆電話から話す雪穂の姿を看護師が見かける。

『微量ガス損失アラーム機能停止中』

「白い花の、子か?あんた。
 二人して、そのざまか。
 哀れやな・・・。」
「正しいことなんて、言われなくてもわかってるんです。」
亮司は手袋をつけた手で、チューブを取り・・・。
白夜行 最終話
『白夜の果て』

叫び声をあげながら笹垣(武田鉄矢)に飛びかかる亮司(山田孝之)。
ハサミは、亮司を交わそうとした笹垣の股に突き刺さる。
亮司はそれを抜き取り、再びハサミを振りあげる。
が、突然、意識が遠のきそうになる。青酸ガスを吸った中毒だった。
「便所に、入るな。」
亮司はそう言い捨て、逃走する。

「青酸ガス?」
数日後、笹垣を訪ねてきた篠塚(柏原崇)が事情を知る。
「便所に仕込んで、なんや、自分で吸ってもうて、
 何考えてんのか。」
笹垣が掲示板の写しを見せる。
「あいつら、なんで二人で協力し合っているのかいう話でしたな。
 初恋やったんですわ。
 可愛らしい、二人やったらしいですわ。
 切り絵したりな。
 結局、14年前、お互いの為に親殺した、 
 あの日のまんまなんですわ。 
 その結果、今も???」

篠塚がRY&を訪ねていくと、共同経営者のリョウコが
雪穂(綾瀬はるか)は2号店の出店準備に、布施へいったと告げる。

その頃、布施で新店舗の物件を探す雪穂。
不動産業者の案内で店舗を見て回るが、
案内する男が、この物件なら日もあまり当たらず、
商品を傷めることもないでしょうと勧めるが、
雪穂は日当たりのいい場所にこだわっていた。

笹垣は、亮司が秋吉として勤めていた会社を訪ねていく。
「秋吉さんの連絡先ですけど、もうつながりませんよ。
 何かあったんですか?
 2、3、日前にも、一緒に住んでたって人が来て。」

その情報に、今度は帝都大学病院の典子(西田尚美)を訪ねていき、
亮司がどんな小説を書いていたのか聞く笹垣。
「何をしても、気付かれないまま悪事を重ねる
 幽霊みたいな男の話で。
 たった一人、そのことを気付いた男を殺すんだって。
 私は、殺せないって言ったんですけどね。
 気付いてくれた人がいたら、嬉しいはずだからって。」
「ああ???そうだったんですか???。」
笹垣は、その男が自分であること、
そして亮司がなぜ便所に入るなと言ったのかを理解する。
「やっぱり、何かある人だったんですね。
 みつかったら、連絡下さいね。」
笹垣は典子に一礼し帰っていった。

篠塚が雪穂に布施の物件を紹介する。
「うちが昔からお世話になっている所なんだけどさ。」
「あの???でもどうして?」
「いいお客さんいたら紹介してって言われてたから。」
「ありがとうございます。」
「どうして、急に向こうに店出すことになったの?」
「母に、恩返ししたいと思って。
 次のR&Yは、礼子のRなんです。」
雪穂は母の形見のサボテンの横に置かれた赤い額縁を見つめ、
そう答えた。

赤い額縁を飾った部屋で、ホームページの作り方の本を見ながら
ウェブサイトを作る雪穂。

「その頃の私はもう、あなたが生きているのか死んでいるのか、
 確かめるすべさえなかった。」

「俺ね、いつか田舎に戻りたい。」そう言った亮司の言葉。

「だけど、生きていても死んでいても、
 するべきことは一つしかないと思った。」

ウェブサイトが完成する。
『R&Y 2号店
 OPENING CEREMONY 
 on 2005.12.24(Sat)』

ビジネスホテルの一室。
そのサイトを咳き込みながら見つめる亮司。

机に突っ伏して転寝する雪穂。

「ねえ、亮。
 私、返したかったの。
 日のあたる場所に。
 あの日の花を浮かべてあげたかった。
 あの日、あなたのくれた夢を、諦めたくなかった。」

ダクトを這う亮司に手を刺し伸べる雪穂。
亮司の作った白い花。
それを昼間、川に浮かべる二人。
手をつなぎ歩く小学生の雪穂と亮司。
二人がぎゅっと手を握り締める。

転寝する雪穂が、夢と同じようにぎゅっと手を握り締め、
そして目を覚ます。

賃貸借契約書を見たあと、雪穂は赤い額縁を見つめる。
中には、亮司が作った太陽の切り絵が隠してある、あの額。

「私を太陽だと言ってくれた???」

2005年12月 布施
雪穂は母の形見のサボテンを、R&Y2号店のテーブルに置いた。

「あの日の言葉に答えたかった。」

雪穂は本店に戻っても、2号店の準備ばかりに取り掛かる。
インテリアの注文、
太陽をモチーフにした新作の指輪。

本店の仕事を放り出し、雪穂は出かけてしまう。

篠塚と食事をするリョウコ。
「2号店に夢中っていうか、
 ただでさえ忙しいのに。
 こんな指輪まで作っちゃって。」
「これって、店のマーク、だよね。」
「なんか思い出があるんじゃないですか?
 絵みたいなの、デザイナーに見せてたから。」
「絵?」
「なんか今の雪穂無理やりなんですよね。
 2号店やたら立派にしたいみたいで、
 借金までしちゃったし。」
「心配だよね、共同経営者として。」
「名ばかりですけどね。」
「え?
 だって1号店ってほとんどリョウコさんが出資したんじゃないの?」
「雪穂に名義貸してくれって頼まれただけです。
 なんか、お金持ってるんですよねー、雪穂。」

亮司を捜して歩く笹垣の元に、警察部長から電話が入る。
「お前宛に、自首したいっていうヤツが来てるぞ。」

それは、友彦(小出恵介)だった?
「そんなら君は、売春中の事故を庇ってもらったのが縁で
 桐原と一緒に、ゲームや、カードの偽造やっとったんか。」
「すみません。」
「なんで今更やねんな。」
「松浦さんが事件起こした時に、
 まともな世界に戻れって言われて、桐原に。
 結局あれから何をやってても、後ろ暗いって言うか。
 あの、あいつは?」
「うん。相変わらず行方不明や。」
「早く捕まえてあげて下さい。
 あいつ、昼間歩きたいって。
 あれは本心だったと思うから。」
「なあ君、松浦勇、生きていると思うか?」
「そう、願ってますけど。」
「そうか???」

友彦の証言を受けて、亮司は全国手配される。

「こうして、R&Y2号店のオープンが間近に迫った頃、
 降って沸いたように、亮はカード偽造犯として手配された。」

外国人のアパートで一緒に食事をする亮司。
二人が見ていたテレビから、亮司指名手配のニュースが流れる。
「同じ!?」と外国人がニュースと亮司を見比べる。
「こういうの、他人の空似って言うんだよ。」

「14年前の事件にまでつながりかねない余罪の追及は、
 私たちの破滅と、あの男の足音を感じさせた。」

笹垣が家を出ると、典子が赤ん坊を抱え立っていた。
「あの、秋吉の本名は、桐原亮司って言うんですか?」
不安そうにそう聞く典子。

笹垣は典子を部屋に入れ、ノートを見せながら自分が調べたことを
説明した
「忘れんとってほしいのは、
 今話した話は、桐原亮司が事実やと認めた話じゃないと
 いうことです。」
「自分の遺伝子なんか残さない方がいいって、
 こういうことだったんですね。」
「そんなこと言うとったんですか、あいつ。」
「口先だけじゃなくて、本当にそういう体になってて。
 本当に、後悔してんだなって。
 だから、この子は絶対に産まなきゃって。
 それだけじゃないんですけどね。
 笹垣さん、私、青酸カリ、」
「いや、青酸カリは使われませんでした。」
「え???」
「びびって、よう使わんかったんです。
 すいません。ちーとその子、見せてやってもらえますか?
 こいつ、桐原亮司の母親なんです。
 あと1年生きとったら、孫の顔、見れたのに???。
 運のないやつですわ。」

弥生子の遺影の横に、典子と赤ん坊の写真を飾る笹垣。
「殺しにでもええから、来いや???。なあ。」
ドアと、写真を交互に見つめてそう呟く。

亮司は部屋の押入れからサンタクロースの衣装を見つけ、
それを取り出すが、その時、意識が遠のいてしまう。

心配そうに亮司を見つめる外国人の同居人。
「大丈夫。
 まだ死ねないから。
 イヴにさ、プレゼントくれるって言うんだよ、姉ちゃんが。」
「姉ちゃん、か?」小指を立てる同居人。
「俺もあげなきゃいけないものがあってさ。」
「何?プレゼント?」
「日のあたる道。」

篠塚は、R&YのRの字が何を指すのか考えていた。
社員が写真たての裏に隠した、初恋の人と再会した時の写真。
笹垣に、ある思いが浮かぶ。
あの、フレームの裏に何かが隠してあるのでは???。

そのフレームを見つめる悲しげな雪穂。
『雪ちゃんだって俺の太陽なんだよ!』
そう叫んでくれた、幼い日の亮司。
「わかってるよ。亮???。」

2号店に商品が運ばれていく。
その様子を笹垣が見つめていた。

スタッフが、サボテンの鉢を誤って割ってしまう。
「これ、社長が実家から持ってきたやつだ!
 お母さんの形見だからって。まずいよ!」
慌てて持っていた荷物を先に店内に運び込むスタッフ。
笹垣はその隙に、割れた残骸を見にいく。
土の中から何かの破片が混じっている。
『Rey Ban』と書かれたサングラスの破片だった。
「ぱちもんか???。」

雪穂の実家の庭に入り込み、サボテンを見つめる笹垣。

2号店を見つめる雪穂。
そこへ篠塚がやって来た。
「よう、唐沢。」
「パーティー、明日ですよ。」
「前祝、やらない?」そう言いシャンパンを見せる。

「ろくなグラスないんですけど、いいですか。」
「いいよ、何でも。」
「本当に篠塚さんには、あれ以来お世話になりっぱなしで。」
グラスを手に雪穂が戻ると、篠塚があの額縁を外し、中を調べていた。
そして、太陽の切り絵を見つける。

「な、唐沢。
 もう???自首しないか。」
「何のことだか。」
「14年前、唐沢は桐原亮司に、すごいプレゼントを貰って、
 それを同じように返した。
 多分初めは、それだけだったんだよな。
 だけどそのうち、桐原亮司は唐沢の為に、
 ものすごい手の汚し方をするようになってしまった。
 自分の為に、罪に、積荷まみれた、桐原亮司の為に、
 出来ることは、その罪を無駄にしないことだけだと
 唐沢は思った。
 この店も、桐原の盗んだ金で作ったんだろう?
 犯罪でさえなければ、本当に美しい、絆だと思うよ。
 笹垣さんはこう言ってた。
 あいつらは、あの日の魂で守りあっているだけなんだって。
 だけどその結果、桐原亮司は、今もダクトの中を這いずり回って、
 唐沢は、誰にも本当の姿を見せられず、
 ビルの、薄暗い部屋の中にいるって。
 いずれ破滅するのはわかっても、二人とも、後に引けなく
 なってるって。
 桐原亮司に、罪を償わせて死なせてやりたいって。
 唐沢雪穂を、もっと、楽にさせてやりたいって。」
「何を証拠に、そんなこと。」涙をこぼしながら言う雪穂。
篠塚は雪穂の腕を掴み、その指にある指輪と切り絵を照らしあわす。
「これが、何よりの証拠だろう。
 俺な、あいつの遺言みた。
 後悔した。
 あいつはずっと、裁かれたかったんじゃないのか?
 本気で桐原に人生返したいなら、
 あいつに真実を、言わせてやるべきじゃないのか!?
 全部、お前の幸せの為にやったんだって、
 みんなの前で言わせてやれよ!
 お前がその全てを、認めてやるべきじゃないのか。」
「わかりません!何のことだか。」
「一応、置いていくよ。」
篠塚は掲示板の写しを置き、帰っていった。
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